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【猿でもできるDIY】電波が貧弱なWi-Fiルータをアルミホイルで快適に!


こんにちは、都落ちです。

私が使用しているWi-Fiルータは2013年製の老頭児ロートルマシンで、奥まっている寝室に5GHz帯が届かないのはもちろん、2.4GHz帯すらブツブツ切れる有り様。
寝室に移動する度に"XXXX has a poor internet connection."と表示が出て怒られます。

忌々しい表示

あ~!あったまきた!アルミホイルでなんとかできないのか!!

で、この記事。

<解説>電波を強くする装置を自分で作るのは極めて難しい

発想としては悪くはなかったですね。電波には「波長」というものがあります。「波長」の長さに"うまくあわせて"反射させれば、電波が強くなる可能性もゼロではありませんが、手作り工作で「強く」するのは非常に難しいと言えるでしょう。

電波はその名前の通り「波」のように伝わります。「波」の大きさは、電波の周波数によって異なります。電波が反射するときには、その波長の高さによって強くなることも弱くなることもあります。
それに、アクセスポイントから極めて近い場所では波長は安定していません。この実験の例ではアクセスポイントから壁までの距離も一定ではありませんし、壁の表面の凹凸もありますから、このアルミオーブンの中では電波が「乱反射」していると考えられます。反射しながら強くなったり弱くなったりしているかもしれませんが、狙って強くできているわけではありません。

あまり聞きなれないかもしれませんが、「ミリ波」など別の電波では「導波管」という装置も存在します。電波を反射させながら特定の方向に電波を送波します。このオーブンと発想は近いかもしれませんが、緻密な計算のもと設計された装置なので、初心者が手作り工作で真似をする、というのは難しいかもしれませんね。

https://www.ntt-bp.net/column/blog/2021/11/post-54.html

「自分で作るのは極めて難しい」
……それ、ほんと?そんなこと言われると作りたくなる
「うそはうそであると見抜ける人でないと(ネットを使うのは)難しい」

要は、
乱反射しないよう、なるべく凸凹を抑えてアルミ箔を張り、特定の方向に電波を反射し導波する構造体を作ればよい、
ということですよね?じゃあやってやろうじゃん。


超簡単DIY!アルミホイルで「導波管どうはかん付きリフレクタ」作ってみた

目指すはこいつ。

甲殻類みたい

準備したもの
▢ アルミホイル
▢ 段ボール
▢ トイレットペーパーの芯×4
▢ ノリ
▢ テープ
▢ クリップ×4

使い方いろいろ!

トイレットペーパーの芯を長方形に折る。

方形導波管っぽく折ってます
長辺の長さについては記事後半で書いています

切り開いて、内側にアルミホイルをノリで貼る。

置いたアルミホイルにノリを塗ったトイレットペーパーの芯を
被せるように接着するとやりやすい

元の形に戻し、テープで接着

電波が通る内側が大事、丁寧に形を整える

ルータ右側奥に寝室、そこに向けて電波を反射させたい。

これはメルカリで1000円で買った10年選手のルータ

リフレクタを設置。
リフレクタはルータがスマホの電波を受信しやすくするアンテナを兼ねる。

ルータ+段ボールの内側にアルミホイルを貼ったリフレクタ

クリップをとめて導波管を完成させたら、リフレクタの各所にテープで接着する。

クリップは導波管の角度調節のため

クリップ付き導波管をリフレクタに接着したら……。

爆誕ッ!!!

