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「大虐殺(ジェノサイド)という「ユダヤの悲劇」をパレスチナ人にするイスラエル

 イスラエル軍は24時間以内にガザ住民たちが北部から南部に退避するよう国連に通知した。イスラエル軍の地上侵攻が一段と迫っている印象だ。狭いガザ地区では住民たちはどこにいても安全を保障されるわけではない。これがアメリカのブリンケン国務長官が提唱した「人道回廊」なのかと思ってしまう。イスラエルの軍高官がガザ市民たちに対してエジプトに避難するように促したことも報じられたが、エジプトのシシ大統領はガザ住民たちをエジプトのシナイ半島に受け入れないことを明らかにしている。ガザの人々は避難すべき安全な場所がない状態だ。

読売テレビのニュースより


 イスラエル軍はガザへの水や電力の供給を止め、また病院や救急車まで攻撃目標にするなど人道に反する行為を行っている。ハマスのイスラエルへの奇襲攻撃と、ガザ住民の生命・安全・福利とはまったく別次元の問題だ。イスラエルはガザに住む250万人の住民に対するジェノサイド(大虐殺)を行うような勢いでガザを攻撃し、地上侵攻の準備をしている。ホロコーストに遭ったユダヤ人たちがパレスチナ人に対するホロコーストを行おうとしている。

あらゆる帝国は、他の帝国とは違ってその目的が略奪や支配ではなくて、教育や解放であると、帝国自身と世界にうそぶく エドワード・サイード https://twitter.com/GerryHassan/status/1014296378623840261


 イスラエルは「国」をもたないユダヤ人たちが創設した国家だが、そのイスラエルがパレスチナ人たちをいつまでも「国なし状態」にしているのは明らかな矛盾だ。パレスチナ国家を認めないこと、ガザ攻撃、分離壁の建設、占領地での入植地の拡大などパレスチナ人に対する人権侵害は、アインシュタインやハンナ・アーレントが述べたように、かつてドイツのナチス政権が行ったユダヤ人政策と重なる。

 パレスチナ人に対しては彼らの国家とともに、市民権が与えられるべきである。タカ派のネタニヤフ政権はパレスチナ国家の成立を視野に入れていないが、イスラエルによって数百万人ものパレスチナ人たちに国家が与えられないのは許容しがたい矛盾である。国家がない人々は、基本的な人権をもつこともできず、イスラエルの法が強制されるばかりだ。現在、パレスチナ人には財産の安全も保障されず、イスラエルによる財産の没収は日常的に行われてきた。ネタニヤフ首相はパレスチナ人たちに国家を認めるとした1993年のオスロ合意や2003年の「ロードマップ」も反故にしてきた。パレスチナ人は世界でも最大多数の国家をもたない民族で、その人口は500万人とも見積もられる。さらにヨルダンには、ヨルダン国籍をもつ360万人のパレスチナ人たちがいる。

ガザは北部のほうがはるかに人口稠密で、ハマスの拠点も北部にあるのだろう https://www.reddit.com/r/MapPorn/comments/175bd9r/population_density_of_gaza_strip_in_2000_vs_2020/


 ヨーロッパでは1930年代のフランコ政権時代に左翼主義者たちが国家をもたず、またドイツではユダヤ人が同様の扱いを受けた。現在、イスラエルが、パレスチナ人たちが国家をもたない状態に置くことはナチスが行った行為とまったく同質のものである。

 イスラエルと米国はハマスとPLO(パレスチナ解放機構)の分断によってパレスチナ人の政治力を弱めることを考えてきた。

 ガザのおよそ70%の人々は現在のイスラエルの領土から難民化した人々で、40%がいまだに難民キャンプで生活し、自らの土地をもっていない。ガザ、あるいはヨルダン川西岸を含むパレスチナ問題の恒久的平和は、「パレスチナ国家」の成立が前提条件になる。1993年のオスロ合意、さらに2003年にブッシュ政権が示した「ロードマップ」でもパレスチナ独立国家の創設は認められていた。また、経済封鎖の解除がなければ、ガザの復興も発展も考えられない。

 パレスチナ系アメリカ人の文学研究者のエドワード・サイードは、パレスチナ問題に関してアメリカ人の知識や理解がイスラエル寄りである背景にはアメリカ国内の親イスラエルのユダヤ人などによる情報操作があると考えていた。ワシントンDCにホロコースト博物館があるなどユダヤ人の悲劇であるホロコースは繰り返し強調され、またアメリカのイスラエル支援は手厚く行われる。他方で、イスラエル建国に伴うパレスチナ人の困難がアメリカ人の間で強く意識されることはない。サイードは欧米人の東方への差別観「オリエンタリズム」を背景に「アラブ人はオリエント人であり、それゆえヨーロッパ人やシオニストたちよりも人間的に劣り、価値もない。彼らは裏切りやすく、改心もしない」という見方がアメリカ人には広くあると語っている。(サイード『パレスチナ問題』1979年)

イスラエル兵にレッドカード https://twitter.com/FootballFunnnys/status/611738219227578368


 アメリカはイスラエルに毎年40億ドル(6000億円に近い)の軍事支援を行い、イスラエルへの最大の武器供与国である。現在ガザ空爆に使われているF16戦闘機、F35、アパッチなど攻撃用ヘリのほとんどがアメリカ製だ。ガザに撃ち込まれるミサイルや投下される爆弾の多くも同様で、アメリカにもガザの犠牲者たちに対して道義的責任があることは言うまでもない。

 アメリカは国連安保理で82回にわたって拒否権を行使してきたが、そのうちの44回がイスラエル非難の性格の決議案に対して行われるなどイスラエル支持一辺倒の立場を国際社会に露骨に示してきた。



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