【誰かの時間】森田裕さんの巻
今池のライブハウスTOKUZOオーナー・森田裕さん。
昨年6月の初めにインタビューさせていただいた時は、緊急事態宣言によりお店は休業中でした。
あれから一年。現在の愛知県ではまたもや、3回目の緊急事態宣言が出ています。
次々といろんな要請がかかるライブハウスですが、今は酒類販売禁止令が発動中。最近のお話、新しい企画のことなどを伺いました。
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― 前回のお話から一年経ちますが、今はいかがですか?
「あれダメ、これダメ」と言われるのが、毎回、直前じゃん。もうバタバタするのにも慣れてきたね。今回は東京で緊急事態宣言が出た時点で「名古屋も可能性ありだな」と策を考えてた。
― 営業時間を前倒しにしたり戻したり、そのつど対応されてきましたが。
うん。でも前は、酒が飲めたからね。今回は酒禁止がデカイ。
― 他のライブハウスと情報交換されることもありますか?
いや、もうみんな自分のところで手一杯になってる。でも5/5に「今池遊覧音楽祭」ってのを今池のライブハウスだけでやったの。あれも「マンボーが出そうだな」と、全ライブを20時で終わるように組んでた。
― 前もって準備できるようになってきたんですね(笑)。
だって痛い目に遭うもん! 今は来月以降どうなるかと思ってる。
― ずっと振り回され続けていますね。
急に、3日前とかに言うからね。仕方ないけど結構バタバタしちゃう。出演者に全て連絡を取って、どうするか個別に決めて。
― チケットを買ってるお客さんもいますしね。
うん。チケットはもう出すのをやめた。予約のみにしてる。去年は払い戻しが大変で、死にそうだった。でも、余分なものが取れてすっきりしてきた気がしてる。「なんだ、予約でいいじゃん」とかさ。そりゃ前売券を売りたいけど、根本的に考えたら「雨だから行くのやめた」でもいいと思うんだ。何しろ、不要不急だもん。
― まあ、そうですけど(笑)。
「欲をかいてたシステムはいらないな」って。
― シンプルになるってことですよね。人との関係性もそうかもしれない。シンプルに信頼し合える関係が大事になってきましたね。
出演者側も肝が据わって、腹が決まってきたね。「何があってもやる」とかさ。やる奴はやるもん。
― 今は、新しい配信の企画が生まれたんですね。
うん。今までは「20時まで」と言われれば、どうにか地元のバンドを入れて20時までのライブにしてたの。厳しい中で時間を早めて、何とか埋まった。でも酒がダメとなると、やるだけ赤字になっちゃう。うちは飲食で成り立ってるから「もう無理だな」と。
5月のスケジュールはほぼ決まってたけど、緊急事態宣言以降は地元ミュージシャンを全部配信にしたの。
配信だと当日のギャラがないわけ。当日のギャラを生むために、県外から来るミュージシャンは有観客でやった。地元バンドは営業しても厳しいので、休業して無観客の配信にしようと。1日2本、1時間ずつのライブ。それを35本くらい、全部まとめて2000円で配信しようと考えたんだよね。
― 思い切った企画ですね。他のライブハウスではあまり見ない。
他でやってないから、まずそういう配信システムが組めるかどうか。それを県が緊急事態宣言を出す前に調べたの。だから宣言が出て、即座に始められた。
― 個別配信が普通ですもんね。ひっくるめて見放題にしたのは?
コロナ以降、県外から来れないから地元バンドのライブが増えたの。うちはバンドに限らずいろんな人がやってくるので、知らない同士の対バンをやろうと思った。名古屋の中の風通しを良くしようと声をかけ、それを全部一緒くたに配信すれば、見たことのないバンドをいっぱい見られる。それはお客さんにとっても面白いことだし、バンドにとっても新しい人たちが見てくれるんじゃないかと。
― フェスですね!
