詩 あるExcelシート

あるExcelシート
(一)
会社の管理課では
仕事が始まっている

僕は
九時二分に打刻して
さも
ここにいたかのような
ふりをして
Excel管理シートを展開する

おはようございます
確認をしています
案件は以下となります
A756894
P574937
本日解約済みです

えっ 朝礼に〇〇課長がいたのですか
えっ にこ〇課長代理も
えっ ×宮部長も
会議前に僕を探してましたか

僕は
あるExcelシートの
最果てのセルを
クリックする
ここの余白から
会社のとあるシステムに
入ることができる

定年退職された◎◎次長から
教わったパスワードを
入力する

■◇〇〇×9:02→◇■〇〇◎9:00
memory/my time 記憶/時間
申請事項に入力し
申請ボタンをクリックする

僕はまた
Excel管理シートで
確認業務を続ける

(二)
〇〇課長に
申込件数と解約件数が
書かれている資料を
説明している

にこ〇課長代理は
悪そうな顔で
ニヤついている
たぶん出世のことを
考えているのだろう

〇〇課長が
管理課は仕事が早いと
褒めてくれる
×宮部長も
喜んでくれているらしい

僕は
にこ〇さんのアドバイスが
的確でいつも助かってますと
頭を下げる

にこ〇課長代理は
やはり悪そうに
笑ってくれている

にこ〇課長代理は
持ち上げないといけない

とあるシステムに
僕が申請して
やってきてくれたのだから

僕は
二人の前で笑っている

(三)
僕は
五日間連続で
十八時きっかりに
打刻して
エレベーターに乗る

×宮部長も
エレベーターに入ってきた
ニヤニヤして
スーツの腰ポケットから
朝の二分を取引した
領収書を取り出す
会社の経費で落としてくれる
らしい

×宮部長は
とあるシステムが
生み出した
会社人間だ

僕らは
悪そうに笑いあう

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