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三宅島で漁業者になろう!―3年ぶりに三宅島漁協の短期研修が開催されました!―

こんにちは、水産担当です。
今回は、3年ぶりに開催された三宅島漁協の短期研修の様子をご紹介します。

漁業者を増やしたい!

近年、全国的な漁業後継者不足が問題となっていますが、三宅島においても漁業者の減少と高齢化が急速に進んでいます。
そこで、平成24年に漁業者の増大と定着を図るべく、漁協、漁業者、村及び都が一体となり「三宅島漁業後継者育成対策実行委員会」を立ち上げました。当委員会では、新規就業者が独立するまでの研修制度や独立時の費用負担の軽減に関する仕組みづくりを行っています。
当委員会が主催する研修からは、これまでに4名の卒業生が漁業者として独立を果たしています。また、現在2名の研修生が独立を目指して長期研修を行っています。

漁業者になりたい人!三宅島に来てください!

そもそも、漁業者になりたい場合はどうしたらいいのでしょうか?
三宅島漁協では、平成25年から全国漁業就業者確保育成センターが主催する漁業就業者フェアに出展しています。漁業就業者フェアは、全国の漁業を仕事にしたい人と漁業の就業者を募集したい人が集まる貴重なマッチングの場となっています。
7月に東京都立産業貿易センター浜松町館で開催された漁業就業者フェアでは、相談者2名がブースを訪れた約20名の来場者に対して三宅島の漁業の紹介や、短期研修の案内を行いました。

三宅島漁協のブースは大盛況でした

漁業就業支援フェアのご案内
漁師.jp 全国漁業就業者確保育成センターHP

いざ三宅島!

漁業就業者フェアで相談者から話を聞き、もっと三宅島の漁業が知りたい!体験したい!と思った方を対象として、5日間の短期研修を実施しました。
短期研修のスケジュールは以下の通りです。

短期研修のスケジュール

ただ、短期研修の目玉である漁業実習は、自然相手のため天候や海況を見ながらスケジュールを調整していきます。

1日目 ガイダンス・島内視察

研修中にお世話になる方たちとの顔合わせ、ガイダンスを行った後、島内視察を行いました。小雨が降る中の視察となりましたが、三宅島の雰囲気は伝わったでしょうか。

三宅島の漁業についてのガイダンス
昭和の文豪・太宰治も訪れた三宅島の内水面・大路池

2日目 漁業実習①(底魚一本釣り漁業)・三宅島の漁業について(座学)

早朝6時から長期研修卒業生の漁船に乗せてもらい、キンメダイやメダイを狙った底魚一本釣り漁業を体験しました。一見、海は穏やかに見えていましたが、漁港の外はうねりが大きく船酔いに苦しむ研修生も出てきました。
漁場に到着すると、いよいよ漁の開始です。

船主さんから釣り方のレクチャーを受ける研修生

船主さんは、水深300メートル以上の狙った場所に仕掛けを落とすために、独自開発したアプリで潮の流れを計算し、仕掛けを投入する位置を決めていました。親方に習ったことだけではなく、ご自身で研究して操業されている姿が印象に残りました。
残念ながらキンメダイは釣れませんでしたが、ユメカサゴ(地方名ノドグロ)が釣れました。途中、体の半分を食べられた魚が釣れるなどサメ等による食害被害についても知ることができました。
また、仕掛けにかかった魚を揚げている途中、船のすぐ近くにイルカが出現し、かかったはずの魚がいなくなっている、ということもあり、漁の厳しさも体験しました。

ユメカサゴと食害に遭った魚

コーディネーターから、これまで水揚げの主流であったキンメダイの漁獲量が減少していることから、これからの漁業者は底魚一本釣り漁業だけではなく、様々な漁法を身に着ける必要があるというお話がありました。
 
午後はコーディネーターから三宅島の漁業について講義がありました。

伊豆諸島の主要な漁場の解説

海洋環境の変化に伴いとれる魚が変化していること、漁業に係る資金や親方との関係性の築き方などここでしか聞けない三宅島の漁業の実情について勉強することができました。 

3日目 漁業実習②(曳縄(ひきなわ)漁業)・漁具作成(座学)

前日同様、6時に集合しカツオやマグロ類を狙った曳縄漁業を体験しました。カツオやマグロ類は熱を持ちやすいため、魚艙(ぎょそう:漁船で漁獲物を収納するところ)に氷と海水を大量にためてから出港します。今回は船の両側から竿を出し、ヒコーキと呼ばれる漁具を用いて曳縄釣りを行いました。海鳥の群れをめがけて船を走らせます。

ヒコーキと呼ばれる漁具
御蔵島と海鳥の群れ

海鳥はエサとなる小魚の群れを探して、海面近くを飛び回ります。小魚の下にはカツオやマグロなどの大型の魚が居ることが多いのです。この海鳥の群れを「鳥山」といいます。
しばらくすると、カツオやシイラが釣れ始めました。研修生も軍手を装着して曳縄釣りに挑戦しました。前日よりも海況が良く、研修生から楽しいという声も聞こえて一安心です。

筆者渾身の奇跡の一枚
研修生から、新鮮なカツオは宝石みたいですねという感想も出ました
血抜きをしたカツオは魚艙で冷却します

帰港後は梱包作業を体験しました。

カツオとシイラが獲れました
発泡スチロールに箱詰めしていきます

午後はコーディネーターから漁具作成の実習がありました。

漁具作成実習の様子

釣り経験等でテグスを触ったことがある研修生が多いとはいえ、実際の漁業で用いる解けない結び方のコツを習得するのは一筋縄ではいかず、初めは皆さま苦戦されていました。
もくもくと実習を行い、最終的には今まで12年間の短期研修のなかで成功したのは1名(午前に乗った船の船主さん!)のみという最難関の結び方、「南方延縄結び」を成功させる研修生も現れました。

4日目 ロープワーク実習・若手漁業者・漁業職員との座談会(座学)

当初予定では漁業実習でしたが、海況不良のため室内での講義となりました。
ロープワーク実習では、漁港に停泊している漁船がどのように係留されているかを現場で確認した後、基本的な結び方を練習しました。簡単なように見えて、実際にやってみるとうまくいかず、休憩時間返上で特訓しました。

漁船を動かないように係留させるため、様々な工夫がされていました
ロープワーク実習の様子

午後からは、長期研修を卒業した漁業者、長期研修中の研修生、漁協の若手職員を交え、三宅島での漁業着業について座談会を行いました。研修生からは、長期研修で苦労したことや、将来の三宅島の漁業の可能性など、活発に質問が出ました。 

最終日 閉会式

3年ぶりの開催となった第12回短期研修には4名が参加し、漁業者や漁協のたくさんの方のおかげで無事全日程終了することができました。
研修終了後のアンケートでは長期研修移行への希望を固めている研修生もおり、今後が楽しみです。短期研修生が漁業者として三宅島に戻ってきてくれる日を心待ちにしております。

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