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宝塚歌劇雑文集

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宝塚歌劇関連の雑文
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#雪組

宝塚歌劇の雪組の『CITY HUNTER』の新人公演

 作品と演出家と劇団には書きたいことがたくさんあるけど、ちょっと後回し。新人公演のレビューです。  新公チーム全員が本当に楽しそうに演じていて、舞台上はキラッキラ。本役さんにとらわれることなく自由に表現している子が多くて、それが気持ちよかった。芝居を深めることより、段取りやキャラ作りなどに奔走することが多そうなので、新公ではやりやすかったのかもしれない。  キャスティングがドンピシャ。役が多いのに、上手いこと割り振っていて、それを見ているだけでも楽しく、新たな面を見つけた

2021年の『ヴェネチアの紋章』。ヴェネチアの海は深いブルー。

 雪組全国ツアーの初日に行ってきました。彩風咲奈、朝月希和の新トップコンビのプレお披露目となる日。客席に入る前に拍手が鳴っていて、もしや、と思ったら、望海風斗さん、真彩希帆さんの前トップコンビがそろって客席に座っていらっしゃる。なんとも心強い船出。みんな、うれしかっただろうなあ。  だいもんもまあやさんも、在団中とちっとも変わらない雰囲気。客席からさっそく雪組の舞台を楽しんでいるようでした。だいもんの、何事においてももったいつけたり思わせぶりなことをしないところが好きです。

雪の巨大惑星のフォルティッシッシモ的大爆発*宝塚雪組『f f f -フォルティッシッシモ-』

とうとう今日という日が来てしまった。 望海風斗さんが宝塚を去る日。そこそこの天気になることは天気予報で知っていたけど、でも、何かの間違いで暴風雪みたいな異常現象が起きてしまわないようにと願っていた。ほんっとうにいろんなことがあった宝塚人生だったから。ここでまた何か起こってもおかしくないもん。 『f f f -フォルティッシッシモ-』。作・演出の上田久美子先生は、望海風斗という演者を得て、とてつもない作品をつくりあげた。 望海風斗さんのこれまでの作品すべてを、そこから生ま

麻実れい 芸能生活50周年記念コンサート 三重奏

麻実れい芸能生活50周年記念コンサート 「三重奏~Rei Asami Trio~」 構成・演出 広渡 勲 北島直樹(Piano) <特別出演>寺井尚子(Violin) エレガントとはターコさんの50周年記念コンサートに行ってきました。 会場は銀座ヤマハホール。ビル正面のガラス壁面には「おかえり、おんがく。」という大きな文字。延期になっていたコンサートが、無事に開催できてよかった。ホールに入ると、ソーシャルディスタンシング仕様の入場者数になっていたのがせつなかったけれど。見た

私の原点『炎のボレロ』

「タカラヅカって、ほんとに楽しい!」 彩風咲奈さん主演の『炎のボレロ』の感想をひと言にするなら、こんな単純な言葉になる。 『炎のボレロ』は、当初、『Music Revolution! -New Spirit-』との二本立てで全国ツアーの演目として企画されていた。この作品を観るのをとても楽しみにしていたのだけれど、 コロナ禍の影響で梅田芸術劇場だけでの上演となり、観劇は叶わず、ライブ上映でのスクリーン観劇となった。なのに、その二本立ては、それを差し引いてもなお余りある、宝塚

大切なことは、目には見えない*《スカイ・ステージ・トーク リクエストDX#72「壮一帆・水美舞斗」》

タカラヅカ・スカイ・ステージで、《スカイ・ステージ・トーク リクエストDX#72「壮一帆・水美舞斗」》を見た。 Twitterにこんなふうに書いたのだけど、ハートのマークをつけてくれた方がたくさんいたので(自分比)、調子に乗ってもう少し。 マイティーなら仕方ない水美舞斗さんをキライな人っていないんじゃないかと思う。 いわゆる「人好きする」タイプ。素直で屈託がなくほがらかで、心の扉がいつも開いている。ハッピーなオーラではち切れそう(笑)。何かをやらかしたり、言い過ぎたり

そして汽車は走る*宝塚雪組『特急20世紀号に乗って』

ON THE TWENTIETH CENTURYBook and Lyrics by Adolph Green and Betty ComdenMusic by Cy ColemanBased on a play by Ben Hecht and Charles McArthur and also a play by Bruce Milholland“On the Twentieth Century” is presented by special arrangement w

宝塚雪組『ひかりふる路』*新人公演を観て考えた

結局のところわたしは、「なぜロベスピエールなのか」というところで止まっていたのだと思う。 マクシミリアン・ロベスピエール。自身が「革命」と妄信するものを推し進めるために、恐怖政治で4万人もの命を奪った独裁者。何百年、何千年経ってもその行いを許せないし、そんな人物を宝塚歌劇の主役として描いてほしくなかった。 タカラヅカで上演するなら、よほど周到に扱わない限り、「美化」につながってしまうからだ。ナチスSSの軍服をカッコイイ衣装として身につけたアイドルグループが非難されるように

宝塚雪組『ひかりふる路』  わたしがこの「物語」に乗れない五つの理由

1月7日 15時30分 ■物語の案内役は誰?大劇場で観て以来の観劇。ヒロインのマリー=アンヌを演じた真彩希帆ちゃんをはじめ、芝居の熱が抑えられ、作品全体が引き締まった印象を受けた。 とはいえ、作品に対する印象は、初見時からほとんど変わらず、やはりこの作品は好きになれないのだと悟った。 理由はいくつかある。まず一つは、物語のよりどころとなるような、観客が素直に感情移入できる人物がいないこと。 特に、今回のような、主人公に感情移入しづらかったり、複雑な歴史的背景をもった物