時評/詩の近景―沖縄(2)
2013年3~4月/山入端利子さん、葛綿正一さん、東恩納るりさん他
■命に優しいまなざし
山入端利子詩集「ゑのち」
2013年3~4月の沖縄の詩壇の状況です。
山入端利子さんの第5詩集『ゑのち』(アローブックス)は「おもろさうし」を題材にした作品をはじめとして、花や森の生き物を含めた命への優しいまなざしが印象的です。特に死者が現れる詩に顕著です。
詩「風になれ」は、泥酔して帰宅した男に〈ここはダメよ〉と自分の墓に帰るよう促します。〈タクシー 呼ぼうか/「ノウ・サンキユー」〉というやり取りは、長年連れ添った夫婦であることをうかがわせます。
死者との思いがけない再会にうれしさがにじみますが、引き留めることなく導きます。その迷いのなさは、かつて共に暮らし、体に染みついたリズムの表れだと思います。さまざまな感情が抑制され、ユーモアを交えて描かれています。
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