見出し画像

膝を怪我から守る膝関節のしくみ

スポーツにおいて膝の怪我は多く、手術などをした場合などは復帰まで長い時間を要してしまいます。

膝の怪我は靭帯損傷などは突発的なものから、育成年代に多い膝の痛みのオスグッドなどのように慢性的なものまで広範囲に及びます。

画像17


ではなぜ膝の怪我が多いのでしょうか?

膝は膝関節と呼ばれ、曲げ伸ばしの縦方向の動きには適した構造をしています。

一方、片脚立ちのような状態では左右への重心がブレないようにコントロールすることが求められます。



しかし膝関節はこの左右の横方向の動きには弱い構造をしており動きを制限するために靭帯や筋肉による安定が必要となり、負担がかかりすぎた結果、靭帯損傷などの大怪我につながってしまいます。


画像18


スポーツでのストップ、ダッシュでの切り返し、ジャンプなど踏切りや着地の動作などの連続となるため片脚で安定することが求められます。


また股関節と足関節の中間に位置しており、両者の影響を受けやすくどちらかのバランスが乱れることによって膝関節への負担が大きくなってしまうことが膝の怪我につながる原因と考えられます。

画像17


ではどうしたら膝への負担を減らすことができるのでしょうか

今回は膝の怪我を防ぐための膝関節の安定に必要な仕組みと、安定性を改善するためのセルフチェックとケアを中心に解説していきたいと思います。


問題となりやすい膝の怪我

スポーツにおける膝の痛みや怪我は非常に多く、特に小中学生などの育成年代で代表される膝のお皿の下の痛みのオスグッド(Osgood-schlatter病)のように若くから慢性的に痛みを抱えていることケースも少なくありません。

またサッカーやバスケットボールなどのスポーツなどで発生することが多い前十字靭帯や内側側副靭帯などといった膝を安定させる靭帯を損傷してしまうこともあり、復帰までの期間がかかりパフォーマンスにも大きな影響を与えます。


オスグッドについてはこちらの記事

前十字靭帯損傷についてはこちらの記事



こういった膝の怪我による痛み、腫れ、固定などは膝関節の可動域を制限し、筋力や可動域などに左右差が出てしまい怪我の再発や、慢性的な膝の痛みを招く可能性が高くなってしまいます。


そういった膝の怪我を防ぐためには、前回紹介した足関節同様に膝関節の可動域制限となっている部位の柔軟性を改善し構造的な安定性を高める必要があります。


【足首の硬さの改善はこちらの記事】


では膝関節が構造的に安定するために必要なことはどういったものがあるのでしょうか?


膝を安定させる関節の仕組み

下腿の回旋
膝関節は太ももの骨の大腿骨(だいたいこつ)、脛の骨の脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)がある下腿(かたい)、お皿で有名な膝蓋骨(しつがいこつ)といった骨によって構成されます。

画像18

膝は大腿骨と脛骨が動きの中心となって曲げ伸ばしには動きやすい構造のためスクワットなどしゃがみ込むことが可能となります。


画像18

この曲げ伸ばしには大腿骨に対して下腿の回る下腿回旋の動きが重要になります。


この下腿の回旋の動きは、膝を伸ばす筋肉の大腿四頭筋、膝を曲げるハムストリングに影響され、特に膝を曲げた際に、大腿骨に対し下腿が内側に回旋する内旋、膝を伸ばした時には外側に回旋する外旋という動きが重要になります。


画像18

画像3

特に下腿は外側にある外側広筋、大腿二頭筋、大腿筋膜張筋という筋肉が硬くなることで内旋が制限されることが問題となりやすくなります。


スポーツのストップなどでは膝が曲がることがほとんどですので、内旋が制限されることは膝が構造的に不安定な状態となり大きな怪我では靭帯損傷、膝の内側の慢性的な痛みにつながってしまう可能性があります。



