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スレブレニツァの虐殺と比較されるイスラエルによるガザ空爆

― 平和であるためにつくられ、一度も平和を見ていない土地に平和を ―
マフムード・ダルウィーシュ〔パレスチナの民族詩人〕

最後に残されたこの小道の上で
そう ここで この土地で
僕らが流した血のうえに
ここからもあそこからも
オリーブの樹がなるだろう
(「だんだん世界がとじてゆく」原詩:マフムード・ダルウィーシュ 訳詩:イルコモンズ )

マフムード・ダルウィーシュ(右)とエドワード・サイード https://www.jadaliyya.com/Details/23490


 およそ3週間にわたるイスラエルによるガザ空爆によって7000人以上のパレスチナ人が亡くなる事態となり、そのうちの半分は子どもたちだ。ガザの虐殺はスレブレニツァのそれに近づいたという記事も中東専門誌などでは現れるようになっている。

 「スレブレニツァの虐殺」は、旧ユーゴのボスニア・ヘルツェゴヴィナで1995年7月12日からおよそ10日間行われ、8000人とも言われるムスリムたちが殺害されたもので、イスラエルのガザ空爆もこれに近い「ジェノサイド」状態に陥っている。イスラエルはこれ以上人道上の被害が拡大しないように、空爆を直ちに停止すべきだ。

スレブレニツァの虐殺事件 https://www.afpbb.com/articles/-/2406334


 空爆が人道に反するのは、それが戦闘員と非戦闘員の区別なく、犠牲をもたらすからだ。戦時国際法では、非戦闘員は保護対象であり、これを無視して危害を加えることは戦争犯罪である。空爆の非人道性はパブロ・ピカソの有名な作品「ゲルニカ」によっても表現された。ドイツ空軍を主体とするゲルニカ爆撃は、敵基地そのものを攻撃する「戦術爆撃」に対して、前線の基地ではなく、後方の市街地を無差別に空爆して、一般市民に恐怖を植えつけ、敵の戦意をそぐことを目標とされた「戦略爆撃」の最初の例とされている。これをイスラエルに置き換えれば、ガザを無差別に攻撃することによって、パレスチナの武装勢力にイスラエルを攻撃する意欲や意気を阻喪させるということか。

 しかし、空爆は、イスラエルの安全保障を高めることには決してならないだろう。子供の犠牲までもたらす空爆はイスラエルへの憎悪や反発をパレスチナ人ばかりか、アラブ・イスラム世界にまでもたらし、テロの増殖など否定的な反響となってイスラエルに返ってくるに違いない。

 歌手の加藤登紀子さんは、自分の御守りとして中村哲医師の「『変わらぬ正義』と呼べるものがあるとすれば、それは弱い者を助け、命を尊重することである」という言葉を大切にしていることを紹介した。(「東京新聞」5月28日)加藤さんによれば、中村医師は戦争が正義の名の下に正当化されてきたことに反発していたという。イスラエルのガザ攻撃は正義の名の下にずっと行われてきたが、弱い者の命を軽んじてきた。

 日本の外務省は2010年11月に「中東和平に対する日本の立場」を発表したが、その中で東エルサレムを含むヨルダン川西岸においてイスラエルの入植活動の完全な停止を求めている。外務省の飯村豊日本代表(当時:中東地域及び欧州地域関連)はインタビューの中で「将来のパレスチナ国家の中核となる肝心の西岸の地域にイスラエルの入植地が広まり、今では40万人前後のイスラエル人が居住し、虫食い状態となっています。(中略)イスラエルによる入植地に対する怒りは私個人としても共感を覚えています。」と述べている。

http://news-magazine-indigo.blogspot.jp/2014/08/2.html

 日本政府は、イスラエル・日本の二国家解決にあたりその境界は、1967年の第三次中東戦争の停戦ラインを基礎として、自立できるパレスチナ国家と安全な環境の下に置かれるイスラエルの共存を実現すべきだ訴え続けている。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/middleeast/tachiba.html

 イラク戦争では、ブッシュ大統領の戦争を直ちに支持した日本政府だったが、パレスチナ問題については一貫して二国家共存を支持し、「パレスチナ子どものキャンペーン」などの日本のNGOなどを通じてガザ支援を熱心に行ってきた。ぶれない日本の姿勢がパレスチナの人々の信頼や、支持、共感を得てきた。


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