ここまで僅か30分。


わくわくの効果測定

効果はいかほどか、検証です。
寝室の壁にスマホを固定して、電波強度(-dBm)と回線速度(MB/s)を測定しました。


導波管付きリフレクタ:5GHz帯(5260MHz)
あり

電波強度 -69dBm Wi-Fiリンク速度 216Mbps 推定距離 14.78m
ダウンロード 13.6MB/s アップロード 13.3MB/s Ping 15ms Jitter 2ms

なし

電波強度-75dBm Wi-Fiリンク速度 81Mbps 推定距離 34.06m
ダウンロード 5.82MB/s アップロード 4.97MB/s Ping 17ms Jitter 28ms

※実は、リフレクタを外した瞬間スマホが電波を掴めなくなり、モバイルデータ通信に切り替わってしまいました。そこで、リフレクタなしでの測定は、寝室で最もルータに近い場所にスマホを固定しました。


導波管付きリフレクタ:2.4GHz帯(2422MHz)
あり

電波強度-67dBm Wi-Fiリンク速度 108Mbps 推定距離 26.24m
ダウンロード 3.60MB/s アップロード 1.69MB/s Ping 19ms Jitter 7ms

なし

電波強度-77dBm Wi-Fiリンク速度 81Mbps 推定距離 87.77m
ダウンロード 2.45MB/s アップロード 0.84MB/s Ping 26ms Jitter 107ms

5GHz帯は6dBm電波強度が上昇、回線速度は倍以上出ており、2.4GHz帯に至っては10dBmも上がっている。リフレクタの圧勝です。
こうかは ばつぐんだ!
電波強度からの推定距離(Dist)にもご注目ください。かなり違います。

家にあるものでここまで変わるとは……。

なぜもっと早くやらなかったのだ……。

みんなもリフレクタ作ろう!やればできる。



調べたこと:「導波管どうはかん」?なんですか「導波管」って……?

私はなにも知りませんでした。

日本財団図書館(電子図書館) レーダー講習用指導書(機器保守整備編) (zaidan.info)

導波管(Wave Guide)は図3・26に示すような中空の金属の管で、この中を電波が伝わるわけである。導波管には図のように円形導波管や方形導波管等の種類があるが、レーダーでは専ら方形導波管が使用されているので、ここでは方形導波管についてのみ述べる。

 導波管の中は中空で、前項の同軸管とは異なって、導線ではないので、2本の線によって電気を伝えるという考え方をとるわけにはいかない。導波管の中を電波がどうして伝わるかというと、ちょうどロランの電波が地球面と電離層の間を反射しながら遠方まで届くのと同じようにして伝わると考えるのが一番理解しやすいであろう。

日本財団図書館(電子図書館) レーダー講習用指導書(機器保守整備編) (zaidan.info)

なるほど、とにかく電波を光ケーブルのように反射しながら一定の方向に遠距離まで飛ばす構造物のことらしい。

方形導波管の規格によって、飛ばせる電波の周波数が変わってくる。

(中略)ここでもλ≧2aになると、Vgは0または虚数となる。これは、電波のエネルギーはもはや導波管の中を伝わることができないことを示しているわけで、このような波長λ’を、遮断波長、またその波長に対応する周波数を遮断周波数という。言い換えると、方形導波管はその幅の2倍以上の波長の電波を伝えることはできないことになる。

日本財団図書館(電子図書館) レーダー講習用指導書(機器保守整備編) (zaidan.info)

ある電波の周波数が高い時は(波長が短い)、管軸に沿って進む速さが速くなり、従って平面波の通路が短くなる。通路が短かいということは(a)のように一定の距離を進む間での反射の回数が少なくなることである。

周波数が低くなると(波長が長い)通路の長さが長くなるため反射の回数が多くなり(b)のようになる。更に、周波数が低くなり遮断周波数に近くなるにつれて、益々反射の回数が多くなり、遮断周波数になると、ついには平面波は(c)のように管壁a-b間で反射して管軸方向に伝播しなくなるイメージとなる。

方形導波管 管内波長|電波加熱研究所・マイクロ波誘電加熱技術情報|山本ビニター株式会社 (vinita.co.jp)

周波数が低くなり、波長が導波管の2倍の長さに近づけば近づくほど、導波管内で鏡写しのように反射し続けてしまい、電波が進行方向に進まなくなってしまう、ということのようだ。

