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エドワード・サイードが危惧したアメリカのイスラエル偏重政策

 パレスチナ系アメリカ人の文学研究者のエドワード・サイードは、パレスチナ問題に関してアメリカ人の知識や理解がイスラエル寄りである背景にはアメリカ国内の親イスラエルのユダヤ人などによる情報操作があると考えていた。ワシントンDCにホロコースト博物館があるなどユダヤ人の悲劇であるホロコースは繰り返し強調され、またアメリカのイスラエル支援は手厚く行われる。他方で、イスラエル建国に伴うパレスチナ人の困難がアメリカ人の間で強く意識されることはない。サイードは欧米人の東方への差別観「オリエンタリズム」を背景に「アラブ人はオリエント人であり、それゆえヨーロッパ人やシオニストたちよりも人間的に劣り、価値もない。彼らは裏切りやすく、改心もしない」という見方がアメリカ人には広くあると語っている。(サイード『パレスチナ問題』1979年)

 サイードは、帝国主義(=アメリカ)の歴史観について次のように述べた」。

 帝国主義は、歴史を書き換え、過去を再編し、帝国主義はそれ自身の歴史を提示する。帝国主義の恐るべきことは、歴史を醜く、不具なものにし、最終的にはアメリカの都合のよい秩序をつくるために歴史を抹殺してしまうのである。

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 サイードは、シオニズムはヨーロッパ植民地主義の原則がパレスチナに移入されたもので、欧米諸国はパレスチナ人たちが置かれた苦境に配慮することがないと語っている。サイードは、西洋のオリエント認識は人種主義に基づくもので、西欧的な考えに同化しない人種に冷淡なのだと説いた。シオニズムは、元々パレスチナに住んでいた人々の存在を否定し、排斥する傾向にある。彼は、世界各地の人権侵害を批判する欧米諸国がイスラエルのパレスチナ人抑圧を問題にすることがない「偽善」を指摘する。

 アメリカはイスラエルに毎年38億ドル(4100億円余り)の軍事支援を行い、イスラエルへの最大の武器売却国である。現在ガザ空爆に使われているF16戦闘機、45アパッチなど攻撃用ヘリのほとんどがアメリカ製だ。ガザに撃ち込まれるミサイルや投下される爆弾の多くも同様で、アメリカにはガザの犠牲者たちに対して道義的責任がある。

アメリカのイスラエル支援は軍事支援がダントツ多い https://www.aljazeera.com/news/2018/3/8/understanding-us-military-aid-to-israel?fbclid=IwAR1xMBgZIcDPL4F40SWD3evpxK3h2hVd02JIdXBb85bFrYuBp1Xfj6FJHVY

アメリカは国連安保理で82回にわたって拒否権を行使してきたが、そのうちの44回がイスラエル非難の性格の決議案に対して行われるなどイスラエル支持一辺倒の立場を国際社会で明らかにしてきた。

 これらのアメリカの対イスラエル支援の背景に武器輸出で利益を上げる軍産複合体や、議員への献金など選挙で絶大な力を発揮する親イスラエルの圧力団体(ロビー)の影響力があることは言うまでもない。

 2021年3月にギャロップ社が発表した世論調査では75%のアメリカ人がイスラエルに好感をもつのに対して、パレスチナ自治政府に対しては30%に過ぎなかった。サイードが語るように、ある種の情報操作の結果このような数字になっている印象だ。

 「自らがかつて犠牲を強いられたからといって、他者に犠牲を強いることを継続できないはずだ。自ずと制約がある。」(サイード)その制約をイスラエルに気づかせる責任が最大の同盟国であるアメリカにはあるだろう。

アイキャッチ画像は1948年以前、パレスチナ社会は存在していた
―サイード
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