シャンソン歌手バルバラ ―欧州平和への想い
2003年3月下旬のイラク開戦の前にドイツとフランスはイラク戦争に強く反対した。米国ブッシュ政権がイラク戦争に向かう過程で、同年1月22日にドイツとフランスの協力条約(エリゼ条約)を結んで40周年を記念する式典があり、両国は和解を強く確認していた。この条約は、現在イギリスの離脱で話題になっているEU成立の土台となり、両国は多元的価値観の尊重や寛容の精神を重んずるEUのけん引役となった。
ドイツ・フランスは普仏戦争(1870~1871)、第一次世界大戦、第二次世界大戦とおびただしい犠牲者を出す戦争を繰り返してきた。ドイツとフランスが対立を繰り返していてはヨーロッパの平和や発展、繁栄もありえないという考えから1963年1月22日にフランスのドゴール大統領と西ドイツのアデナウアー首相はエリゼ条約を結んだ。
エリゼ条約40周年記念式典に参加したドイツのシュレーダー首相は、1967年にドイツのゲッティンゲンの町でフランスの歌手バルバラ(1930~1997)の「ゲッティンゲン」という歌を聞いたことがあった。
バルバラはユダヤ系のフランス人で、ナチス・ドイツのユダヤ人迫害の歴史やナチス占領下のフランスにあって身を潜めて暮らした体験からドイツには複雑な感情をもっていた。
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1964年にドイツのゲッティンゲンでコンサートを開いたが、市民の歓迎ぶりに感激し、ゲッティンゲンは童話作家として有名なグリム兄弟の家があることを知り、この町がとても気に入り、楽曲「ゲッティンゲン」を作詞・作曲した。
(前略)
《そう そこにはセーヌ川もないし
ヴァンセンヌの森もないわ
でも 美しい所がたくさんあるのよ
ゲッティンゲンには
(中略)
流血と憎しみの時代を
二度と繰り返さないようにしましょう
だって 私が愛する人たちが住んでいるのよ
ゲッティンゲンには》
この歌はドイツとフランスの融和の象徴ともなった。フランスでは2017年5月の大統領選挙ではマクロン氏が勝利し、勝利後のスピーチはルーブルで欧州の平和と統合の象徴であるベートーベン第9交響曲の「歓喜の歌」が演奏される中で登壇して行い、国内の「融和」を強調した。また、 ドイツのメルケル首相とEUを強化していくことで一致するなどドイツとも協調の姿勢を見せた。
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