煮込みしかないくじら屋で
少し前に、浅草の「捕鯨舩」という居酒屋に行った時の話です。ビートたけし『浅草キッド』の歌詞に登場する〈くじら屋〉のモデルになったとされる店です。
「お兄さん、芸人? この店来たんだから、お酒飲みなさいよ」
お姉さん、というか“お姐さん”という感じの女性に声をかけられました。
みやまる:
「芸人ではないですけど、講談教室に通ってます。それこそ、神田伯山先生だってお酒飲まないって、話してましたよ」
お姐さん:
「へぇ〜講談ねえ。……そういえば(店内のテレビで追悼特集がかかってた)、圓楽師匠亡くなっちゃったね。圓楽さんは偉大だったけど、偉大すぎて、落語界は“次の三遊亭圓楽”を育てられなかった気がする……」
まさか「くじら屋」で演芸談義をすることになるとは! しかもその日は東洋館からの帰りでした。こんなドラマみたいなことがあるんだと、内心深く感動していました。
お姐さん:
「お兄さん、芸人? この店来たんだから、お酒飲みなさいよ」
みやまる:
「いや、講談教室には通ってますが……」
このあと3回ほどほぼ同じやりとりをくりかえしたのち、お姐さんは篠つく雨降る夜の浅草へと帰っていきました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?