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【だれかのじかん】丸谷ちひろさんの巻

インタビュー4回目は、沖縄で暮らす丸谷ちひろさんです。
映画の助監督として活躍され、現在は沖縄に移住。
「撮影に訪れた沖縄で運命の男性と出会い、結婚する」と私が聞いたのはご本人からではなく、とある監督から。彼女が助監督を務めた作品についての取材中でした。
なんでも撮影中のナンパがきっかけで、沖縄の大家族に嫁ぐとか???  本当に? 直前に交わしたメールでも何も言ってなかったのにどーいうこと! と仰天しました。
沖縄に移って1年と少し、丸谷さんの日々のお話です。

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― ご結婚のお話から。出会いは?

地方撮影の時は、その土地の神社に行くんですね。

― 映画の成功祈願として?

お祓いも必ずするんですが、それとは別で。助監督と制作部は準備中から動いているので、正式なものとは別にフラッとひとりで行くんです。
台風が多い時期の沖縄での撮影で、沖縄・東京スタッフの混合チームだったことなど個人的に心配な気持ちを抱えながら東京と沖縄を行き来してました。沖縄で夜にモノレールに乗っていたら鳥居が見えたんです。ライトアップされていて、夜もあいてる神社があそこにあるんだと知りました。
撮影がうまくいきますようにとお願いして、写真を1枚撮ったんです。そしたら、その写真に入っちゃった人がいた。その人が「あ、ごめんなさい。入っちゃいました?」と。
それが夫になります。

― すごい出会いですね(笑)。

神社内を案内してくれ、仲良くなりました。だからナンパではないです(笑)。

― 沖縄へ移住するのは、勇気が要りませんでしたか?

どうでしょう…。東京で結婚するとなると、仕事も止めにくいし、踏ん切りがつかなかったと思うので、逆に遠くに移住は飛び込みやすかったと思います。

― 映画の仕事を離れるのは、決断だったのでは?

この先ずっと、映画に参加しないかどうかはわかりませんが、沖縄で参加した映画がとっても楽しくて、うまく行ったと思ったんです。助監督としての区切りにはいいかなと思いました。それまではずっと映画に携わっていこう、40代に突入してもう結婚はないだろうなと考えてました。ちょうど40歳の時に会った友達に「もう絶対に結婚はない。仕事が楽しいから」と言い切ってたらしい。

― 面白いですね、人生は。

全然覚えてなくて「そんなにはっきり言ってたか」と思いました。夫は農家で、その土地でないとできない仕事だったというのもありますね。

― 環境の変化には、ついていけてますか?

どうなんでしょうね。私は農業をバリバリやっているわけでなく、お手伝い程度です。

― 沖縄の家族、親族関係は濃いイメージがありますが。

沖縄だからなのか、地方だからなのか、よく分からないです。
私は横浜生まれの都会育ちで、親族が近くに住んでいてしょっちゅう会うみたいなこともない。こっちでは家や土地を継ぐとかいう話がよく出るけど、ピンときてないです。嫁ぐ、家に入るという感覚があまりなく、当たり前のようにそういう言葉を使うのには違和感がある。でもまだよく分かってないんだと思います。

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― 沖縄に来て1年後にコロナが。沖縄はどんな状況ですか?

沖縄には杉の花粉症がないんです。例年マスクをしてる人が少ないのに、今年はすごいですねという感じ。

― じゃ、大打撃というほどではないですか?

農業は、野菜がどんどん安くなってしまってるのはありますね。航空便が少なくなった影響で県外に出せず、県内に留まってしまう。ただ、うちは大打撃までには至ってないです。
もともと農業はそんなにお金が稼げない。うちは細々とやっているので、あまり影響がない。いつもどおりの節約生活です。

― そうなんですか(笑)。

お金の面ではそんなに変わらない。夫が畑に出て、私は家にいるのでそれもそんなに変わらない。もしかしたら、田舎に暮らしてる人はそんなに変わらないんじゃないかな。どこも混んでないし、そもそも外食もしない。生活にはそんなに影響がない。

― じゃあ気分的な心配もなかったですか?

実家が横浜なのでダイヤモンド・プリンセス号以降、神奈川の家族・友人は心配でした。そしてかつての仕事仲間も心配でしたね。でも心配することしかできないし、心配だと言ったところで何の足しにもならない。多分彼らは今もそれどころじゃないくらい大変な思いで暮らしてると思うので、何も言えないモヤモヤがありますね。

― エンタメ業界、映像業界は影響が大きいと思います。

そうですね、どうしてるかなと思う。思うばかりで、特にこっちから言えない。でも戦ってる人が知り合いにたくさんいる。監督ってのもそうだと思うし、事務所の社長さんとかね。そういう人たちに、生きておいてほしいな、健康に気をつけてほしいなと願ってますね。

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― 丸谷さん自身は、健康的に暮らしてますか?

