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James Bondと霧島

 世界的に有名なスパイ映画「007」シリーズ。その第5作目「You Only Live Twice(007は二度死ぬ)」は日本を主な舞台としていることでも知られており、主演のショーン・コネリーの他に、浜美枝や丹波哲郎といった日本人俳優も出演しています[1]。映画の中で特に印象的なのは1960年代の日本の風景。東京オリンピック直後の東京や、後に世界遺産に登録される姫路城、鹿児島・坊津の漁村など、現代との景観の違いに驚きます。実はそんな中に、霧島山の新燃岳も登場しているのをご存知でしょうか?

 新燃岳が登場するのは、オートジャイロ「リトルネリー(Little Nellie)」を用いた空中戦のシーンです(007公式YouTubeチャンネルより)。噴気を上げるえびの高原の硫黄山が映った後、坊津の漁村の風景を挟んで新燃岳と中岳、高千穂峰の火山の列が現れる場面は壮観です(1:09あたり)。また、グリーン色の火口湖や火口の内側のしま模様など、その後の噴火で失われて現在は見られなくなった風景も懐かしさを感じるところです。

 上の動画をじっくり見ると分かるように、活劇シーンには新燃岳以外で撮影された映像も織り込まれています。国立公園である霧島では大掛かりな撮影の許可が下りなかったため、代わりにスペインのトレモリーノスで撮られた映像を合成したようです[1]。温暖湿潤で植生豊かな南九州と地中海性気候で乾燥したイベリア半島では植生が異なりますし、火山地域の霧島と違って、トレモリーノスは石灰岩地帯というのも大きな違いです。そのあたりは、上の動画をじっくり見ると分かります。

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 この映画が撮影された1966年〜1967年の新燃岳は、1959年の噴火のしばらく後で噴気もなく穏やかな様子がうかがえます。この後も新燃岳は大人しい時代が30年以上続きましたが、1991~1992年の小噴火の後、2008年から始まる平成噴火へと突入します(上の写真は2011年1月26日の噴火: 永友武治氏撮影)。その一連の噴火の際に、新燃岳は海外メディアから「James Bond Volcano」などと紹介されました [2-4]。公開から半世紀以上が過ぎた現在でも、この作品とともに新燃岳が世界中で記憶されていることに、霧島に暮らすひとりとしてちょっぴり誇らしい気持ちになりました。

引用記事
[1] You Only Live Twice (film) - Wikipedia
[2] Picture of the Day: Japan's Shinmoedake Volcano Erupts - The Atlantic (February 2, 2011)
[3] Eruption surprises Japanese volcanologists - Nature (February 9, 2011)
[4] Japan's 'James Bond' Volcano Erupts In A Spectacular Display Of Fire And Smoke - Forbes (May 6, 2018)

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