道端のホース 第1話
すこし夏のかおりがする風が、心地よく頬を撫でる夕暮れの時、道を散歩していると、木の下にポツンとだれかがいた。
きみは、だれ?
俺は面白くないやつだよ。ひとりぼっちになってしまった。
きみはどこから来たの?
デポロイという、ここから遠く離れた町からきた。その町は、同じような名前、同じような見た目、同じような個性を持っているホース達が住んでいる。俺は、そこで育った。そして、就職するためにまちを出て、このココフラリにやって来たのさ。
この街で、就職活動してみたけど、自分が役立たずと、感じる日々さ。誰でもできることをただひらすら繰り返している。そうやってるうちに、1年が経って、2年が経って、気づいたら3年が経っていた。
俺は、3年前となんも変わっちゃいないホースなんだ。
うん。
だけど、いまだにこの街にいる。
うん。
どうしたら、いいのか...そんなことをここで考えていたところだよ。
今日あったばかりなのに、変な話をしてごめんな。
...どうして、3年前と変わっていないと思う?
レベルアップしたホースになっていないから、かな。
デポロイでは、良いホースになるために学校で教育を受けて、訓練も受けた。だけど、今自分の体となっているホースでだれかの役にどうやったら立てるのか、わからないんだ。
自分には、人を笑顔にできるだけのなにかがあるのか。
今の人たちに必要とされているものに、俺もなりたい。
くそ。
どうやったら、俺は役に立てる存在になれるんだ。
わっかんねーよ。
君の名は?
テテ。この街で生まれ育ったよ。お母さんと二人暮らししている。きょうは、お母さんが仕事で帰りが遅いから、夕暮れ時に散歩しに来たんだ。なんとなく、この灯がちらほら見えるこの時間帯に、道を歩くのが好きなんだ。
そうかい。
第2話へ続く
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