なぜ人はネットで叩くのか?保田の持論がもっともだった『しょせん他人事ですから』第5話
またまたケンティー(中島健人さん)のドラマについての感想です。
『しょせん他人事ですから ~ とある弁護士の本音の仕事~』
第5話「デジタルタトゥー剤除編」
ネット上のトラブルを法律を扱う弁護士という視点から描く本ドラマ。
5話はデジタルタトゥーがテーマ。ネットトラブルでは、一人の人間が加害者になることもあれば、同時に被害者にもなりえる、ということがドラマを見ていると改めて感じます。
本回では、10年前に職場の同僚との飲み会の席での口論から相手に怪我を負わせたことで、ちょっとしたニュースになってしまった男性・黒川(浅利陽介さん)が、現在もそれがネット記事として残っていることについて、事件後に新しく家族(妻や子供)もできたことだし、子供が大きくなって知ることになるかもしれないから、過去の記事を削除できないかと相談に来ることからはじまります。
その中(後半)で印象に残る会話やシーンは以下。
パラリーガルの加賀見(白石聖さん)が、「一度ネットに名前が出たら、デジタルタトゥーとしてずっと残るわけですもんね」とため息まじりに言うと、喫茶店の柏原店主(片平なぎささん)がこう返します。
「人は、一度罪を犯したらもう前を向いちゃいけないの?」
そして、それまでテレビのコメンテーターとして出演するのを避けてきたという弁護士の保田(中島健人さん)は、今回は出演を「ものは経験だから」と、いつもの軽い口調で引き受けます。
テレビ出演での司会者とのやり取り。
司会者「デジタルタトゥーが問題視される一方で、『罪を犯したのだから情報が残るのは仕方がない、我々には知る権利がある』という主張もありますが、そのへんはいかがですか?」
保田「それはその通りですね。ただ、本人がいくら謝って反省して心を入れ替えようとしても、ネットでは関係のない人たちから叩かれる・・・。事情をろくに知ろうともしないで、顔も知らない人間が『謝れ、謝れ』と、下げた頭をさらに踏みつけてくる、という感じ?(笑) とでもいいましょうか。時にはそれが10年も前のことだったりします。僕からしたら「うるさい! やめろー! だるいー!!』って感じですけどねぇ~」
司会者「なぜみんなそこまで熱心に叩くのか。どうお考えですか?」
司会者に聞かれた保田はとぼけた表情で言います。
「えっ? だって、人が不幸なのって楽しいでしょ?」
司会者「えっ、、ま、まぁ、そう・・・いう・・・場面も・・・ありますかね(汗)」
保田「ある裁判の判決に、裁判官のつけ足した補足の意見があります」
とモニターに出てきたテロップを指します。
『実名報道がなされることにより、犯罪者やその家族が受けるであろう精神的ないしは経済的苦しみを想像することに快楽を見いだす人の存在を指摘せねばならない』
続けて保田は
「要するに~、“人の不幸は蜜の味”ってやつですね~。昔から噂話や陰口は井戸端会議の華でした。ネットの場合、それが世界中に公開され拡散されちゃうんです。誰にだって知られなくないことの一つや二つあるでしょ。それを探したり掘り出したり拡散する人たちは、まさに他人事(ひとごと)。安全な場所から他人を傷つけて快楽を得ている~」と、冷やかし口調で説明したあと、一変して真顔になりカメラ目線で視聴者に向かって言う。
「そして僕たちもそれを見て、なんだかんだ楽しんでいる。誰でも心当たりがあるはずです」と。
「もちろん、犯罪はいけません。それは大前提。でも結局は当事者たちの問題。僕らには関係のないことなんです。裏を返せば、当事者にとってもネットの意見はしょせん人の意見です。そこに耳を傾けて傷ついているヒマがあったら、本当に自分が向き合うべき人に時間を使えばいい。炎上しようと何をしようと、それを忘れてはいけません」
司会者は「その通りですね」と感心。
保田はパンをかじりながらカメラに向かってドヤ顔。
コメンテーターとしてテレビ上で説明する保田の話は核心をついていて、「なるほど」と思いました。(『虎に翼』の航一さん風)
保田が出演した番組の放送があった後日、過去のデジタルタトゥーに悩んでいた黒川に保田は
「家族のことは家族にしかわからない。子供にもちゃんと説明すればいい。あなたが自分の心とちゃんと向き合えていればそれでいい」
と、現在の黒川を信じてくれている妻(佐津川愛美さん)や息子との関係性を大切にするようにさりげなく言うのでした。
という具合に、保田のチャラくてドライにしゃべる軽い口調と、本質を捉えた言葉とのギャップがくせになるんですよね。
そして、黒川は過去に怪我を負わせた元同僚の鏑木香織(入山法子さん)に会い、改めて本心から詫び、鏑木も「あの時は私から喧嘩をけしかけてごめん」と詫びる。
二人ともそろって「謝るのって難しいね」と笑い、ここで本当に心の和解に至る・・・。
考えさせられるし、今の時代に沿った、他人事ではない事例がうまく描かれていました。
これまで現実の世界で話題となったネットトラブルでは、フワちゃんのSNS不適切投稿の件、男性の体臭批判で大炎上した元フリーアナウンサーの件、飲食店での不適切動画投稿の件、芸能人の過去のゴシップ掘り起こし⋯、他にもいろいろありますよね。
そして、第6話は「中学生配信荒らし編」。
中学生男子(斎藤汰鷹さん)が配信荒らしをやったことで大ごとになり、親も巻き込まれてしまうという話。
保田の事務所に相談に行った中学生は、保田に「子供からの依頼は無理でーす」と軽くあしらわれたので、別の弁護士を頼っていく。
その別のライバル弁護士役・ドラゴン星川 (自称、ネットトラブルに強い弁護士)に袴田吉彦さん。見た目のインパクトやクセ強めのキャラクターに目が離せません。
7話にも話が続いていくようなので、胡散臭いドラゴン星川がどう対処していき、保田がどこから解決していくのか楽しみです。