この前、健康診断で体重が3キロも増えてました。

― ダメじゃないですか(笑)。

炭水化物過多と言われました。やっぱり食生活は変わりましたよ。「カメーカメー攻撃」って、知ってます? 「カメー」って食べなさいという方言なんです。断っても断っても遠慮だと思われて出されるんです。沖縄の天ぷら、美味しいじゃないですか。

― 美味しいですね(笑)。

美味しいから、ついたくさん食べちゃう。でも自分で作る料理は気を使っていたんです。こっちはファーマーズマーケットが多く、採れたての野菜が手に入りやすい。東京で100円で売ってるニンジンとは新鮮さも全然違う。でも小麦粉を減らさないと。家にいる時間が多くて、昔は作らなかったパンやケーキを焼き始めちゃったんですよね。

― 素敵な暮らしですね。

それがよくなかったんだと思います。

― 充実した食生活ということですね(笑)。

そうですねえ。まあ食べることくらいしかないし。

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― 日々は、何をしてるんですか?

料理してます。料理が好きみたいです。食べてくれる人がいて余計いろいろ作るかな。掃除、洗濯、料理。普通ですよね。でも今まではないがしろにしていたことだから。

― 楽しそうですね。

楽しい…、どうだろう(笑)。楽しそうに見えるなら、そうでしょうね。
「こっちで何ができるかな」と思ってはいますね。お家でヨガをやってます。東京にいた時の先生がオンラインヨガを始めたので参加したり。

― 以前よりも、配信でいろんなことが始まりましたよね。

そうですね。東京でやってたお花もLINEで添削してもらえてます。お花はその先生と話すのが楽しくてやっていたところがあるし、ヨガも東京に良い先生がいらして、その方がオンラインヨガを始めてくれたんです。

― 今はネットで、距離を感じずにできることが増えましたよね。

でもね、コロナの前は、あんまり連絡もなかったです。
連絡を取りたい人に取っても、あんまり返事がなかったりとか、したんですよね。今みやびさんと話してるのも、コロナだからでしょ?

― うーん…、コロナだからなのかなあ?

いろんな人が連絡をくれるきっかけにはなりましたよね。私も今なら話せるかなと連絡を取り、特に家族と連絡が密になった。私はコロナであまり変わってないけど、そういうのはコロナのおかげというか影響があったと言えるかもしれないですね。
意外とね、私は「勝手にピューッと行っちゃった人」みたいな感じだから、みんな放っとくんですよ。まあ幸せなんだろうと思っているのかな。時間はべらぼうにあるので、ちょっぴり寂しかったりも、するんですよ。それが、今年に入って少し解消されたかな。

― 向こうから皆が連絡をくれるようになったんですか?

そうですね、ふっと電話がかかってきたり、メールが来たりが増えました。

― 確かに「勝手に行っちゃった、幸せなんだろう」というのはあるかもしれないですね。

まあ、今までの仕事仲間が結婚したら、私でもそうすると思います(笑)。

― 用事がないと連絡しづらいかもしれない。自分からバンバン連絡すればいいじゃないですか。

全くしないわけではないんですが、なかなかね(笑)。電話したら一から十まで話さなきゃいけないとか、あるじゃないですか。逆にかけられない。やっぱり身体的な距離はあると思う。会って話すのがメインだった人とは疎遠になってしまったかなあ、この一年で。

― それは、寂しいことですか?

一時的なことかなと思いますけどね。お互いの向いてる方向が今はかけ離れているからこうなっているけど、例えば私が頻繁に関東に行けるようになったり、見える部分が変わってきたら電話やネットを通じてでも喋れるだろうと思う。お互い目に見えることに一生懸命だと、喋りづらいことがあるんだと思います。

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― でも丸谷さんが元気そうでよかったです。

元気なんですよ。基本的には。何も問題なく楽しく生きてるわけでもないけど、幸い遠くにいる家族は元気みたいだし。

― 沖縄に来て、自分の中で変わったことはありますか?

白髪が減りました。ストレスのかかり方が変わったと思います。すごく楽しく仕事をしてたけど、やっぱりストレスも大きかった。今は、体を大事にしてあげたいかな。

― 今日は長い時間、ありがとうございました。

たまに電話くれてもいいですよ。

― はい。連絡します(笑)。

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良い映画にたくさん関わってこられた丸谷さんのことを「今どうしているかな、元気かな」と気にかけている人は、実は多いはずだと思います。この記事がそんな誰かに届くといいな。
この特殊すぎた2020年の春は、近くて遠い誰かとの距離を変えられるチャンスの季節でもあったような気がしています。


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