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時評/詩の近景―沖縄(1)

2013年1~2月/与那覇幹夫さん、鈴木次郎さん、沖野裕美さん他

■胸をえぐる〈叫び〉

与那覇幹夫詩集「ワイドー沖縄」

 2013年1月から2月にかけての、沖縄の詩壇の動きを追ってみたいと思います。
 昨年末に発行された与那覇幹夫さんの「ワイドー沖縄」(あすら舎)はルーツの宮古に根ざし、詩人の来歴をくぐりながら、沖縄の状況も告発する読み応えのある詩集です。2013年に入り、全国紙の時評に取り上げられるなど話題を集めています。詩「□…叫び」は戦後間もない宮古の農家で、11人の米兵が夫の目の前で主婦を強姦(ごうかん)した事件を描いています。夫は妻に〈ワイドー加那、あと一人!〉と叫びます。

 現場の光景がどんなにむごたらしいものであっても、記述し、伝達された時から、あまたある事件の一つとして記号化されていきかねません。しかし衝撃的な色を帯びた〈叫び〉によって、詩は読み手の胸をえぐる迫真性を獲得します。

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