【CRYSTAR -クライスタ-】「涙」は「希望」に流転する【プレイ感想】
悪意が復讐を呼び、復讐が悪意を誘う涙の連鎖
希望・復讐・正義・孤独を抱き
それぞれのエゴとトラウマに立ち向かう物語
01. 【CRYSTAR -クライスタ-】について
涙に意味を、与えてあげて。
異世界「辺獄」に迷い込んだ姉妹の「零」と「みらい」
守るための異能力を暴走させ、妹のみらいを殺してしまう
死んだみらいを「ヨミガエリ」させるために悪魔と契約した零は
彼女のエゴを目的に、命がけの戦いの舞台にあがる。
02. 感想(ネタバレ含)
幽鬼の姫こと幡田みらいが「ヨミガエリ」をしようと画策したのが始まり
零に殺される以前に自身が起こした事故で亡くなったが、辺獄で生き返る
零の友人だった有理だけではなく、アナムネシス・千にも危害を加えた
そしてアナムネシスから小衣へ飛び火し、零も辺獄へと巻き込まれる
777が犠牲となることで、みらいが生き残った結末
みらいの思惑通りに事が進み、零がみらいの手にかかる結末
各々のエゴに悪意を増長させることで、全員が救われなかった結末
作為的に負の感情を植え付けようとするメフィス&フェレスに対して
理不尽を撥ね退けようと一丸となるさまは、彼女たちの成長を感じた
元凶となった幡田みらい本人に関しては
横暴な振る舞い相応に、彼女の人生も理不尽が多かったように思う
養子として幡田家に迎えられ、また零たち家族と離されることになる
かえって、みらいの愛は独占欲に傾くことになったのだろう
真理念を通して零がみらいを思う気持ちが伝わったのか、
みらい自身の過ちを正しく認めたうえ魂の浄化を受け入れた
零も感情に支配されて抗うことができなかったあの時とは違い
トラウマを乗り越えて、自分自身の意思でみらいの手を繋ぐことを選んだ
零がみらいを思い、みらいもまた零を思い合う姿が見れて良かった
03. まとめ
陰鬱な世界観とトラウマを刺激するイベントが多く、暗い雰囲気を感じるが
それらを乗り越えたキャラクターたちの成長と、経験からなる強さが魅力的
物語上、心の成長を促すために問題やイベントを発生させるという
目的と手段が逆転した話を、悪意という設定でうまく落とし込んでいた
「幽鬼の姫」や777まわりの伏線回収が丁寧で、
キャラの関係性やデザイン設定から気付くことも多かった
反面、ゲーム部分に関しては操作性やアクション面での調整不足を感じる
とはいえ敵モブのど真ん中に突っ込んだり、攻撃に攻撃を被せるなど
無茶なプレイをしなければ理不尽でもなく、戦闘自体を回避してもよい
ハクスラ要素と思装のランダムドロップに悩まされるが、
ドロップ品やオプション厳選はセーブ&ロードにより再抽選が可能
都度、レベル上げ兼アイテム集め用のステージが解放されるなど
甘えたプレイをしない限りはストレスを感じる難易度ではなかった
オリジナルアートブック(設定資料集)の内容が秀逸で
本編では語られずとも、断片的な情報から世界観の深さが垣間見える
ファンタジーにおいて、ユニコーンの角は解毒作用があると言われる
みらいの蛇に対し零のユニコーンが充てられたのも意識したものだと思う
哲学をモチーフに据えており、主題は一貫して「万物は流転する」
キャラクター名や細かい設定にも作り込みが見えて、知るほど面白い
「闇を抱えている人が前向きになるようなカタルシスのある物語にしたい」とインタビューで回答されているので、その点シナリオは緻密で綺麗
前を向くことが主題であるため、みらいに関する過去の話は最小限だったが
死者回顧録の一部で言及されている娘の名が ”みらい” であったとしたら……
零の両親とみらいが亡くなり、零が独りで塞ぎこんでいた時期もあったはず
零が試練へ向かう際、サインの手首を切るようなポーズは自殺を想起させた
みらいの手を掴めなかったこと、みらいを殺してしまったことも印象深い
ただし悲しい話に着目しすぎて涙に囚われるのではなく、
乗り越えて強くなるための糧としてデザインされていたのが特徴的
どんなに辛いことがあったとしても、いつかあなたの強さになる
涙を乗り越えた先に希望が待っていると、誰かが背中を支えてくれている
悲しみの涙がみらいを繋ぐ、あたたかな希望こそが CRYSTAR の輝きだった
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