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No.5 パワハラ・セクハラ対策


パワハラ・セクハラには、使用者である社長自身が行っている場合と、中間管理職の上司が行っている場合があります。

 結論を最初に言えば、もし貴方が現在これらのパワハラ・セクハラに悩んでおられるなら、最も有効な対抗手段は、弁護士でも裁判所でも警察でもなく、貴方が「青空ユニオン」に加入して、「青空ユニオン」が使用者に団体交渉を仕掛けることなのです。


 まずは、より解決し易い中間管理職の上司によるパワハラ・セクハラについて述べます。以下は、「青空ユニオン」以前の別の合同労組時代の実例ですが、これを見れば一目瞭然でしょう。


   その職場は、世界的な企業の宮崎店でした。
その男性労働者はパートタイマーでしたが、店長から「顔が気に入らない」などという凡そ下らない理由で、典型的なパワハラを受けていました。直接的な嫌がらせの外、パート勤務の時間を減らすことで給料の額を減らす、ある意味最もキツイいじめを受け、生活ができなくなり、深刻に悩んでいたのです。



  この労働者も、よくあるパターンのとおり、まず労働基準監督署に行って相談しました。しかし、労働基準監督署は、賃金不払いや有給休暇をくれないなどの労働基準法に関する問題しか取り扱いませんので、当然のことながら全く役に立ちませんでした。


 その後、紆余曲折があって、運良く最終的にその合同労組に辿り着きました。早速その合同労組に加入し、まず、宮崎店ではなく東京本社に団体交渉申入書を送り、「宮崎店の問題だから宮崎で団体交渉しよう」と申し入れました。


 さすがは世界的な企業だけあって、労働組合からの団体交渉申入の重みを正確に理解しており、人事の偉い人が2人、東京から宮崎まで飛んで来ることになりました。
 念入りに打ち合わせをした上で、その合同労組の当時の執行委員長と、その組合員労働者の2人で、団体交渉に臨みました。


 団体交渉に呼び出された店長は、最初は横柄な態度でふんぞり返っていたそうですが、東京本社の人事の偉い人たちの前で、執行委員長から個別のパワハラの事実を次々に突きつけられると、否認しながらも顔色を失い、うつむいてしまって、最後にはガタガタ震え出しました。


 その組合員は、それまで見たこともない店長の哀れな姿に大変驚きました。勤務時間も正常に戻り、店長は借りて来た猫のようにおとなしくなって、その組合員に一切触らなくなった揚げ句、翌年春の異動でいなくなり、店長と一緒にその組合員をいじめていた副店長も、職場を追われるように退職しました。


 その組合員は、善良で邪心のない、素直で心優しい青年でした。ブラック企業が蔓延し、労働者を使い捨ての商品として扱う殺伐とした世の中は、生きにくい場所だったでしょう。悪意のある使用者や上司からひどく傷付けられたことも、一度や二度ではなかったしょう。上記のパワハラなどは、正にその典型でした。


 それだけに、彼は合同労組の価値を深く強く思い知り、その後その合同労組のために献身的に働いてくれました。次期の執行委員長まで務めてくれたのですが、惜しいことに急な病気で若くして亡くなりました。


 団体交渉申入は、その中間管理職ではなく、使用者自体に対して行います。「事実関係確認のためにその中間管理職の出席を求める。応じなければ不誠実団交の不当労働行為だ」と迫れば、上記の例のように、使用者(あるいはそれに代わる責任者)とその中間管理職が揃って団体交渉に出て来ざるを得ません。


 録音などの証拠は何もない状態でしたから、店長はパワハラを否定した(できた)のですが、それでも東京本社の人事の偉い人たちの前で次々に事実を指摘されて、生きた心地はしなかったことでしょう。人事評価にも大打撃があったと思われます。


 また、普通の神経の持ち主なら、自分より上位の人たちの厳しい目を意識せざるを得ないので、そんなことがあってもなおパワハラを繰り返そうなどとは、絶対に思わないはずです。事実、この店長もその後借りて来た猫のように沈黙してしまいました。


  仮にこれがパワハラでなくセクハラの事案であったとしても、全く同じ状況を経て、全く同じ結果に至るでしょう。
 以上と比較して、裁判所は証拠が全てです。録音などの証拠が何もない状態では、裁判所にパワハラを認めさせて裁判に勝つことは非常に難しいでしょう。


  弁護士に依頼するにも、弁護士は裁判で勝てるかどうかをまず見極めますから、「裁判で勝ち目が薄い。よって、貴方の依頼は受けられない」という答えになることが多いでしょう。


   警察は刑事事件にならないと取り扱ってくれないので、もっとハードルが高くなります。パワハラなら脅迫罪や暴行罪、傷害罪に、セクハラなら強制わいせつ罪などに該当する『レベルの高い』ものである必要があります。単なるパワハラ・セクハラは取扱ってくれません。


 以上のとおり、中間管理職の上司からのパワハラ・セクハラに対する最も強力な対抗手段は団体交渉であり、録音などの証拠が全くなくても大丈夫、その効果はほとんど「一撃必殺」のレベルだ、と言えるでしょう。


