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スクラムマスターを雇う時に聞いてみるとよい質問に答えてみた: スクラムマスターの役割について

こんにちはこんばんは。スクラムマスターの いのもえ です。

「スクラムマスターを雇う時に聞いてみるとよい 38 個の質問」はご存知でしょうか?
日本語ですと、 ryuzee さんが執筆されている以下の記事が引用されていることが多いです。

記事の執筆が 2016 年でそれなりに前で、上記記事の引用元の記事はすでにアーカイブされてしまっています。
最新の記事を探してみると、「スクラムマスターの役割」の部分のみですが以下に 2020 年版を確認することができます。

2020 年版を確認すると 2016 年版と少し違うみたいなので、「スクラムマスターの役割について」は 2020 年版、それ以外は ryuzee さんの記事をもとに自分でも答えてみようと思います。

今回は「スクラムマスターの役割について」の部分に回答していきます。


アジャイルマニフェストでは「プロセスやツールよりも個人と対話を」といっている。プロセスを守らせるスクラムマスターは、それとは反対のことをしているのではないか?

私は「スクラムマスターはプロセスを守らせるもの」とは少し違う考えを持っています。
私はスクラムマスターは正しいプロセスを知っているべきだと考えてますが、それは「正しいプロセスを広めるため」ではなく、「プロセスを改善しようとした時に、正しいプロセスから自分たちに合ったヒントを得るため」だと考えています。
ですから私の場合は、仮にチームが正しいプロセスとは全然違うアプローチをとっていたとしても、うまくいっているのであれば特に何も指摘せず、課題が無いか観察に徹します。
結果として、自己流のプロセスで発生した課題を解決していくうちに、いわゆる「正しいプロセス」に寄っていき、結果として「スクラムマスターがプロセスを守らせている」という状況に繋がっていくことはあると考えています。

自分の組織でアジャイルがうまくいっていることを示す兆候は何か?また自分の働きが成功している兆候は何か?

開発に関わる人達が、自分が関わるプロダクトの提供価値の最大化に集中できていると思えたら、それはアジャイルがうまくいっていると言えると考えています。
自分の働きが成功している兆候もまた同じように感じていますが、少し加えるとすると、開発に関わる人達が自分のチーム以外にも関心を示すなど「全体に関わる問題に目を向け始めること」が自分の働きが成功している兆候だと思います。

スクラムマスターはスクラムチームに代わって障害を取り除くべきか?

部分的に yes だと感じます。
スクラムチームは PBI の消化やプロセスの改善に集中するのが望ましいと考えており、その集中できる環境を作るのはスクラムマスターの責任だと考えています。
そのため、チームの集中を大きく阻害するような障害であればスクラムマスターが取り除くべきでしょうし、チームが集中している領域に近く、かつチーム自身がその障害を乗り越えることでより成長できそうなのであればスクラムマスターが障害を取り除くべきではないと考えています。

スクラム マスターはプロダクト オーナーとどのようにコミュニケーションをとるべきか?

プロダクト開発における有形なもの(プロダクトそのものなど)を作ることに関してはプロダクトオーナーの責任、無形なもの(チームや文化など)を作ることに関してはスクラムマスターの責任だと考えています。
実際のプロダクト開発にはどちらも不可欠なもののため、お互いに対等に協力するべきだと考えています。
特にスクラムマスターが支援できるポイントがあるとすれば、それはプロダクトオーナーが考えているビジョンや物事の判断の仕方をチームに伝えるための工夫や、浸透させるための施策を考える・推進するなどが挙げられると思います。

製品のディスカバリープロセスにスクラムチームは参加してよいか?その場合はどのようにするか?

製品のディスカバリープロセス ≒ 要求定義やそれより以前の企画案段階だと想定して回答します

参加したほうが良いと考えています。要求定義の場があれば、その場に同席することから始めるのが良いと考えています。
顧客の要望や課題を理解することで、チームはよりアウトカムの大きい開発を判断できるようになりますし、自分が作ったものがどのように使われているかを知ることはモチベーションにも繋がると考えているからです。
もちろん、もっと後工程になってからも課題を伝えることはできますが、要求定義などのプロセスでは顧客と直接話すことの方が多いと思っており、間に人が挟まるよりも直接やり取りできる方が早いし、熱量がダイレクトに伝わるのは代え難い経験であると考えています。
ただし、全ての顧客との定例に参加していると、ものづくりのための時間が減っていってしまうと思いますので、あくまでも要求定義あたりからで良いのではないかなと考えています。

設計上プロダクトオーナーの役割はボトルネックになる。価値が最大になるよう、どのようにプロダクトオーナーをサポートするか?

