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【連載企画】達人の商売道具

 熟練の技術を磨き、その道を究めてきた各地域の職人や達人たち。彼らが愛着を持って使用してきた商売道具を紹介する。

 このコンテンツは宮崎日日新聞社・地域統合版に2024年4月30日~5月7日まで掲載されました。登場される方の団体・職業・年齢等は掲載時のものです。ご了承ください。


1.漫画描く「水性ペン」

今村 幸一さん=三股町

表情豊かに命吹き込む
 いがぐり頭で元気いっぱいな小学2年生の「諸方ぼんちくん」といえば、都城市民で知らない人はいない人気漫画キャラクター。市のPR部長も務め、市内を歩けば案内板など至る所でそのイラストを見かける。作者の「みやこのジョー」こと今村幸一さん(69)=三股町新馬場=が、ぼんちくんに命を吹き込む道具として愛用しているのは国内大手文具会社の水性ペンだ。

自宅作業場でペンを握るぼんちくんの作者
・今村幸一さん
今村幸一さんが長年愛用している水性ペン

 元々は墨汁を付けるGペンを使っていた。線に強弱が出て漫画に適しているが手間と時間がかかり、本業が会社役員の今村さんにとっては作業が大変だった。何本も試す中で、Gペンに近い表現ができる水性ペンに出合い、「何より手に持つフィット感がいい」と10年以上使っている。
 ペンは0・05ミリ~1ミリの太さによって使い分ける。顔の輪郭など軟らかい表現は太いペン、服や顔のしわなど細かい部分は細いペンで描き、豊かな表情の作品に仕上げる。
 毎月発行のフリー冊子「ぼんちくん」の他、4コマ漫画、広告イラストなどを手がける“売れっ子”漫画家なだけに、高額なペンと思いきや1本200円ほど。仕事はボランティアが多く創作は赤字になるため、安くて質の良いペンを重宝する。
 利益はなくても休日に自宅の作業場で机に向かって一心にペンを動かしている時が一番幸せという今村さん。9月に創作開始から25年を迎えるぼんちくんは、自身の小学生時代を投影した作品で思いが深い。「ここまで描き続けられたのは妻の厚子をはじめ家族の支えがあるおかげ。これからも体が続く限りペンを握りたい」と感謝する。
 ただ「あくまで自分はアマチュア」と言い、今もずっと憧れていたプロの漫画家になる夢を抱く。古希を前にしても時代劇などアイデアを温めており「この年だからこそ描ける漫画がある。(漫画家志望の)若い人たちとも競いたい」と意欲は尽きない。

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