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時評/詩の近景―沖縄(3)

2013年5~6月/川満信一さん、高良勉さん、佐々木薫さん他

■異彩放つ3氏の作品

「現代詩手帖」6月号


 『現代詩手帖』6月号(思潮社)の「夏の作品特集-詩を生きる地」に、沖縄から川満信一さん、高良勉さん、与那覇幹夫さんが詩を寄せています。特集は全国各地の書き手による競作ですが、自らを生みはぐくんだ沖縄と緊張感を持って向き合う3氏の作品群は特に異彩を放っています。

 川満さん「『遺念の日』祈念」は島を焼き尽くした戦火、戦後の〈基地街〉の狂ったような賑わい、飛び交うオスプレイの情景が入り乱れ〈「遺念の夜」にもトーシンドーイ〉と歌うように書きます。〈遺念火〉となってさまよう魂を鎮めるための念仏踊り(エイサー)を思わせます。ただそれでも〈遠い国〉が“主権回復”なんかを〈ドンジャカお祝いしている〉限り〈未来には暗雲だけ〉なのでしょう。

 高良さんは「火の遺伝子-故・玉城文郎へ」という作品です。氏がこれまで繰り広げてきた精力的な活動の根元に、それを支える存在があったことを知ることができます。〈火を視(み)つめる〉なかで見いだした〈宇宙の一カケラ〉という言葉には、人間の存在の小ささと同時にかけがえのなさが表れています。

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