 次に、社長自身がパワハラ・セクハラをしている場合について述べます。中間管理職の上司が社長の親族である場合なども、同類としてこちらに入ります。
 社長自身やその親族の中間管理職がパワハラ・セクハラをしている場合は、団体交渉の場で上と同じように問い詰めても、自分より上位の人たちの厳しい目を意識する必要がないので、効果が低いことはあり得ます。


 仮に団体交渉に効果がなく、パワハラ・セクハラが続いた場合はどうすれば良いでしょうか?
  答えは簡単、再度団体交渉申入をして、団体交渉をします。


  それでも効果がなければ、三度団体交渉申入をして、団体交渉をします。
 それでもなお効果がなければ、四度、五度、六度・・・・と効果が出るまで団体交渉を続けると、一応お答えします。要するに、「がまん大会」の根比べ、どちらが先に音を上げるかを競う「チキンレース」です。
 ・・・・と図式的に述べましたが、実際には三度くらいで使用者側が音を上げて、ギブアップするでしょう。団体交渉申入の度に使用者は応諾義務、誠実交渉義務を負いますが、これが結構な負担なのです。その度毎に時間を取られ、それなりにまともな答えを返せるだけの準備の手間暇も必要だからです。


  それすらも怠るような最悪の使用者に対しては、こちらは腹を括って、不誠実団交の不当労働行為救済申立をします。その結果、最悪の使用者は県の労働委員会から厳しい説教を喰らって、そこで否応なしに問題解決となります。


 別の項目で、「青空ユニオン」は新規加入組合員に対して「他の組合員に関する団体交渉に積極的に参加する」と誓約して頂くと説明していますが、それは主としてこのような場合のための備えなのです。


  先にも述べたとおり、団体交渉申入は使用者に対して行います。基本的に使用者自身が団体交渉に出席しなくてはなりません。その度毎にかなり重い負担がかかります。それに対して、「青空ユニオン」は交渉担当者を次々と変更して、1人1人にかかる負担を少なくできます。


  しかも、この種の団体交渉で「青空ユニオン」側が使う技は、「何年何月何日、どこそこで、貴方は、ウチの○○組合員に対して、これこれこういうパワハラ・セクハラをしただろう?」という質問を連発するだけの、最も単純なものですから、基本的に誰にでもできることです。


  しかも、第1回の団体交渉ではパワハラ・セクハラの証拠が全くないこともあるでしょうが、それ以降は、「青空ユニオン」から指導を受けた紛争当事者の○○組合員が、録音などの証拠集めの努力をするでしょうから、第2回、第3回と団体交渉の回数を重ねるにつれて、否認自体が難しくなって行きます。


 こんな状態をいつまでも続けようと考える愚かな使用者は、まずいないと思われます。まあ、第3回団体交渉辺りでギブアップするのではないでしょうか?
 なお、使用者自身が団体交渉に出席せずに、弁護士を代理人に立てて逃げる姑息な使用者もいるでしょう。


  しかし、全く心配は要りません。団体交渉申入書に「事実関係確認のために使用者自身の出席を求める。応じなければ不誠実団交の不当労働行為だ」と事前に詰め寄ってあります。


  それでも代理人弁護士だけを団体交渉に出して、使用者が逃げることは、一応は可能です。但し、その場合、代理人弁護士が使用者自身に劣らず正確な中身のある答えをできるよう、十二分な事前準備をしておく必要があります。しかし、通常、それは無理でしょう。


代理人弁護士が対応できずに立ち往生すれば、「不誠実団交だ」と詰め寄ります。
  良心的な代理人弁護士なら、準備不足で立ち往生した点の非を認め、次回の使用者自身の出席を約束するでしょうし、使用者に対して「今後はパワハラ・セクハラをするな」と指導してくれることもあり得るでしょう。


  良心的な代理人弁護士でなければ、以後も準備不足の立ち往生を繰り返すでしょうから、遅かれ早かれこちらが腹を括って、不誠実団交の不当労働行為救済申立をすることになり、使用者が県の労働委員会から厳しい説教を喰らって否応なしに問題解決という、先程述べたのと同じ道筋をたどるでしょう。


 以上のとおり、貴方が現在悩んでおられるパワハラ・セクハラ被害は、通常の場合、団体交渉申入から実施の流れで殆ど「一撃必殺」で「退治」できるはずです。弁護士にも裁判所にも警察にも、このような力は全くありません。
  


 更に、使用者などが常識外れに悪質なため、「一撃必殺」で「退治」できない場合でも、十分な数の交渉担当者を用意できれば、比較的容易に解決できます。


私たち「青空ユニオン」は、一般組合員以外の「サポート組合員」を積極的に受け入れます。

労働相談はこちらから。
相談される前に、青空ユニオンMiyazakiについて紹介した以下の投稿、特に「加入お断り」を熟読された上で、入力・送信して下さい。

https://note.com/miyazakiaozora_u/n/n6c2272f829ea


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