世界で評価される被団協・箕牧智之代表の言葉と、戦争する国は好まれない ―イスラエルを逃げ出す人々
ノーベル平和賞受賞の喜びを語った被団協の箕牧(みまき)智之代表委員は、「ガザは子どもたちが血まみれになって、そして食べものがない毎日を送って、学校を壊され、建物を壊され、橋を壊され、戦争が終わりそうにない。ガザの子どもたちは80年前の日本の子どもたちと思いさせます。」と語ったが、その発言はパレスチナをはじめ中東イスラム世界、ラテンアメリカ諸国、ヨーロッパなど世界中で大きく取り上げられるようになり、世界でもガザの停戦を求める声がいかに大きいかをうかがわせている。箕牧代表の言葉にガザの人々は励まされていることだろう。政治的な意図はもちろんなく、率直な日ごろの平和を希求する思いを表した言葉だった。
今年6月下旬「タイムズ・オブ・イスラエル」紙は、イスラエル・ハマス戦争の最初の6カ月間間に50万人以上のイスラエル人が国を離れ、戻ってこなかったと、人口・移民局の話として報じた。イスラエルは、パレスチナにユダヤ人を集めることによって、ユダヤ人の国を造るというシオニズムの思想に基づいて成立した国だが、その逆の現象が発生している。イスラエルは、建国当初からイスラエルから米国などへの移民の発生に危機感をもち、イスラエルからの移民を「裏切り者」などの形容で嫌ってきた。国の存立の根幹に関わるからだ。イスラエル中央統計局のデータによると、24年4月のイスラエルの人口は990万人で、そのうち200万人以上のパレスチナ人、東エルサレムの40万人のパレスチナ人、占領下のゴラン高原の2万人のシリア人が含まれている。イスラエルの全面戦争に備えて100万人余りのイスラエル人が二重国籍をもって出国に備え、また海外預金も増えている。シオニズムのイデオロギーは戦争や暴力が絶えない状態によって破綻している様子だ。
戦争ばかり行っている国に住みたいと思う人は多くないだろう。殺されるのはもちろん嫌だが、殺すのを好まないのも人間の本性だと思う。特に中道・リベラル層がイスラエルを離れ、残るのは右翼・極右という状態になっている。イスラエルに残るのは戦争以上のメリットをイスラエルに感じる人々だ。
イスラエルは、本来パレスチナ人や近隣諸国と和解し、平和に暮らすことができることを世界に証明しなければならなかったが、建国以来80年近くを経て、イスラエルは戦争と破壊、殺戮を繰り返すばかりだった。
イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは今月、インタビュー記事の中で、イスラエル(イスラエル)のアイデンティティーが危機に瀕していると述べ、国の魂が今や戦場となり、その結果は今後何年にもわたるイスラエルだけでなく、ユダヤ教の形をも決定づけることになるだろうと述べた。
ハラリ氏は、現在の状況と、西暦1世紀にユダヤ過激派がユダヤ教そのものの存在を脅かした時代を比較し、第二神殿の時代は、「熱心党」(反ローマの武装闘争を担った急進集団)が救世主的なビジョンを掲げてユダヤ教を乗っ取り、ユダヤ人のほとんどを滅ぼし、ユダヤ教をほとんど破壊した。その結果、ユダヤ教はその後自己改革しなければならなかったことで終わったと語り、その「熱心党」の考えが現在の狂信主義者たちと重なると述べた。ハラリ氏は、「熱心党」が現在、エルサレムを占領していると指摘したが、この2000年の間、ユダヤ人は何を学んだのだろう、今日再びローマの軍団の価値観を採用するのに、イェシバ(ユダヤ教の神学校)でいったい何を学んできたのだろうと問わざるを得ないと語っている。
10日、イスラエルの極右主義者のスモトリッチ財務相は、エルサレムがダマスカスまで広がるという予言がユダヤ教にあったと述べた。イスラエルはヨルダン川の東にヨルダンの国にまで広がり、エジプト、シリア、レバノン、サウジアラビア、イラクの一部をも領有することになるだろうと彼は述べた。軍事力で他国の領土を奪うことは国連憲章でも禁じられているが、ネタニヤフ政権の主要閣僚であるスモトリッチ財務相が侵略を平然と述べる背景には、イスラエル社会が「熱心党」化し、「熱心党」の活動がユダヤ教の破綻を招いたように、イスラエル国家も重大な危機にあることを示している。