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ユーラシアに広がる精神世界

 奈良の東大寺二月堂で「修二会(お水取り)」が行われている。修二会は752年に初めて伝えられ、その法要は、「天下泰平」「五穀豊穣」「万民快楽」などを願って祈りを捧げ、人々に代わって懺悔(さんげ)の行を勤めるものだ。

東大寺二月堂「修二会」 http://www.machiyado.com/blog/2012/03/02/東大寺二月堂「修二会」はじまりました。/


 火を用いる行事は松本清張の『火の路』によれば、火を聖なるものとして崇めるイランのゾロアスター教の影響を受けたとされる。

 懺悔の行の倫理的色彩も、宇宙は正義で生命の神であるアフラ・マズダー(叡智の主)によって創造されたたと説き、人は神によって裁かれ、義者は天国に行くとし、また社会正義の促進を説き、善思、善行、善語を奨励するゾロアスターの教義に由来するのかもしれない。   

 アフラ・マズダーは、不滅と至福を約束する「正義」の王国の中心に存在する。
「我、よいこと思う。
ゆえによい我あり。」(『 アヴェスター』(ゾロアスター教の経典)より)

イラン チャハール・シャンベ・スーリー https://www.hitehranhostel.com/chaharshanbe-suri/


 ゾロアスターが説く正義はイスラムが最も重んずる徳であり、仏教の八正道も人間が正しく生きることの8つの方途を説く。

 松本清張は、飛鳥時代に日本にゾロアスター教が伝わり、斉明天皇(第37代天皇。在位655~661年)はその信者で、マギ(古代ペルシアの司祭)の秘術を用いたために、『日本書紀』の中で神秘的な人物として描かれていると説いた。

 ゾロアスター教の宗教的慣習から火には鎮魂の意味がもたれるようになったという説もある。夏季に日本人が好む花火にも鎮魂の意味があり、伝統ある「隅田川花火大会」も江戸時代に第8代将軍の徳川吉宗が病気や凶作、飢饉のために出た多くの死者霊を慰めるために、隅田川の水神祭りで、花火を打ち上げさせたのが始まりとされる。

 「修二会」の行事はユーラシアに広がる精神世界を確認する機会でもある。

アイキャッチ画像は東大寺二月堂修二会(お水取り・お松明)
http://www.houwa.net/housing/housing-nara/omizutori/

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