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謝罪しないアメリカとイスラエル ―沖縄と中東

 沖縄県内で米空軍兵が少女暴行事件を起こし起訴された事件について在沖米空軍トップのニコラス・エバンス第18航空団司令官が27日沖縄県庁を訪れ、裁判に協力していくと述べる一方で謝罪の言葉はなかった。

あらためてひどいと思います 「沖縄の痛み感じていない」米兵による少女暴行事件 “空白の3か月”に批判 国は把握も沖縄県側に知らされず…繰り返される性的暴行の歴史【news23】 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1255897


 パレスチナ系アメリカ人の思想家のエドワード・サイードは「アメリカにおける(オリエントに対する)態度の強硬化、卑しめるような一般化や勝利主義的な常套句による統制の強まり、反対派や「他者」に対する短絡的な軽蔑と手を携えた露骨な力による支配」とイラク戦争の性格をオリエントに対する支配の論理(=オリエンタリズム)として形容したが、日本の一部でありながら、アメリカの軍事的意図が住民の意思よりも優先されてきた沖縄に対するアメリカの姿勢も「オリエンタリズム」と本質的に同様ではないかと思えてくる。

エドワード・W・サイード『オリエンタリズム』(平凡社ライブラリー) https://blog.goo.ne.jp/h-art_2005/e/5f10ab5d4bee74f979918ea2c9db6916


 謝罪の言葉がないという報道に接して、イラク戦争やアフガニスタン、パキスタンでの「対テロ戦争」の犠牲者たちを想い起してしまった。

 国際保健機関(WHO)によれば、イラクでは戦争開始から3年間に15万人を超える市民が亡くなった。イラク戦争が正当な根拠のない戦争であったことは周知の事実となっているが、アメリカはイラクで犠牲になった市民の犠牲者たちの家族や親族、そして国民に謝罪しただろうか。また、アフガニスタンの民間人犠牲者数は2007年以降21年までに4万2000人余りだった。
http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/casualty_A.htm 

 2009年にパキスタン連邦直轄部族地域(FATA)でアメリカのドローンによって兄弟と息子を殺害されたパキスタンのジャーナリスト、カリーム・ハーン氏はCIAのジョナサン・バンクス・イスラマバード支部長を殺人で告訴したが、アメリカ政府はバンクス支部長を「安全上の理由」で本国に召還してしまった。

アメリカのドローン攻撃機 RQ-1 プレデター ウィキペディアより


 ドローン攻撃についていえば、下の記事のように、犠牲者の90%が「テロリスト」とは無関係であったという見積もりもあるが、アメリカはカリーム・ハーン氏の場合のように遺族に「誠意」を示したとは思えない。
http://www.huffingtonpost.com/entry/civilian-deaths-drone-strikes_us_561fafe2e4b028dd7ea6c4ff 

 沖縄の事件はまたも日本社会にとって衝撃的な事件だが、同様なことがけた違いの数や規模で行われてきたイスラム世界の人々の怒りをあらためて知る思いだ。また、イラク戦争については、アメリカの正当な根拠のない戦争を支持した日本政府にも謝罪責任があるはずだが、小泉元首相はいまだに査察を受け入れなかったイラクが悪かったと強弁している。理不尽な戦争を支持した国にイラクの人々が好感情をもっているとは到底思えない。日本外交が存在意義を中東はじめ世界各地で低下させているのはアメリカに必ず追随する姿勢のためだ。イスラエルのガザ攻撃でも、岸田政権はアメリカに配慮して「ハマスのテロ」と名指しで批判することはあってもイスラエルの人道上深刻な攻撃について批判を行うことがない。

支持してはならない戦争だった https://x.com/ayukero52/status/625123388294475777


 そのイスラエルはおびただしい数のガザ市民を殺害しても何の謝罪もない。これではパレスチナの人々のイスラエルに対する憎悪や不信をいっそう強めるばかりだ。

 2022年5月、ヨルダン川西岸ジェニンで取材していたアルジャジーラのシリーン・アブ・アクレ記者(51歳)がイスラエル軍の狙撃手によって頭部を撃たれ亡くなった時も、イスラエル軍のアヴィ・ベナヤフ元報道官は謝罪の必要がないと述べ、イスラエル極右のイタマル・ベングビール現国家治安相は「イスラエル兵の行動を支持する。アルジャジーラの記者たちは戦闘の場に立つことでいつもイスラエル軍の行動を妨害してきた。」と語っている。イスラエル政府・軍の強弁は国際法や国際人道法を意に介さないイスラエルの日頃の姿勢を見れば、ごく当然かもしれないが、アメリカ同様、国際社会からの信用を失い、好感をもたれず、国際的で孤立することは明らかだ。

表紙の画像は 「米空軍兵による少女への性的暴行事件 司令官が事件について説明も、県や被害者に対する謝罪の言葉はなし」
https://news.goo.ne.jp/article/tbs/nation/tbs-1256422.html

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