画像18


膝蓋骨の安定性

膝蓋骨の動きは主に大腿四頭筋の柔軟性や筋力によって影響を受けます。

画像18

また膝蓋骨周りには膝蓋骨の動きをスムーズにする太腿前の筋肉の大腿四頭筋や脂肪の塊などがあります。膝蓋骨の動きは大腿四頭筋の力が効率よく発揮するために欠かせない動きとなります。

膝蓋骨は膝関節の怪我による痛み腫れなどの炎症は膝蓋骨の動きを制限する原因となるため、炎症を繰り返している場合には膝蓋骨が十分に動いていない可能性があります。



膝蓋骨の動きは膝の曲げ伸ばしに大きく関わり、膝蓋骨周囲の柔軟性が不足すると膝関節の痛みを引き起こす原因となってしまいます。

画像18


膝関節セルフチェックとセルフケア

では膝関節がどれぐらい動くのかセルフチェックで確認をしていきましょう。


大腿四頭筋
太ももの前の大腿四頭筋の柔軟性をチェックします。
目標|お尻と踵の距離が10㎝以内

画像8


ハムストリングス
脚を真っ直ぐあげて、もも裏の筋肉のハムストリングの柔軟性をチェックします。
目標|膝を真っ直ぐに伸ばした脚が床に対して80°以内

画像7


下腿回旋チェック
下腿を内側に回して、もも裏の内側に力が入りやすさと、下腿の内旋の動きをチェックします。
このチェックは左右差を比べてみましょう。
※膝やつま先が内側に入りすぎたりしないように気を付けましょう

画像9



膝関節セルフケア

膝関節のチェックをしたら硬くなった場所に対してセルフケアをしていきます。

大腿外側リリース
硬くなることで下腿の内旋を制限しやすい太腿の外側の筋肉をほぐしていきます。


下腿内旋エクササイズ
下腿の内旋はもも裏の内側の内側ハムストリングによって誘導されます。内側ハムストリングに力を入るように下腿を内旋を促します。

画像15


膝蓋骨リリース
膝蓋骨の上下を母指を使ってほぐして膝蓋骨の可動域を改善します

画像14


膝蓋骨トレーニング
膝蓋骨を安定させるには大腿四頭筋の内側広筋という筋肉の働きが必要になります。方法は脚を開いた状態でタオルなど膝の下に入れ、タオルをつぶします。
この時に膝蓋骨の内側の上に力が入る感じがあればOKです。

画像16


大腿四頭筋ストレッチ
膝立ちになり足を持って踵をお尻に近づけます。
太腿の前から股関節の付け根が伸びる感じがすればOKです。


ハムストリングストレッチ
太腿の裏のハムストリングの柔軟性を改善していきます。
太腿の前とお尻を密着させた状態でお尻高く上げていきます。
太腿の裏が伸びる感じがすればOKです。


以上のケアを行うことによって膝関節を構造的に安定した状態にキープすることを目指しましょう。


まとめ

今回は膝を安定させるために必要な関節の仕組みについて解説させていただきました。
膝関節を構造的に安定させることが怪我を防ぐためには非常に重要な要素となります。

この構造的な安定した状態をキープするにはトレーニングによって膝に対して負担をかけない筋力や動作を身に着けることが必要となってきます。

そのトレーニングに関しては、またの機会で紹介させていただきたいと思います。

膝の違和感などを感じたら無理にプレイを続けるのではなく、膝の状態セルフチェックで確認して適切なセルフケアをしてコンディションを整えてることが大切です。

最後までご覧いただきありがとうございました。


≪ライタープロフィール≫

プロフィール


【マガジン紹介】

L-tra.|スポーツ選手・指導者向けマガジン
スポーツ選手に必要なトレーニングやケアについて理学療法士・柔道整復師・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーが解説!
スポーツ選手に必要なリアルな情報を発信中!

合わせてフォローをよろしくお願いします!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?