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【連載企画】新生「都城・関之尾」

※このコンテンツは、2024年4月9日~2024年4月13日まで宮崎日日新聞社・地域版に掲載されたものです。登場される方の職業・年齢等は掲載当時のものです。ご了承ください。


 都城市がリニューアル事業を進めてきた同市・関之尾公園内に2024年4月27日、「スノーピーク都城CF」が開業する。再開発の背景や狙い、展望などを探った。

2021年4月撮影(参考)

2024年4月撮影 内覧会の様子

(上)起点

固有の自然や食 再評価

 2020年7月、都城市のキャンプ場「関之尾公園・緑の村」(1980年開業)に、国内大手アウトドア用品メーカー「スノーピーク」(新潟県)の関係者ら約15人の姿があった。同社キャンプフィールド(CF)候補地としてポテンシャルを測る1泊2日のモニタリングキャンプだった。
 固有の自然景観である関之尾滝や甌穴おうけつ群、時間によってさまざまな表情が見られる公園の遊歩道、朝もやがかかる庄内川を見ながらのコーヒータイム…。参加したスノーピーク地方創生コンサルティング(同)の若松隆一シニアマネージャーは「開発ありきで過去の成功例を当てはめるのではなく、キャンパー目線で体験した感動を届けたいというのが起点。宿泊してこその魅力が数え切れないほどあった」と振り返る。

2020年、関之尾公園のポテンシャルを図るために都城
市が行ったモニタリングキャンプ(同市提供)

 宮崎、鹿児島市から約1時間という地の利や、地域の豊かな食も評価され、南九州初の開設が決定。大型バスで訪れ、約30分で滝見学とトイレを済ませるような通過型が多かった同市の「一大観光地」が大きく変貌することとなった。
 1958(昭和33)年創業の同社は、新潟県・燕三条地域の金物問屋が前身。機能的でデザイン性に優れ、丈夫なアウトドア用品は近年、「スノーピーカー」と呼ばれるファンを生み出し、販売店舗数(2023年6月末時点)は直販、卸売りの合計で国内591、海外54まで拡大した。
 都城CF開設で助言を行った、キャンプがテーマのレストラン「ハイク」(宮崎市)の城戸美紀代表は支持される理由について、「(同社)社員の方々も絶対的自信を持つ永久保障の品々は使う高揚感があり、机や椅子など店内備品は全てスノーピーク。一度使えば固定ファンになる人も多い」と話す。
 同社が11年から注力するのがCFの全国展開と、地方創生への貢献だった。
 同社は同年、新潟県三条市中心部にあった本社を、車で約40分の山間部に移転させた。大型CFも併設することで県外からの人流が生まれ、キャンプが地場産業と結び付くことで、地域が豊かになる流れを実感。17年の子会社「スノーピーク地方創生コンサルティング」の立ち上げに至る。
 CFは全国10カ所に拡大。その蓄積が都城CFに生かされることとなり、同社の山口昌浩専務は自信を見せる。「(週末を中心に)1晩で120家族がキャンプする波及効果を考えると、この地域も変わりますよ」

 関之尾滝 「日本の滝百選」に選ばれている。大滝・男滝・女滝と三つある滝から、ごう音とともに、一気に水が流れ落ちる様は圧巻で、滝の向こうには、国の天然記念物の「甌穴おうけつ群」の岩場が広がる。

 関之尾の甌穴おうけつ 長さ600メートルにわたって連なり、世界一の規模とされる。約34万年前の破局的噴火で噴出した火砕流が冷え固まって川床になり、水流の力などで削られてできたという。

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