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世界の若者はイスラエルのガザ攻撃に反対する

 米英軍は12日、2日続けてイエメンのフーシ派の拠点を空爆した。フーシ派がイスラエルやアメリカ関連の船舶を攻撃しているのがその理由だが、フーシ派はイスラエルがガザで戦闘を継続する限りは船舶への攻撃を続けると主張している。アメリカに求められているのはフーシ派の拠点を空爆することではなく、イスラエルに停戦を迅速に実現させることではないか。

イエメン空爆に向かう米軍戦闘機 https://www.aljazeera.com/news/2024/1/12/dangerous-us-attacks-on-yemens-houthis-belie-push-for-de-escalation


 イスラーム世界に対するアメリカの軍事介入は、反米テロの背景にもなってきた。911の首謀者とされるオサマ・ビンラディンは湾岸戦争で米軍がイスラームの聖地があるサウジアラビア駐留することが、イスラームを侮辱するものだと反発していた。イエメンでは、2015年にフランス・パリのシャルリー・エブド社を襲撃した「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」が活動していて、米軍のイエメン空爆はこの組織の主張や活動に追い風を与えるものだ。イエメン空爆はバイデン大統領への支持を低下させ、彼の再選への妨げになる可能性がある。バイデン大統領のガザ政策はアメリカのリベラル層、若年層に不人気だからだ。

 アメリカのカリフォルニア大学バークレー校・政府研究所(Institute of Governmental Studies)が1月4日から8日にかけて8、199人を対象に英語・スペイン語で実施した世論調査が「ロサンゼルス・タイムズ」(1月12日)に掲載された。そこで明らかになったのは、30歳以下の若い有権者はイスラエルよりもパレスチナに共感していることだ。30歳以下ではハマスがガザで権力の座にとどまったにしても、イスラエルは停戦に応じるべきだと考える人が55%、反対が18%だった。それが65歳以上の世代だと52%がハマスが存続できなくなるまでイスラエルは戦闘を継続すべき、それに反対するが32%だった。30歳以下では44%がイスラエルよりもパレスチナに共感し、わずかに14%がパレスチナよりもイスラエルに共感すると回答した。65歳以上の世代だと46%がイスラエルに、13%がパレスチナ、32%が双方に共感となっている。

カリフォルニア大学バークレー校でパレスチナ解放を唱える https://www.businessinsider.com/berkeley-academic-offered-extra-credit-for-pro-palestine-protests-2023-10


 パレスチナ問題の2国家解決については世代を越えて47%が賛成、25%が見解なし、11%がイスラエルの単独支配に賛成、他方ハマスの目標であるパレスチナのアラブ人支配を支持する人は全体ではわずかに3%だったものの、30歳以下の回答者では7%が、また自らをリベラルと見なす層の8%がハマスの主張するアラブ人の統治を支持している。55%の有権者はバイデン大統領のガザ問題に対する取り組みを支持せず、33%が支持と回答した。しかし、リベラル層の64%はバイデン政権の取り組みを支持せず、また67%の保守層はバイデン政権のガザ問題に対する姿勢に反対を表明した。30歳以下では反対は69%と高く、バイデン大統領にとって若年層から支持を得られないことは、今年の大統領選の重要なカギとなり可能性がある。

パレスチナ支持を訴えるUCLAの学生たち 23年10月12日 https://www.latimes.com/opinion/story/2023-10-19/college-campus-protests-israel-gaza-war-ucla-students


 『ガーディアン』(1月7日付)「若い有権者はバイデン当選に貢献したが、今年は彼を見限るかもしれない(Young voters helped Biden to victory. They may abandon him this year)」という記事では、世界の環境運動に従事する若者たちは圧倒的にパレスチナとの連帯を表明し、イスラエルを批判することは「反セム主義」で不当だという批判を断固拒否すると伝えている。こうした考えは環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんがCOP28でえ「ガザと連帯する」というプラカードを手にしたことで加速された。

昔のUCLAの学生


 戦争は最大の環境破壊であることは多くの若者に共有され、また気候変動が難民・移民の問題を引き起こし、食料や水の供給に対する不安を増大させ、生態系を破壊していると考える若年層にとってイスラエルの空爆や砲撃が気候変動と同様の問題を招いていることを想像することは難しいことではないと記事には書かれてある。ヨルダン川西岸でイスラエルの伐採からオリーブの木を必死で守ろうとするパレスチナ人女性の姿も環境活動家たちの共感を招くことになっているようだ。

日本は若い人が少ないですね https://www.tokyo-np.co.jp/article/287424


 戦争は、大気、水、土壌を汚染し、野生動物の生態系を脅かし、爆発、火災、建物の崩壊によって有毒ガスや鉛やカドミウムなどが空気や飲料水に混入し、粒子状物質の拡散は人体の健康に否定的影響を及ぼす。汚染物質は風下や河川の下流に運ばれるために、ガザでの環境汚染は国境を越えて広がる可能性がある。世界の若い世代は地球の将来から最も影響を被る人々で、年配の世代よりも切実に戦争の問題を捉えていることは言うまでもない。


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