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『全員切腹』2021.09.06 窪塚洋介&豊田利晃監督トークレポート

全国公開中の『全員切腹』。名古屋・センチュリーシネマで行われた本作主演・窪塚洋介さん豊田利晃監督の舞台挨拶は『狼蘇山三部作』一挙上映の後、1時間以上(!)にもわたり濃密なトークが繰り広げられました。
後半は満席の場内から質問を募ったQ&A方式。次々と手が挙がり、盛り上がったひとときとなりました。
トークの一部を対談形式のレポートとしてお伝えします。
(2021年9月5日)

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豊田:2019年に『狼煙が呼ぶ』という映画を撮り、それから毎年夏に向けて映画を撮っています。
拳銃不法所持で逮捕され、ワイドショーで特集されたりしたんですよね。おじいさんの形見で、骨とう品の拳銃だったのですぐ保釈されましたが、それに腹が立って。いろんな取材を断り「映画監督なので映画で返答する」と作ったのが『狼煙が呼ぶ』
で、来年五輪があると。開会式は映画館がガラガラになると聞き「だったら映画を作ります」と作ったのが『破壊の日』。制作を始めたらコロナパンデミックが始まった。それでもいろんな難関を乗り越え、2021年。誰かが言いたいだろう言葉『全員切腹』というタイトルの映画を作りました。
人が個人として、どう選択して生きていくかを問いたくて作った映画です。映画にある長い台詞、これができるのは窪塚洋介しかいないとオファーしました。

窪塚:本当にありがとうございました。昔から、豊田さんの思いを俺が代弁させてもらう感じです。自分が感じていること、疲れるし考えないようにしようと思ってることを、肩を抱きながらケツ叩かれるような、否が応でも向き合わされることを人生の節目節目でいただいている感じです。
今までで一番長い台詞だったと思いますが、自分とかけ離れたメッセージではないのでスッと覚えられるんです。俺にアテ書きしてくれたそうですが、半身同体なところがあります。細かい話をしなくてもできる。

豊田:台詞の強弱、ここで怒鳴りを入れるとか面白くて。窪塚洋介ならではだなと思いました。

窪塚:監督は音楽好きじゃないですか。気づいたらそうなってたんですが、音楽的なんですよね。長台詞は長い曲を演奏している感じ。ここでこうしてみようとアイデアが出てくる。役を通じて死を体験できたような気もしてるんですよね。

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豊田:撮影は栃木県にある神社で、携帯の電波が入らないんです。社務所の電話が唯一のホットライン。自然の音だけで集中しやすい場所でしたね。

窪塚:スマホの電波から解放された場所でモノを作る体験、そうそうできないじゃないですか。しかもご神域でやれたのは体験としても大きいと思います。豊田さんって怒ってるイメージがあると思いますが、普段は柔和な優しい人なんです(笑)。白い布の上に虫が乗ってきて、助監督が払おうとすると「殺すなよ、神域だぞ」と。ほっこりしました。

豊田:終わった後「こんなシーン撮ったら寝られないだろう」と電話しようとしたら携帯が通じない。「窪塚くん帰った?」「もう帰りました!」と。電話できなかったんですよ。

窪塚:なるほど。それが言い訳(笑)。時間軸では『全員切腹』『狼煙が呼ぶ』『破壊の日』。未来編で豊田版『火の鳥』を作るんですか?

豊田:手塚治虫の『火の鳥』みたいな命の話、一本の作品としても、つながっても見られるものをやりたいなと。続いていくような気がします。

窪塚:三部作というか、もうシリーズなのかな?

豊田:大林(宣彦)さんは「尾道三部作」の後に「新・尾道三部作」を作ったから(笑)。

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― 窪塚さんが出演できない場合どうしたか? 本作はなくなったのか?

