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声楽家なら誰でも知っておきたい、けれど、だれも教えてくれなかったこと − イタリア語"e"と"o"の開口、閉口のルール

2014.10.10 一般公開
2014.10.11 誤字脱字、レイアウトの修正
2014.10.11 【おまけ・その5】追記
2014.10.12 細かい修正、【おまけ・その2】の【独り言】を追記
2014.10.14 【おまけ・その6】追記
2014.10.20 【おまけ・その3】非常に役に立つサイト3つを追加
2014.10.24 【おまけ・その7】追記
2015.08.07 【おまけ・その6】訂正
2016.03.11 【おまけ・その8】追記
2016.04.19 【おまけ・その9】追記
2016.12.26 【おまけ・その8】一部追記
2019.05.20 【おまけ・その10】追記
2020.03.11 全体のレイアウト調整、細かい修正・追記、返金機能に対応
2020.09.06 〈◎閉じた"e"の発音(La é chiusa)〉20番の訂正

【序文】

「辞書を引くしかない」そう教えられ、− なんとめんどくさいことか − そのように思ったのはイタリア語の勉強を始めて間もなかった大学一年生の頃。辞書を引いたってわからないものも沢山ある。例えばvedereの直接法現在形一人称単数の"vedo"の"e"は開口、閉口?どこにも載っていません。そもそも、"e", "o"に二つずつ発音があるって言うことが意味不明!2005年にイタリアに渡ってからも、違いが全く理解できない。しかし、レッスンでは間違えるたびにこっぴどく注意される。年を重ねるにつれ徐々に音の違いが聞き分けられるようになってきても、発音するとすべて閉じた音になってしまう。

 そんな日々を過ごしていたある日、我が師ミレッラ・フレーニの学校で、イタリア語のディクションを徹底的に勉強する機会が訪れました。外国人の私にとって、その勉強は、キツい、の一言でしたが、そこで勉強してはじめて、自分がいかにヒドいイタリア語の発音 − カタカナの延長 − をなんとかこねくり回して、えせイタリア語の発音で歌っていたことに気付いたのです。そこから美しいディクションのための研究をスタートさせた訳ですが、今回はその奮闘記ではありませんので、そこら辺の詳しい話は割愛いたします。

 さて、研究を進めていくうちに、なんと冒頭で述べたことが覆されたのです。「辞書を引くしかない」と思っていた、"e"と"o"の開口と閉口にルールがあったのです。私自身、毎回譜読みをするたびに辞書を片手にもの凄い時間をかけて調べていたのですが(オペラ全曲だから、それだけで数日かける作業なんです(涙))、ルールを覚えてしまえば、その無駄(でもないんですが)な時間とおさらば!と意気込んでそのルールを勉強してみました。しかし…、イタリア語恐るべし!とてもじゃありませんが、まったく覚えきれるような気がしません!だって、"e"の開口だけでルールが30以上もあるんですよ…!もちろんそれらは多数の【例外】付きで!それって、もはやルールと言えないのでは…。

 しかし、例外が多いところなんてまさにイタリアらしいではありませんか!と無理矢理気持ちを奮い立たせ勉強してみます。多数のルールを覚える、となると気の遠くなる作業に感じますが、一通り口に出して読んでみると、どうでしょう、イタリア語の根底に流れるルールみたいなものが見えてくるではないですか!つまり、簡単に言えば、調べなくても”想像がつく”ようになったわけです。これが非常に大きい。今まで見えなかったものが見えてくるのですから。イタリア語という広大な世界の中で視野が大きく広がります。

 これは自分自身にとって、非常に大きな体験でありました。このような感覚を、ぜひとも皆様に共有して欲しいと思い(音読して頂ければきっと出来ると思います!)、少なくとも、辞書に載っていないことも含めて、開口、閉口について調べられる日本国内唯一の資料(だと思います)となればいい、とこのルールを日本語でまとめることにしました。

 多くの方は、私の学生時代と同様"e", "o"の開口、閉口の違いなんて、大した問題ではないと思っていることと思います。実際、発音というものは地方色が強く、たとえば、私の住んでいるモデナでは常に"e", "o"は閉口で話しますし、このルールが分かっていないイタリア人の方が多いというのが現状でしょう。しかし、このことは俳優を目指す人たちが演劇学校等で必ず勉強する内容であり、舞台では必須の知識と言えます。また、僕の経験上、これがわかっていないといつまでも「外国人扱い」「子供扱い」です。しかし、逆に言えばこれが出来ていることで「一目置かれる」ことになります。さらに、ヴェルディ、プッチーニなどは台本に自ら多数の注文をつけました。それは音の響きを重要視しているからに他なりません。彼らの芸術に少しでも近づくために、イタリア語の芸術を志している人は誰もが知っておいた方がいい内容であると思っております。そして、イタリア語の勉強を始めたての人にこそ、このような内容があるのだと知りながら勉強して頂きたいと思っております。

 なお、この内容は有料とさせて頂きましたが、専門性が高いということ、需要が一般の文章に比べて限られた範囲にしかないことをふまえた手間賃だと思って頂ければ幸いです。

 それでは序文が長くなりましたが、いよいよ本文となります。どうぞお楽しみください。

【イタリア語"e"と"o"の開口、閉口のルール】

"e"と"o"の発音に開いた音(La "e" o la "o" aperta)があるのはアクセントがある場合のみで、アクセントがない場合は必ず閉じた音(La "e" o la "o" chiusa)になる。

例)tàvolo, lìbro, volànte, dìsco, bottìgliaなど

独り言:アクセントのない"e", "o"は実際のところ発音上は開口と閉口の中間になるようです。

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声楽家なら誰でも知っておきたい、けれど、だれも教えてくれなかったこと − イタリア語"e"と"o"の開口、閉口のルール

宮本史利

1,980円

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オペラ歌手です。2005年よりイタリアに住みはじめ、2017年に永住権を取得。日本にいるころに、勉強したいけれど、知るすべがなかった事などを公開していきたいと思います。どれだけ需要があるかはわかりませんが、他では得られない知識、ということで、ご贔屓にしていただけたら幸いです。