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適職診断で「芸術家タイプ」と診断された女のその後

ついに、春がやってきた。春といえば新しく何かが始まる季節。
進学、進級、就職、転職、退職…
私が働いている田舎の冴えない会社にも、新入社員が入ってきた。なんとな~く場の流れで指導係となってしまった私は、四苦八苦しながら仕事を教えている。全てにおいて初々しい新入社員をみて、ああ自分にもこんな時代があったのね…と懐かしい思い出にふけてみたり。まあ何が言いたいかというと、毎日頑張って働いてるよってことだ。

今日は、そんな私が就活生時代に受けた適職診断の話を書こうと思う。


***

就活生時代に、ハローワークの勧めで適職診断を受けた。
結果はタイトルにあるように「芸術家タイプ」。
結果をみた私は、ひどく落ち込んだのを覚えている。

まず芸術家ってのは最早エンターテイナーの領域に来ており、人の心を癒したり驚かせたり感動させることはあっても、直接社会の役に立つことはあまりない職業だ。
(※決してなくなってはならない大切な職業のひとつだとは思っている)

次に、そもそも安定した給料をもらえるわけではないし、緊急事態に直面したときに真っ先に不安定になる職業である。これはコロナ禍でより一層リアルに感じることになった。

しかも芸術家ってのは、ある日突然なれるものではない。生まれつきの才能と、ひとつの芸術分野を極めることができる環境、それ相応の努力。これらがすべて満たされたとしても、実際に芸術家になれるのはほんの一握りの人たちだけだ。

最後に、芸術家という企業に属さない、かつ実現困難な職業が出てくるあたり、自分は社会性が欠けた社会不適合者なのだと言われているようなものである。これがいちばん精神的にくる。

そんな職業があなたには向いてますよ!!なんて就職活動のはじめに言われてみてほしい。気分はどん底まで落ちる。
第一、就職説明会で芸術家を募集している会社なんて見たことがない。
企業に雇われる新卒の芸術家なんてのも見たことがない。
SNSやテレビで見かける有名なクリエイターはもれなく美大や専門学校を出ているが、わたしが専攻していた学問はあいにく芸術と全く関係がない。

とにかく、就職活動さえすればなれる職業ではないのだ、芸術家は。


戸惑う「芸術家タイプ」

メンタルが絹豆腐のように柔らかかった当時の私は、数日しっかり落ち込んだのちに就職活動を再開した。
笑ってしまうくらい、希望する企業はもれなく全て落ちた。
結局、地元の施設で医療職に就職した。
医療職は人に直接「ありがとう」と感謝をされる数少ない職業だ。
人の役にめちゃくちゃ立ってる。やりがいもある。
それでも3年経つ前に辞めた。利用者さんから言われる「ありがとう」の感謝の言葉は、上司のパワハラと長時間労働によって瞬殺された。
たった3年でも死ぬか辞めるかの二択になるくらいまでは精神的に追い詰められたのだ。
そのあと職業訓練校に通ったのち、今の冴えない田舎の会社に事務員として転職した。

これが適職診断で「芸術家タイプ」と診断された私のすべてだ。


***

社会人5年目になった今。過去を振り返ると、あながち「芸術家タイプ」は間違ってないんじゃないかと思う。なんてったって私の趣味は創作活動。何かを生み出すことが大好き。
それに、働いていく中で必要最低限の社会性は獲得できたかもしれないが、相変わらず社内の雰囲気や人間関係についていけない時がある。飲み会だって未だに苦手だ。
会社ってのは仕事をこなす場ではあるが、最低限人と関わるスキルも必要らしい。それって「芸術家タイプ」の人間にはちょっときついところがある。

それでも希望は持っていいと、私は思う

人というのは、過ごす環境によって簡単に変わっちゃう生き物なのだ。
TPOに応じてどのような行動をすればよいのか。誰の言葉を信じて、誰の言葉を聞き流せばよいのか。自分の心はどう守ればよいのか。逃げたほうがよい状況とはどういう時のことか。年月が経つと、「なんとなく、こんな感じ?」って感覚的に分かってくることが実はたくさんある。

「芸術家タイプ」の私は人一倍そのアンテナを張り巡らして働いた。その結果、必要最低限の振る舞いくらいはできるようになったかな、と思っている。

悩める「芸術家タイプ」の人々よ、私と一緒に社会の荒波を乗りこなしていこうじゃないか!

(でもやっぱり、適職診断に「芸術家タイプ」は盛り込んでほしくないなあ、なんて思う今日この頃です。もっと現実的な職業がいいよね…)

おわり



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