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ヨーロッパはラファの難民攻撃に起ちあがる ―2つの国家なしに2国家解決はあり得ない

 イスラエルのガザ地区ラファ攻撃に対してヨーロッパ諸国では憤りや反発の声が上がるようになった。フランス・パリでは、1万人規模の抗議集会がパリのイスラエル大使館近辺で行われ、「われわれは皆ガザ市民だ」「ガザに自由を!」などのスローガンが叫ばれた。パリでは先月終わりから今月にかけてパリ政治学院の学生たちが大学施設の一部を占拠して、イスラエルのガザ攻撃を非難したことがあった。

イスラエルのラファ攻撃に抗議するパリ市民たち https://www.democracynow.org/2024/5/28/headlines/gaza_solidarity_protests_continue_following_attack_on_rafah_camp


 28日、アイルランドはスペインとノルウェーに続いてパレスチナ国家を正式に承認した。アイルランドのサイモン・ハリス首相は、第三次中東戦争で生まれた境界、つまりガザとヨルダン川西岸に、また東エルサレムを首都とする主権を有するパレスチナ国家を認めることを明らかにした。また、アイルランド政府はガザでの即時停戦を呼びかけた。ハリス首相はアイルランドが希望の担い手となる決意を明らかにし、アイルランドがこれまでイスラエル国家を承認してきたこと、パレスチナ国家との共存が可能なことを信じていると述べている。

パレスチナ旗を手にするスコットランド・グラスゴー・セルティックスのサポーターたち グラスゴーはアイルランド移民が多い。 昨年10月25日。https://www.aljazeera.com/sports/2023/11/2/celtic-fans-green-brigade-palestine-support-israel-war-on-gaza


 ハリス首相は国会で「ヨーロッパの仲間たちと足並みを揃えて、私たちは希望の担い手となることを目指しました。平和は可能であり、正義は達成可能であり、パレスチナとイスラエルの両国の承認こそが平和を築くための唯一のいしずえであるという信念を再確認したかったのです。2つの国家なしに2国家解決はあり得ません。」と述べている。

 ハリス首相はイスラエルに対する制裁を視野に入れているようで、「制裁に関しては、イスラエルについては何も除外できないと思います。特に現在ラファで起きている事態、国際社会が無視されている状況、国際裁判所が無視されている状態を考えるとなおさらです。」と語った。

「ジェノサイドをやめよ」 パリで。5月27日 https://www.lemonde.fr/en/international/article/2024/05/28/world-reacts-with-horror-after-massacre-in-rafah-emergency-un-meeting-called_6672854_4.html


 アメリカの大学生たちのデモや集会もそうだが、ガザでのイスラエルの攻撃に抗議したり、その停止を求めたりする運動のことを「パレスチナ支持」と形容してよいのだろうか。パレスチナを支持するというよりもイスラエルの人道に反する攻撃に反発する普遍的な感情から起こされていることは言うまでもないだろう。

 イスラエルのラファ攻撃は、8カ月近くの攻撃の中でハマスの最高指導者たちを拘束したり、殺害したりすることができていないために、ネタニヤフ政権が意地になって行っているように見える。そんな意地のために、犠牲になるガザの市民たちは気の毒としか言いようながない。

 フランスは西ヨーロッパの国の中では、イスラエルに苦言を呈してきた国だ。マクロン大統領も27日、イスラエル軍のラファ攻撃について言語道断と✕に書き込み、ラファ攻撃はやめなければならない、国際人道法を尊重し、イスラエルはただちに停戦をと訴えた。

 フランスのジャック・シラク元大統領(当時)は1996年10月にエルサレム旧市街を訪れた際、イスラエルの政府関係者が帯同することを断った。エルサレム旧市街はイスラエルが1967年の第三次中東戦争の際に占領したところで、国際法に照らしてイスラエルの支配が及ぶところではないと考えていたからだ。しかし、旧市街で重武装したイスラエル兵が近くでパレスチナ人を威圧するような姿勢を見せると、憤りをあらわにイスラエル兵たちに「私に飛行機に戻ってフランスに帰れというのか」と一喝した。イスラエル兵にパレスチナ・アラブ人への遇し方が、適切ではなく、挑発であるとも述べ、アラブ人たちは問題ないと英語で叱った。このシラク大統領の発言は、アラブ世界をかけめぐり、「アラブの友人」としての評価が定着するようになり、アラブ世界の世論調査では最も人気のある欧米の政治家という結果が出たこともあった。

イスラエル兵士を叱るシラク氏 1996年、エルサレムで https://www.leparisien.fr/international/chirac-a-jerusalem-en-1996-il-a-montre-son-attachement-au-peuple-palestinien-26-09-2019-8160720.php


 フランス議会は2014年12月にパレスチナ国家承認を政府に求める決議を成立させたが、日本政府、日本の国会にはガザでのジェノサイドを防ぐ手立てを早急にやってほしいものだ。アイルランドのハリス首相は「2つの国家なしに2国家解決はあり得ません。」と述べたが、だったら2国家解決を訴える日本もパレスチナ国家承認を行ってよいはずだ。

ガザ攻撃はやめるべきです。https://www.tokyo-np.co.jp/article/312541

表紙の画像はアイルランドのサイモン・ハリス首相
https://jp.reuters.com/world/europe/NAHTCI672ZMBVNYFYYEZLWY3VU-2024-03-24/


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