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戦後最悪のマイナス成長なのに、株価が急上昇した理由を考えてみる

景気の悪いニュースが続くわりに、株価はあまり下がりません。日経平均株価は一進一退ながらも、コロナ前の高値に接近しつつあります。

今年4-6月期に、日本経済は戦後最大のマイナス成長を記録しましたが、その間、日経平均株価は約18%も上昇しました。大幅なマイナス成長を記録した四半期に、株価がこれほど上昇したケースは滅多にありません。

一方、多くのエコノミストは、日本経済がコロナ前の実質国内総生産(実質GDP)のピーク水準を回復するのに、4年くらいかかると予想しています。

昔から「株価は景気の先行指標」と言われていますが、株価とエコノミスト、はたしてどちらが正しいのでしょうか。

厳密にいえば、株価は景気の「水準」ではなく、「方向性」に対して先行性をもっています。株価が山・谷(ピーク・ボトム)を付けるタイミングが、景気の山・谷の時期に先行するという関係性です。

さらにいうと、内閣府「景気動向指数」が景気の先行系列として採用しているのは、日経平均株価ではなく東証株価指数(TOPIX)です。日経平均株価とは異なり、TOPIXがコロナ前のピーク水準に届くまでには、まだ結構な距離があります。

それでは、GDPの水準に対して先行性をもつ経済指標はあるのでしょうか。非常に大まかではありますが、マネーストックがGDP(正確には実質GDPではなく名目GDP)の水準を予測する際の目安になります。マネーストックとは、家計や民間企業が保有する現金や預金などの総額です。例えば、1980年代後半の平成バブル景気が崩壊する前には、マネーストックが急落しました。

マネーストックは現在、政府と日銀による積極的な資金繰り支援を背景に急増していますが、マネーストックとGDPの関係性はあくまで中長期的なものですから、現在のマネーストック急増をもって直ちにGDPが急回復するとは私は思いません。

しかし、もしコロナ終息後もマネーストックが高水準の伸び率を維持することになれば、日本のGDPは4年もかからないうちにコロナ前の水準を取り戻すかもしれません。

エコノミストの多くは、コロナ終息後にマネーストックが失速すると予想しているのかもしれません。逆に株価のほうは、マネーストックの急増がGDPの急回復に繋がるという展開を織り込んでいる可能性があります。

マネーを司る日本銀行には、是非とも、エコノミスト達に赤っ恥をかかせてほしいと思います。







お読みいただき有難うございました。 小難しい経済ニュースをより身近に感じて頂けるよう、これからも投稿してまいります。