今まで使っていた周波数は2.4GHz(≒2422MHz)なので、

≒123.78mmの波長。電波を伝えるためには、開口部の長辺が60mmより長い導波管を作れば良いだろうか。一番手頃な筒状の構造物はトイレットペーパーの芯。だが、四角く潰しても長辺が60mmにはならず、これでは導波管として使えない……。

なるほど、「緻密な計算」というのは導波管と周波数の関係だったのか。

ならいっそ、より波長の短い5GHz帯用の導波管として作ってしまえばよいのではないか。今までは仕方なく回折しやすい2.4GHz帯を使っていただけなので、高速通信ができる5GHz帯が家中で使えるようになれば、最良の結果になるはず

波長を調べる。

λは56.994mm

λ<2aを満たす必要により、5GHz帯(5260MHz)に必要な導波管の長辺は28mm程度。トイレットペーパーの芯を長方形に潰せば、だいたい48mmは得られる。導波管として使うには十分だろう。

上の検証で示されたように、トイレットペーパー芯の導波管は周波数の高い5GHz帯を、より指向性を高くして導波してくれているはず。
この図の (a) のように。

その証拠に、導波管の延長線上にある寝室内の空間が、特に電波強度が高く回線速度も速かった。


付録

せっかくだし、3.3式にλ(5GHz帯波長)とa(方形導波管長辺)を代入してλg(管内波長)を求めてみる。
管内波長ってなんだろ。

$$
\begin{align*}
a &= 48 (\mathrm{mm}) \
\\[10pt]
\lambda &= 56.995  (\mathrm{mm}) \
\\[10pt]
\lambda_g &= \frac{\lambda}{\sqrt{1 - \frac{\lambda^2}{(2a)^2}}} \
&= \frac{56.995}{\sqrt{1 - \frac{56.995^2}{(2 \times 48)^2}}} \
&= 88.0200 \ldots \approx 88.02
\end{align*}
$$

よって、今回使うWi-Fi電波5260MHzの管内波長は88.02mm。

方形導波管 管内波長|電波加熱研究所・マイクロ波誘電加熱技術情報|山本ビニター株式会社 (vinita.co.jp)

3-1 方形導波管
(5) 管内波長λg
方形導波管の基本モードの伝送は、一定寸法の導波管内を進行する電波の周波数即ち波長によって、管内を伝播しうるのに必要な入射角が変化して決まってくる。即ち、導波管の両側壁(短辺)に反射した二つの波が合成した波が導波管の管軸に沿って現れるが、導波管の長辺の長さを「a」として、これを利用した管内波長λgの算出式を図10.3.7 、図10.3.8 を利用して導いてみる。

入射波の波長は自由空間波長と同様で図中のλoの間隔である。導波管内の波長即ち管内波長λgは導波管の管軸上の正の波面から次の正の波面までの距離となり、λοとλgの関係は(10.3.4)式の通りとなる。

λο/λg=sinθ ・・・・(10.3.4)
導波管の長辺寸法を「a」とすると(10.3.5)式が得られる。

a/(λg/2)=2*a/λg=tanθ ・・・・(10.3.5)
(10.3.4),(10.3.5)の両式よりλgを消去すると(10.3.6)式となる。
cosθ=λο/(2*a) ・・・・(10.3.6)

即ち、導波管の長辺の寸法aが決まれば、最適入射角が決まることになる。

方形導波管 管内波長|電波加熱研究所・マイクロ波誘電加熱技術情報|山本ビニター株式会社 (vinita.co.jp)
図10.3.7 管内波長の計算図
周波数によって、入射波の角Θが変わってくる
図10.3.8 管内波長の計算図
λ0は空間中の波長(自由空間波長)


とにかく、図によると、管内波長λgは自由空間波長λ0より長くなるらしい。

2.4GHz用の方形導波管の規格表を見つけた。

ルータまわりに取り付けるにはちょっと大きいサイズかもしれない
使用周波数帯域(MHz)はGHzの誤植だと思われる

おわり。

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