『私と小鳥とすずと』の感情をAIさんに読ませてみたら新しい発見ができた

『私と小鳥とすずと』は、金子みすゞさんの詩で、小学生の国語の教科書に載ってるくらい有名なものだ。私はこの詩のことを、「いい詩だなぁ」と単に思っていた。
…AIさんに読んでもらうまでは。

今回お願いしたのはユーザーローカルの感情認識AIさんだ。「喜び」「好き」「恐れ」「悲しみ」「怒り」の5つの観点からどういう感情が強いか分析してくれるみたい。
感情を分析されることに抵抗感を覚える人もおそらくいると思う。しかし、カウンセリングの手法としても感情を数値化して客観視することが取り入れられていることを考えると、個人的には理にかなっているように思える。
さて、私はこのAIさんを知ったとき、なんとなしに『私と小鳥とすずと』を読んでもらおうと思った。私はこの詩から金子みすゞさんの優しさを感じているけど、AIさんはどうなのかなって思って。
ところがところが。結果がこちらだ。

https://emotion-ai.userlocal.jp/documents/5bf2198ce555578216956726ac75a045/result?nr=1

一番強い感情が「怒り」ってどういうことだ!?と私は当初戸惑った。教科書での(おそらくほわんとしたイラストが挿入された)イメージだととてもそうは思えなかったから。
ここはもう少し「怒り」がどこに込められているのか詳細に調べてみよう。直感的には、「私は~できない」が劣等感があって怒りに近そうだ。そう思ってそのフレーズのみ抜き出して読み直してもらった。
https://emotion-ai.userlocal.jp/documents/407e444125e2d6d2d95acbaf1972e31e/result?nr=1

あれれ?今度は「好き」に大きく振られている。ということは、むしろ「○○は私のように~できない」に怒りが含まれているということか?
https://emotion-ai.userlocal.jp/documents/9d9bab129eca5df83cb7ae8c6c477451/result?nr=1

ドンピシャ。
GPTをはじめとした文章生成AIは、平たく言えば、前に来た文章ないし質問の単語の意味や、単語同士の関係をカテゴライズして、応答を作り出している。
だからこの「○○は私のように~できない」の文のコンテクストに、前文での私への否定がされたことを推察し、それへの「怒り」を含んだ反論、と解釈したのではなかろうか。

では「私は~できない」を同じ観点で読み直してみよう。この文のコンテクスト、それは「憧れ」である。私のような人間はしばしば比較して自分ができないことをネガティブにとらえがちだが、前文でもっと素直に「すごいなぁ」と言った上での「私は~できない」だったのかもしれない。

以上のことを総合すると、本当は比べられることへの「怒り」ー金子さんのイメージに忠実に言い換えると、強い批判ーが込められているという読みもできるだろう。
それをネガティブな印象を与えず、「みんなちがって、みんないい。」という言葉を説教臭くならないように表現したところが、後世まで残る詩となった所以なのだろう。

AIさん達が増えてきているが、人間のしてきたことを「より速く」できるようにさせたり、より効率的に人間が動けるようにさせたり、ということにあまり旨味を感じない。
人間さんにしかできないことをよく論じられるように、AIさんにはAIさんにしかできないことをやってもらった方がいいと思う。
そうして、人間同士のコミュニケーションでよくあることのように、お互いにとって新しい発見があるといいなと願っている。

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