長座体前屈のROMを脳機能からアプローチして改善する
下肢の柔軟性を図るテストとして、おそらくもっとも有名かつ誰もが経験しているのが「長座体前屈」だろう。長座体前屈の柔軟性の尺度としては、ハムストリングス等の筋群の柔軟性が直接的に関係すると考えられる。しかし、ハムストリングス自体へのアプローチを介さずとも、脳機能へのアプローチで柔軟性を改善することが可能だ。
ここでいう脳機能というのは、一般的に前庭や視覚、体性感覚、脳神経等いくつもの要素が複合的に関連して発揮されるパフォーマンスを指す。こうした各能力のうち、今回はいくつかを掛け合わせることで、長座体前屈のROM改善にアプローチしていきたい。
(1)事前準備
まずは実際に長座体前屈をしてもらい、処置前の状態を把握しておく。
長座体前屈の柔軟性には、先ほど紹介したハムストリングスの柔軟性以外に、大臀筋の柔軟性、腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性といった伸展筋群の柔軟性が大きく関与してくる。脊柱の後弯(仙骨が倒れる→腰椎が後弯する→胸椎の後弯)ができているか、それに付随して起こる肩甲骨の外転や肩関節の屈曲がスムーズかなどが要因として挙げられる。
今回行うエクササイズでは、伸展筋群の弛緩と屈筋群の活性化をもとにしたアプローチを行っていきたい。
(2)相反神経抑制を用いたアプローチ
2つのエクササイズを行ったあとで、Before/Afterの可動域を確認してみる。
1)エクササイズ①
長座の姿勢のまま、左右それぞれで脚を持ち上げる。股関節の屈筋群を使用することで、相反神経抑制によって伸展筋群(ハムストリングス等)は緩む反応が起こりやすい。左右で10~20回を目安に行う。
これは筋力トレーニングではなく、脳への信号入力を増やすことが目的であるため、回数を増やす・負荷を加える必要性はない。
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Brain Special Magazine
運動指導者の方へ向けて「脳」について理解し、パフォーマンスを高め機能改善などを行えるように学べるコンテンツです。
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