そうだね。自宅フェス。そういうことが起きるかなーとやってみた。だから一人芝居をやる役者とか、いろんな人をプログラムしてる。
― 大友良英さんのバンドが出ますね。
大友さんは「単独配信でもいいし、ギャラの安いこんな企画もあるけど、どうする?」と聞いたら「俺もそっちの仲間に入る」と言ってくれた。今回、大雑把なカタログみたいなものができるかなと。全ライブを6/20までフルで見れて、面白いカタログになると思う。
― ジャンルもバラバラですか?
そうだね。全出演者を半分でも見たことある人は少ないかも。
― 配信ライブでは、客席側をステージにしてるんですか?
そう。他の配信を見てると、誰もいない客席に向かって演奏してる映像が多いでしょ。なんかおかしい気がしてさ。それならフロアを使おうと。円陣を組んで演奏してるよ。ステージでやるのとは違った演奏になる感覚がある。お客さんも普段とは違う演奏が見れると思う。
― 確かに、誰もいないのに客席を空けておく必要はないですね。機材セッティングは?
照明の位置は全部変えなきゃいけない。毎日変えてるよ。一人でやる場合とバンドでやる場合も組み替えてる。スモークも炊くし。
― 店としては準備が大変ですね。
1日2セットやるから、結構ね。普通にライブやる感覚と同じだね。
― 森田さんはご自分もプレーヤーですよね。その立場としてはどうですか?
誰もいない客席に向かってやるよりは、この方がいいよね。面白いよ。みんな頑張って演奏するから、熱くなってジャーン!と終わって、充実感あるんだけど、拍手も声援もない。反応がない。そうすると「ばかじゃない?」といわれてる気がしてさ。それも含めて、面白いよ。
― カメラは何台で撮ってるんですか?
スイッチャーで切り替えつつ、4カメ。結構ちゃんとしてる。音も評判いいし、テレビみたいだよ(笑)。
― やる側も、いろいろ技術が身に付きますね。
そうそう。毎日やってて勉強になる。転んでもタダじゃ起きない感じだね。金にはならないけどさ。ここまで来ると、いちいち不満なんて言ってられない。
― やるしかないですもんね。コロナの状況は当分続きそうですし。
今年中に何とかなるといいけどね。よそはキツイところも多いから、うちはこういうことがやれて、まだいいなと思う。
― 森田さんご自身は、お元気ですか?
元気、元気。でも、酒が飲めない。酒ってスゴイな。
― それが個人的にも大きいんですね(笑)。
もうダメ。酒を飲む以外の娯楽を知らないもん。
― そんなことないでしょう(笑)。
いや、知らん! 酒を飲まないと始まらない。そんで飲み過ぎると終わってしまう。その間の短い時間で生きてきたからさ。俺は車も運転しないから絶対に飲むんだよね。今回初めてノンアルコールビールを飲んだよ。
― 新しい経験ですね!
コロナが終わった後、今やってることがどう役に立ってくるのかなーと思うね。何もしなかった人と、その間に必死こいてやってた人との違いが出てくると思う。出てきてほしいよ。
― 今回の企画は、暫定のライブですよね?
もちろん。今しかできないことだね。
― そうか、逆に今しかできないことをやればいいんですね。
うん、それが充実するよね。何もやってないのは耐えられないじゃん。時間があるから考えるかというと、浮かばないもの。何かしてないと考えも浮かばない。
― 確かに。
しかし飲めない。
― やっぱりそれが一番の打撃ですね(笑)。
なんかなー。やっぱり人と飲まないとダメだなー。近所の焼き鳥屋も今は酒を出してないの。「出さないと客が来ないだろ?」と聞いたら「来ない。だから味噌汁をタダにした」と。何だそれ? って(笑)。
― みんな必死でアイデアを出してるんですね。
面白いよね、みんな。人間ボーッとしてらんないよね。
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●●●TOKUZO 特別配信企画●●●
5/12-31まで、地元バンドを中心としたライブが¥2000で見放題。6/20までアーカイブもあり。詳細は公式HP参照。
こちらの予告編(1min.)で雰囲気わかります。
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