豊田:「絶対やるでしょ」と。巻物に出演オファーを書いて、脚本と共に送ったんです。

窪塚:「何だろう、この包み」と開けたら巻物。パララーッと長いんです。直筆の毛筆で「脅迫状かな」とよく読んだら「あ、出演オファーだ」。こんなに素敵なオファーは初めてだなと。大阪まで来てくださり「1日で終わるから」と言われ、これは逃げられないやつだと。逃げる気もなかったですけど。撮影は2日かかりました。ポスターは2日の「2」です。

豊田:気づいたんですが、このポスターはどこから見ても目が合うんです。「2日」って意味じゃないですよ?

窪塚:はい。すいません!

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― コロナの時代への向き合い方は。

窪塚:ピンチはチャンスだと思うんです。お腹痛いとか、寝坊したとか、電車に乗り遅れたとか、財布を忘れたとか、飲み過ぎちゃったとか、何でもコロナのせいにできる時代になってるけど、逆手に取って監督はコロナがあったから作品を作った。人のせい、時代のせい、コロナのせいにしてたら勿体ない。とにかく元気に前向きでいることは絶対忘れないようにしたいし、この先いつ終息するのか、こんな時代に子どもに何を教えたらいいのかという時に、全部自分で引き受けて楽しんでいくのを見せるのが一番のメッセージになると思う。そうありたいと思いますね。

豊田:壁にはドアがあると思うんです。僕は壁が来たらドアを探す。すり抜けることができないか。それが自分の仕事で、そうして映画を作っています。フジロックとか波物語とかも、SNSでみんな批判するじゃないですか。もちろん感染の問題がある。でも人がこの時代に楽しんでることを妬む気持ちも加わっている気がしています。人が楽しんでいることを共に喜びたい。いいじゃんと思う自分でいたいなと思います。そういうことは今後も増えてくるから。

窪塚:SNSも匿名の状態で石を投げる風潮があるじゃないですか。僕ら芸能人というか、俳優は「皆のお手本たるべき」みたいな。皆と同じようなことができなかったからこの仕事をしてるような人間に対して、お門違いな期待がのしかかっている時代だと思うので、そういうことにもアンチテーゼ、カウンターになるように生きていたいと思いますね。
誰かのために言い訳したり、誰かのために生きてるわけじゃないから、自分で自分のバランスをちゃんと取って、ひがみや妬み、自己顕示欲、罪悪感やストレス、欲望、いろんなことのバランスを取って楽しんで生きられるのかってゲームをしてる気もしていて。
今は皆がSNSとかで表現や発散ができる時代で、それぞれ溜まってるものを発散しやすいはずなんだけど、最初の一歩が違う方向に行っちゃってるから逆にそのSNSがストレスになったりしてるのかなって。
『全員切腹』の全員は「全員」だと監督は言うじゃないですか。お上に対して物申してるだけじゃなく、我々一人一人のことなんだと気が付ければ、もう少しいい世の中になるのかなって。…すいません、真面目なこと言っちゃって(笑)。

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豊田:よく「この映画は怒りが原動力になっているんですね」と言われるんですが、怒りじゃないなと。「震え」かな。怒りに震える、喜びに震える、震えみたいな原動力で映画を作ってる。結論が悲劇でも、震えの感情が届けばいいなと思うんです。

窪塚:映画を観た知人が「この映画は4Dなの? 座席が震えてすごいね」と(笑)。振動だと。監督はすごく音にこだわりますよね。でも劇場じゃないと体感できない。iPadやiPhone、テレビでも見れるけど、何で見るかによって全く違う映画体験になる。本当に映画館で見てほしいなと思いますね。

豊田:特に若い人に。配信の楽しみも勿論あるけど、やっぱりでかい音とスクリーンを、知らない人と映画館の暗闇で体験する経験をしないのは勿体ない。若い人に来てもらえるような映画を作ります!

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『全員切腹』 
出演:窪塚洋介 渋川清彦 芋生悠 ユキリョウイチ 飯田団紅
監督・企画・脚本・プロデューサー:豊田利晃 
プロデューサー:村岡伸一郎
製作:豊田組 CCP © 豊田組



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