アメリカのイスラエル政策の支離滅裂と軍産複合体
アメリカのブリンケン国務長官は、議会の手続きを経ずにイスラエルに対する1万4000発の戦車弾薬の供与を承認した。アメリカはガザの文民保護を訴えながら、8日、国連安保理でアラブ首長国連邦(UAE)が提出した即時停戦を求める決議案にも拒否権を行使した。こうしたアメリカの支離滅裂な行動によって、ガザでは民間人の犠牲が増える一方で、9日現在で犠牲者は1万7700人になった。イスラエルもアメリカも、パレスチナや中東イスラム世界の人々の恨みを買って、自らに対するテロの要因を増幅するだけのように見える。
イエメンのフーシ派はガザで停戦が実現しない限りイスラエル関連の船舶がイエメン沖を通過すれば攻撃すると明言している。フーシ派は2015年1月に首都サナアを制圧したが、同年3月にサウジアラビアやUAEから空爆などの攻撃を受けるようになった。今年4月にこれら諸国とフーシ派の和平交渉が始まったが、フーシ派支配が安定しているとは決していえない。フーシ派にはイスラエルを攻撃することによって国の内外にその統治の正当性を訴える必要がある。イエメン沖のバーブ・エル・マンデブ(「悲嘆の門」などの意味)は世界の海運にとって重要な意味があり、フーシ派の行動をアピールできる背景がある。またイエメンはイスラエルと地理的に離れ、イスラエルの報復を受ける可能性も低い。
アメリカによるイスラエルへの経済支援のほとんどがアメリカ製の兵器の購入に用いら れている。アメリカの軍産複合体(軍部と軍需産業の結合体)やアメリカ国内のイスラエル・ロビー(圧力団体)は、武器管理レジームに反対したり、イスラエルとパレスチナ人との間のオスロ協定(1993年)の破棄を求めたりした。これらの勢力はアメリカの単独行動主義や軍事主義に訴え、中東地域におけるイスラエルの敵の排除やパレスチナ人の放逐を考えている。こうした主張をもったシンクタンクに、アメリカ企業研究所(AEI)や、ワシントン・近東政策研究所、国家安全保障ユダヤ研究所(JINSA)、安全保障政策センター(CSP)などがある。
これらのシンクタンクは、イスラエルがヨルダン川西岸とガザを再び占領することを要求することも行った。また、イスラエルの安全保障にとって都合のよい戦略的環境を中東に構築することを目指し、特にイラクのサダム・フセインを軍事的に排除することを主張したが、それがイラク戦争になった。
アメリカ政府はイスラエルがアメリカの中東における利益を守り、イスラエルにアメリカ製兵器を移転することが中東の平和をもたらすと考える。しかし、イスラエルは数次にわたる中東戦争を行い、また今回のように、アメリカ製兵器でガザ地区への攻撃を繰り返してきた。中東の不安定や暴力は、武器を開発したり、売却したりするアメリカやイスラエルの軍需産業の利益になってきた。イスラエルの国家予算の30%は軍事費に用いられる。
アメリカはイスラエルに毎年150億ドル(およそ2兆2000億円近く)にのぼる軍事支援を行うが、イスラエルは、他の中東諸国とは異なってアメリカの最新鋭の兵器を獲得できる。戦争など中東の大動乱はアメリカの軍産複合体や親イスラエル・ロビーに都合よく機能し、その莫大な利益となってきた。軍産複合体はイスラエルに大量の兵器を売却することができ、イスラエルはアメリカから多額の経済・軍事援助を引き出し、その援助がイスラエル国家の存続に不可欠と考えられてきた。
表紙の画像はJICAパレスチナ元事務所長 “和平へ日本がリーダーシップを” (NHK) 映画『ガザ 素顔の日常』上映後トーク
https://unitedpeople.jp/gaza/archives/15854
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