プロダクトオーナーのやっていることの内、重要な優先度判断や、やる/やらない判断以外のことを少しずつチームにやってもらえるようにサポートするのが良いと考えています。
例えば、"プロダクトオーナーがステークホルダーから「(企画段階の機能について)この機能作るとしたらざっくりどのくらいの工数かかるか教えて」と言われて工数計算をする" という作業をやっているとしたら、その工数計算の方法を定義してチームにお願いするというサポートが良いと考えています。
優先度判断ややる/やらないの判断についても、小さな決定についてはチームでできるようにすることで、プロダクトオーナーにより大きな意思決定に集中してもらえるような環境を作っていくのが良いと考えています。

スクラムチームがステークホルダーに確実にアクセスできるようにするにはどうすればよいか?

リファインメントやスプリントレビューに特に関係のあるステークホルダーを招待する、開発プロセスの改善にステークホルダーも巻き込む、の 2 点が良いと考えています。
また、初めはスクラムマスターやプロダクトオーナーがアクセスしても良いですが、最終的は誰でもアクセスできるように仕組みづくりや場作りも必要だと考えています。
今所属しているチームでは、スプリントレビューに sales 部門や cs 部門の方も参加してくれており、より顧客に近い観点からの意見や実際に挙がっている声なども観測することができます。これにより新しくチームに入った人でも、誰がどんなことをやっている人で自分の仕事にどんな関わりがありそうなのかヒントを得られる状態になっていると感じています(実際私は助かりました)

どのように複数の異なる部門にまたがってアジャイルのマインドセットを広げるか?ITじゃないステークホルダーをコーチするのにどんな戦略をとるか?

複数の異なる部門 = 同じ会社や同じプロジェクトに所属する別のチーム と想定して回答します

チームのプロセス改善をきっかけに、少しずつアプローチするのが良いと考えています。
同じ目標を掲げている別チーム、ということだと思うので、「目標達成の阻害要素だと思っているので一緒に解消しませんか」という姿勢で近づき、こちらが課題だと思う理由の補足要因としてアジャイルのマインドセットを紹介していくようなイメージです。
IT じゃない場合も同様なアプローチで良いとは思っていますが、もし難しいようであれば先方の課題を聞き出し、一緒に解決する過程でアジャイルな方法を採用していくことで実際にやってもらう・見てもらうのが良いと思います。

上級管理職にどのようにスクラムを紹介するか

上級管理職に就く方はチームの課題に関するアンテナが敏感な場合が多いと考えているので、まずは課題に思っていることを聞いてみます。その中で解決方法としてスクラムを紹介するようなアプローチをとると思います。
単に定義やものを紹介するよりも、実際の課題に合わせて紹介するほうが理解しやすいかなと考えています。

あなたはすでにステークホルダーにスクラムのトレーニングをしたとする。この考え方を適用しようとする初期フェーズのあと、スクラムの適用を続けることに同僚が激しく抵抗するような障害やハードルにぶつかったとする。このような状況においてどんな戦略を取るか?またどんな経験があるか?

激しい…とまでは思いませんが、現在居るチームでもスクラムの適用を "大" 歓迎している人は少ないと感じています。私はこの抵抗がある状態は、スクラムの考え方よりもやり方の方が目立っている状態だと思っています。
同じ目標を掲げていることは共通していると思うので、その目標達成プロセスにスクラムが合わないと感じるポイントやその理由を聞き、どこまでであればスクラムを適用しても良いと思えるか対話するアプローチをとると思います。
私はスクラムの中でも特に重要なのは「考え方」だと思っており、また、自分の観測範囲内だと考え方レベルの抽象度で抵抗する人は見たことがありません。その前提にはなってしまいますが、抵抗がある範囲が「やり方や進め方」についてであれば、対話を通してお互い納得できる進め方を選択すればよいと思います。
また、チームに考え方や思想から抵抗する人が多いのであれば、そもそもスクラムの適用をやめることを視野に対話を進めるのが良いと考えています。

経験があるスクラムマスターとしての採用面接はまだ受けたことが無いですが、考えさせられる問題が多くて回答するのも非常に楽しめました。
まだ他のテーマが残っているので、次のテーマに回答するのも楽しみです!

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