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【読書レビュー】資本主義の次にくる世界

久しぶりに面白い本に出会うことができた。自分が今年読んだ本の中で上位に占めるのは間違いないし、様々な人に強く勧めたい本だ。

資本主義を疑問視する本は様々あるが、エビデンス(科学的根拠)に基づく説明が多数揃えられているのが本書の特徴であり、わかりやすく解説してくれているので、一つ一つ納得しながら読み進めることができた。

序盤納得がいったのは「資本主義の歴史」だ。もともと農民を中心とした共同体が世界では存在し、自然の資源を有効活用していたが、一部の資本家や上流階級によって「私物化」されてしまい、農民たちは自給自足が困難な状況に陥った。

さらに資本家たちは、「労働」という概念を生み出し、これら農民たちを低賃金で採用することとなった。自給自足が困難となった農民たちは、この労働に頼らざるを得なくなり、ここから資本主義が生まれていったこととなる。

また、ここにデカルトの「二元論」が資本家たちに導入されたのは興味深い。これにより人間と他の生物界は分離され、人間が自然を支配する考え方が浸透したそうだ。

資本主義が始まり、資本を蓄えるためには常に成長し続けなければならない。そのために新たなテクノロジーを作り、効率化を目指す。実現した場合、空いた時間でまた資本を蓄えようとし、更なる成長を追い求める。結果、終わりのスパイラルに陥り、その度に限りある自然資源を失っているのが、今の現状だと述べている。成長自体が目的化されているのだ。

この点については大いに理解できるところがある。自分も企業に属していると日々感じる点であり、いつまでも数字に囚われてそれに従って動いているところに疑問を感じていた。企業側からも次々と求められて、自分のペースを失いつつある。

対策はあるのか?本書の中でもいくつか提案はあるが、特徴的なものとして「公共サービス」の導入を勧めている。本の中でも民間のサービスより費用対効果が高いことを示している。

日本でも確かに公共サービスがあったものだが、次々と民営化されつつある。自分がよく通っている市営ジムも、民間に業務委託されているが、明らかにコストパフォーマンスが良い。わざわざ健康ビジネス企業が提供しているジムを使わなくても十分である。

その他にも「電子機器の保証期間の延長やリース方式への切り替え」「最高賃金」制度の導入などの施策も提案しており、どれも納得がいくものばかりだ。考えてみれば、ミネラルウォーターだってこれまで無料だったのが、いつの間にか有料に切り替わっていたり、何でも消費に繋げるような活動が目白押しだった。

今すぐに社会を変えることはできないが、手短に自分自身を変えることはできる。必要以上のモノは購入しない、必要以上の食事は摂取しないなど、食事にしても購買にしても「八分目(あるいはそれ以下)」を意識し、浪費を止める努力はできると思うので、まずはそれを実現したい。

自分自身だけの循環モデルは簡単に実行できると思うが、共同体という単位で考えた時のモデルが、自分にはまだ思いつかない。特に「健康」という分野でどう社会や自然に還元すべきか。(まさか今更狩猟民族になるわけにはいかないし。。。)

いろんな人の話を聞き取り入れながら考えていきたい。そんな決意をさせてくれた本であった。

もう10年以上前に新潟の「大地の芸術祭」に行った時の星峠の写真
のどかだったなー。



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