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メッシュ (萩尾望都)

「親に見捨てられた子ども、親と離別した子どもの、自己救済を求めての彷徨」

これが、この作品の主題だ。・・・と、まんが評論家の村上知彦氏が語っていた。

その通りだと思う。もうそれ以上いう事はない。

・・・と書いてしまったら、書く事はなくなってしまうので、別の観点で感想を書かせて頂く。

この作者は上記のテーマで、繰り返し繰り返し、数々の名作を描いてきたわけだ。
私はかなり初期からのファンなので、多くの作品には目を通しているのだが、あまりにも暗いのは苦手なのだ。
「残酷な神が支配する」は心が締め付けられる気がして、とうとう途中まで読んでギブアップしてしまった。「トーマの心臓」は、一応読んだけれども、殆ど再読していない。

・・・で、今回取り上げた作品だが・・・テーマ自体は重くて暗いのだが、主人公を居候させてくれるミロンの存在が救いとなって、「暗さ」のみの作品にはなっていない。
だから、私自身、結構何度も繰り返し読んだ作品のひとつでもある。

黒髪、長髪の男性はこの作者の作品によく出てくる。
顔は残念ながら美形とは言えないが、性格がいい。一見、ぶっきらぼうなんだけど、実は優しい。というタイプが多い。
ここに登場するミロンも、そういうタイプだ。
べったり優しいのではなく、適度な距離で親切。というのがいい。
こういう男が「いい男」っていうんだよ。と若い女の子たちに言いたい。
男は顔じゃないぞー!!(普段、「美形が最高!」と言ってる私じゃ、説得力ゼロかな?)

ふっくらした体型の女性もこの作者の作品にはよく出てくる。
この作品では、ミロンの恋人カティである。
美人とは言えないかもしれないが、優しくて思いやりのあるタイプが多い。(自己中心的なタイプの場合もあるが)
少女漫画には、このようなふくよかなタイプはあまり出ないような気がするし、出ても、痩せたい!とか、その体型を否定しているようなものが多い気がする。
しかし、萩尾作品に出てくるふくよかな体型の女性は肯定的に描かれている場合が多い。
これは一体何を意味するのか?

「精神的な救い」を象徴しているのか??

「絵」に関しては、デッサン力、背景、人物表現、構図、などなど・・・全てにおいて素晴らしい!今更言うことは何にもございません。

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