見出し画像

ゲームは終わっていない

七月八月は時間はあるのに読書がはかどらなくて、図書館で借りた本の期限には追い立てられるし積読は片づかず、何故か九月の半ばくらいからすいすい読めるようになってきて、その勢いで人から借りっぱなしだった二冊にも手をつけたら予想外の面白さで一気に読んでしまった。

地元の読書会で知り合って、椎名誠や野田知佑が好きだったという話で盛り上がった方が、よかったら読んでみてと貸して下さったのが椎名さんの「失踪願望」。コロナ禍のある一年ちょっとの身辺雑記で、脚注には時事情報などピックアップされているので自分のことも振り返りつつ、かつてよく読んでいた作家の方が老齢となった今どのように生活して世相をとらえているのか伺えて、非常に興味深かった。そして、思春期に私がかなり深く影響を受けた野田さんの死とそれにまつわるエピソードが、椎名さん野田さんが交流していたであろう頃の年齢に追いつき追い越す歳に自分がなった今読むと胸に迫るものがあり。当時はただあこがれの存在だったけどある程度は同じ立ち位置から想像できるというか。いつの間にか僕らも若いつもりが年を取った、というやつですね。若いころ無邪気に読んでいた作家が年齢を重ねて同じ時代を生きておられることがリアリティを持って実感できる、良い本だった。

そしてもう一冊は、六月に数人で飲みに行ったとき、お互い親の親が満州からの引き揚げを経験しているという共通点があるとわかり、おじいさまの体験談を中心に親族の方でまとめたという本をお借りしたのですが、自伝で多少盛ってる面があるとしても、おじいさまが大変優秀な方で、ご家族の方も含めて、どのような体験を戦中戦後されたのかが臨場感を持って伝わってきたし、あの時代を生きた方は皆、多かれ少なかれ今でいうPTSDを抱えていたであろうこと、そして自分の傷は祖父母や両親の経験と連綿とつながっているんだなと、様々に思いを馳せることができた。

処理水放出、ガザの侵攻、知るたびに暗い気持ちになるニュースがいっぱいで、知らない見ないで気楽に生きるだけじゃ自分はいやだし、かといって気持ちを引きずられてぬかるみに足を取られてできることもできなくなっちゃうようじゃ仕方ないし。匙加減ほんと難しい。

人に薦められて読んだ「山下澄人の人生相談」に感銘を受けて何箇所か手帳にメモしてて。

ゲームの終わりは今にはじまったことじゃない
しかしゲームは終わっていない。
たっぷり絶望するが悲観なんかできないということです。

今日も生きよう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?