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【本紹介♯115】忘れられない小説

読んでからじわじわと心に染みて、忘れられなくなる本ってありますよね。
私は基本的に小説はご紹介しないのですが、どうしても忘れられなくて紹介したい本があったので、今回は書くことにしました。

喜多川先生の本です。
実は喜多川先生の本は初めて読みました。
小説ってわりと作家さんで選んでしまうので、自分の知っている人を選びがちなんですよねえ。
だからこの本を読んだのは偶然でしたが、…が、今まで読んでいなかったことをかなり後悔しました。

主人公はひとりの冴えないサラリーマンで一家の主人
なんで自分はいつも報われないんだろうと嘆きつつ、偶然出会ったのは運がよくなる場所に連れて行くと言う不思議なタクシー運転手で…という話です。
SFというか、自己啓発というか…心温まる話というか

いくつもの言葉がとにかく心に残って離れないんです。

「運は〈いい〉か〈悪い〉で表現するものじゃないんですよ。〈使う〉〈貯める〉で表現するものなんです。だから先に〈貯める〉があって、ある程度貯まったら〈使う〉ができる。少し貯めてはすぐ使う人もいれば、大きく貯めてから大きく使う人もいる。そのあたりは人によって違いますけどね。どちらにしても周囲から〈運がいい〉と思われている人は、貯まったから使っただけです」
「じゃあ、ついてる奴は、そうじゃない奴と同じように頑張っているように見えて、実は運を貯めてたってことか?」
「そうですよ。貯まった運を使うとき、周りから『ついてる』って見えてるだけです」
修一は険しい表情で腕を組んだ。運転手が言っていることに「なるほど」と納得している自分と「そんなこと認めてたまるか」と反発している自分が心の中で葛藤していた。

私は運とは、自分の気持ちの持ちようだと思っていました。
例えるなら、コップの水がまだ半分あると思うか、もう半分しかないと思うか、みたいな。

でもこの本では、ポイントカードのようなものだということでした。
ちまちま使う人もいれば、大きく使う人もいるのだそう。

「たとえばニンジンなら、春のまだ暖かくなる少し前に種を植えます。そこから育ててニンジンとして収穫できるのはいつ頃かご存じですか?」
「さあ、五ヵ月くらい先?」
「わかってるじゃないですか。僕はてっきり『その日』とか言うんじゃないかと思っていましたよ」
「そこまでバカじゃないだろ」
「ええ。もちろん冗談です。でも、僕たちは仕事の成果とか努力の成果ということになると、その『バカなこと』を期待していると思いませんか?」
「今、頑張っているんだから、今すぐ結果が出てほしいと思っているということか」
「はい。でも、なかなか結果が出ないと言って苦しんでいるんです。人によっては自分は運が悪いとか思い始めます。頑張ってるのに報われないって言う人はみんな、種を蒔いてそれを育てているんですが、ちゃんとした収穫時期の前に『まだ育たない』と言って嘆いているようなもんです。もっと長い目で見たら、報われない努力なんてないんですよ。あまりにも短い期間の努力で結果が出ることを期待しすぎているだけです。今日頑張って明日実になるなんてどんなに早く育つ種でも無理なことですよ」

このやり取りなんて、色んな努力している人に当てはまりますよね
勉強とかダイエットとかスポーツとか…
私は今資格勉強しているので、ぐさっと見事に刺さりました。笑

主人公の修一さんは文句ばかりで、人になんとかしようと思ってばかりいる人でしたが、運転者さんとの関わりの中で、少しずつ変わってきます。
そして最後には…、うん、今読み直しても面白いです。

手元に置いておきたくなる魅力溢れる本です。
疲れたなあと思ったり報われない…と思うときに、読んでもらいたいです。

以上、みかんでした。


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