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蘇民祭と大銀杏


先日、1200年の歴史のある祭が幕を下ろしたというニュースが聞こえてきました。
決定をした住職の思い、最後の瞬間に立ち合い熱狂する若者の姿。
その祭を愛し続け、語り継いできた先人もいたでしょう。
地元の方の寂しさも大いにあっただろうし、悔しさや、逆にほっと肩を撫で下ろすこともあるのかもしれません。

平成22年(2010年)の3月、私の地元の近く、鎌倉鶴岡八幡宮の大銀杏が突然倒れました。
鎌倉幕府三代将軍源実朝が暗殺された舞台となったことも有名です。
その日、雪まじりの強風が吹き、耐えることが出来ずついに倒れてしまったそうです。
1000年の間、様々なことがあったでしょう。
しかし巨大な命は、じっとそこに在り人間の移りゆく様を見守ってくれていました。
秋になると見ることが出来る空いっぱいの黄色い葉は、幼い頃から私も慣れ親しんだ風景でした。
もう見ることが出来なくなってしまったことで、当時はとても寂しい気持ちでしたが、訪れる多くの方々が「今までありがとう」と感謝の気持ちに手を合わせていたことも印象に残っています。
あれから14年の月日が経とうとしています。
現在、折れてしまった銀杏の根から、蘖(ひこばえ)が育ち、立派に成長しています。
幹回り7メートル近くあった大銀杏から比べれば生まれたばかりの若木ですが、その生命力と、歴史を受け継いだ姿に胸を打たれます。
地上に見えている姿は異なっていても、同じ根から伸びた同じ命。
有名観光地である鎌倉を訪れる人たちは多く、ひとりひとりが様々に思いを寄せるでしょう。
そんなことを横目に、銀杏は今もじっと寒い冬を耐え、暖かな春の日差しを待ちながら芽吹の時を待っているはずです。
巨大な立木を倒してしまった激しい風も、若くしなやかな現在の姿ならば受け継いだ根により耐え忍ぶことが出来るのではないでしょうか。
この木を愛し続け絶対に復活させようとした神社の方々の姿があったことも忘れることは出来ません。
長い歴史を持つ祭も、人間という尊い命が、悠久の時を刻む地球への挑戦だとするならば、地中には生きた根が残っているはずです。
もう一度育てていこうとするのか、このまま人々の記憶の中だけに保存されるのか。
それは、土壌となる地域の選択です。

大好きな私の故郷の祭も、まずは豊かな地域づくりに取り組んで行くことが、やがて大きく力強い姿となって多くの人達に感動を与えてくれるようになるのかも知れません。

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