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64 大漫才

 ピンクベストをきた相方は、僕の問いかけに少し遅れて、新郎新婦が入場するところから勢いよくでてきた。「トゥース!」と

 先日幼馴染の結婚式で友人代表スピーチをしてきた。スピーチは2人ですることになり、僕たちは漫才ペースでスピーチをすることにした。最初は漫才をするつもりはなかった。相方、相棒とのlineを見返したときに最初に私が送った下書きは、入りこそ冗談をいれて書きているが、後半はそれぞれで挨拶をする下書きにしていた。ところがそれを見た相方が書いてきたのが、コント風な入りのスピーチだった。今思えば幼馴染の結婚式を知らされた飲み会で、僕が

「漫才をするか。」

と言ったのを彼はどこかで覚えていてくれたんだろう。相棒は今勉強で忙しいので、負担の重いスピーチは厳しいかなと思っていたが、お前はこんな風にやりたいんだろと。そう言わんばかりの原稿が上がってきたのをみて正直凄く嬉しかった。負担は大きくなっただろうけど。ごめんな。

 スピーチを漫才風にすると決めてから僕たちは、毎日2時間以上電話でネタ作り行った。ネタの作り方は、基本的なベースは相方が書いて、それを私が書き直したり、電話越しで読み合わせをしながら修正をした。正直この時間は凄く楽しかった。二人ともお笑いが好きなのでネタの構成で少々ぶつかることもあった。特に最初の掴みの部分。お互いが出した提案が納得が出来ず、たった5行くらいの文章を1時間以上真剣に話し合った。結局その日は結論がでず、次の日にもう一人呼んで一緒に考えてもらった。その子のおかげでネタは完成し本番を迎えることになる。

 いざ結婚式当日。冒頭にも書いたが、最初の掴みは、僕が大好きなオードリーで入った。ちなみに僕が若林さんで相方が春日さん役。司会の人が次は友人代表スピーチですと。紹介し、私だけがマイクの前に立つ。
「どーも友人代表の〇〇です」「今回は2人でスピーチをやっていきたいのですが、相方の到着が遅れてるみたいで。」と入る。そこで会場の皆さまは、あ、オードリーできたなと。少し笑いが生じる。本来ならここで相方が出てくる予定だが、会場の外で待ってる相方には聞こえないというトラブルがおこった。笑。今考えればわかることだが、当時は予想だにしてなかったので、いきなり慌てることになる。何とかその場をつなぐフレーズを絞り出す。「予定ではね、今の言葉ででてくるはずなんですけどもと」そんな感じで何とか場をつないでいたら、相方が扉を開けて登場。「トゥース!」勢いよく登場し、多少の笑いはあったが、その時点で僕たちはきずく。あ、これはやばいぞと。そんな悪い予感は見事的中するのだが。掴みは、オードリーで入るのだが、その後は完全にオリジナルの漫才。時間にして12分。僕たちはその12分。とことん滑った。これ以上滑ることが出来ないくらい滑った。恐怖の12分。笑。あ、これが本当の滑るなんだなと。結果3週間ほど真剣に考えたスピーチは大失敗で終わるのだが、僕の目の前にいた新婦の友人だけが最後まで優しい笑顔で見てくれた。そして漫才終わりの意気消沈な私に「漫才面白かったです」と声をかけてくれた。この一言に本当に救われた。お世辞100%だろうが、本当に嬉しかった。今思えば相方も読んでもう一回言ってもらえばよかったかな。笑。ごめんな。一人だけ救われて。

 大失敗に終わったスピーチだったが、僕は終始楽しかった。特に他県に住んでいる相方と面と向かってネタ合わせができた2日間。カラオケボックスにこもり歌いもせずにひたすらネタ合わせ。漫才の中で二人の掛け合いがピークに来るところを練習し終わった後、自然と二人で笑いが生じた。その時は、本当に最高だった。若林さんと星野源さんがラジオで話していたアメーバ状態だったと思う。本当に楽しかった。誰もいない僕ら2人だけの空間で。これは一生忘れることはないだろう。

 そんなこんなで、恐らく人生最初で最後の漫才が終わった。死ぬまでにやってみたい100個の中で結構上位に出てくるものをすることができたので悔いはない。ただ、もう少しうけると思ったな。相方よ。笑。



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