見出し画像

サイモンとガーファンクルの「7時のニュース」とガザ停戦をもたらす国際世論

 中米ニカラグアがドイツをイスラエルのジェノサイドに加担しているという理由で国際司法裁判所に提訴した。ドイツはUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への資金拠出を停止し、イスラエルに軍事支援を行っているというのがその理由だが、ならば日本も同様にUNRWAへの資金拠出を停止し、イスラエルとの防衛協力を行っている。本来なら日本も提訴されなければならないが、幸か不幸か日本のイスラエルとの防衛協力は世界的にはあまり知られていない。ガザでのイスラエルのジェノサイドを考慮して日本もイスラエルとの防衛協力を見直すべきだと思う。UNRWAへの資金拠出の再開は言うまでもない。

 2012年にBBCの世界22カ国、24、090人を対象とした世論調査で、国際社会におけるイスラエルの影響を肯定的に見る国はアメリカ、ナイジェリア、ケニアの3カ国しかなく、17カ国の人々はイスラエルを否定的に見ていた。この調査では日本人のわずかに3%しかイスラエルを肯定的にとらえてなく、45%が否定的に見ていた。(『エルサレム・ポスト』2012年5月17日)イスラエルとの防衛協力やワーキングホリデー制度を推進した政治家たちはこの数字を関知することはなかっただろう。日本におけるイスラエルへの好感度は2013年が3%、14年が4%と、インドネシアやパキスタンなどのイスラム系諸国よりも低く、15年以降日本は調査の対象とならなくなった。

https://www.jpost.com/national-news/poll-israel-viewed-negatively-around-the-world  より


 日本人は一般に正義感が強い国民性であることは犯罪発生の件数の少なさでも示されていることだろう。日本で義侠心が好まれることは、忠臣蔵などのドラマが人気のあることにも見られる。東京ジャーミィの初代イマーム(礼拝導師)のアブデュルレシト・イブラヒム(1857~1944年)は、「イスラムの教えの中にある多くの賞賛すべき道徳が、日本人には自然に具わっている。清潔さ、羞恥心、忠誠、信頼。特に寛大さと勇気とは日本人においてはあたかも天性のもののようである。」(アブデュルレシト・イブラヒム(小松香織・小松久雄訳)『ジャポンヤ・イブラヒムの明治日本探訪記』)と語っている。

日本の古本屋より


 サイモンとガーファンクルの「7時のニュース/きよしこの夜」は平和と反戦への祈りが込められ、アメリカの反戦歌の一つとされ、「List of anti-war songs(反戦歌のリスト)」のウィキペディアの中にも含まれている。二人の美しいハーモニーで歌われる「きよしこの夜」は、静穏で、平和な世界を願ったものであり、それと1966年に録音された当時のベトナム戦争や公民権運動などのニュースが重なっている。(歌の動画はhttps://www.youtube.com/watch?v=9-KT4OW_A8E  にある。

7時のニュース、きよしこの夜 サイモン&ガーファンクル http://www.soundfinder.jp/products/view/1672587

ベトナム戦争に関しては、下のようなニュースが読み上げられている。
「Former Vice-President Richard Nixon says that unless there is a substantial increase in the present war effort in Vietnam, the U.S. should look forward to five more years of war.
In a speech before the Convention of the Veterans of Foreign Wars in New York, Nixon also said opposition to the war in this country is the greatest single weapon working against the U.S.
リチャード・ニクソン元副大統領は、ベトナムにおける現在の戦争に大きな成果が見込めない場合、合衆国はさらに5年間戦争を延長すべきだと語った。ニューヨークにおける退役軍人会の集会でのスピーチでもニクソン氏は、この国の戦争への反対者たちが合衆国に対する最大にして、唯一の凶器だと語った。」

Bob Dylan, Joan Baez and Paul Stookey singing inside the Lincoln Memorial. August 28, 1963. Dan Budnik https://www.pinterest.jp/pin/2181499796726005/


 おそらく今のイスラエルのネタニヤフ首相のメンタリティーも当時のニクソン元副大統領と同様なものであるに違いない。ネタニヤフ首相は、しゃにむに戦争を遂行しているようだが、彼の戦争遂行において国の内外の反戦運動は最も気になる要因であるに違いない。

 国際社会は過去の数々の悲惨な戦争を経て、その秩序を確立、維持するものとして、国際法を成立させてきた。国際法には罰則はないが、それぞれの国家は国際法に訴えて政治の正当性を競うが、国際法に違反した場合はその代価、代償は大きい。イスラエルの国際法に違反する数々の行動は、イスラエルをすでに政治的敗者とし、BBCの調査に見られるように、イスラエルを国際社会の「パーリア国家(嫌われ国家)」にしている。

ニクソンを追い詰めたジャーナリストたちを描く 「大統領の陰謀」 https://www.irishtimes.com/news/politics/richard-nixon-committed-far-greater-crimes-than-the-watergate-break-in-1.1433510?fbclid=IwAR03p31aUPRgGerMtz0gtxKTFyHOMz-cHai6iI8r3faXbsk0fKmCb9H-EA8


 気の毒にもイスラエル国民まで色眼鏡で見られるようになり、肩身の狭い思いをするようになっているだろう。以前、トルコ・イスタンブールのベリーダンス場でイスラエルからの客が壇上に上がって自己紹介した時に、それまで楽しく、和やかな雰囲気だったのが、一瞬静まり返ってしまったことを覚えている。ネタニヤフ首相には国際法の遵守と停戦をあらためて訴えたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?