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セーラの叔父さま 6話

叔父さまは探偵?

叔父さまは私の質問を聞くと青い大きな目をイタズラっぽく輝かせた。
「セーラ、君は面白いことを考えるんだね。
そうか・・・確かに一度も会ったことのない君を本物の姪だと信じるのは何も考えない馬鹿かもしれないっていうことかもしれないね」
「いえ・・・馬鹿だなんて、そんなことちっとも思っていません。それよりも叔父さまはなんてお優しい方なんだろうって思っていたのです」

叔父さまはますます面白そうな顔をしてセーラの顔を見つめる。
アラン・ドロンのような青い目がアップで迫ってくるなんて・・・嬉しいというか何というか・・・いやいや、ここでそんなことを考えてはいけない。
すぐに自分がセーラではなくて日本の中年のおばさんになってしまうが、まあ仕方がない。

「セーラ、君の考えは間違っていないよ」
「え?」
「僕はね、君の父親であるクルー大尉から手紙が来たとき実は半分信じられなかったんだ。
僕はクルー大尉と結婚した姉とかなり年が離れているから姉自身の記憶はあまりないのだよ。
覚えているのは優しくて美人だったことぐらいかな。いや、この記憶も後で他の人たちから教えて貰ったことや写真を見ての記憶に過ぎないかもしれない。姉がクルー大尉と結婚した後早くに亡くなって、
その後は僕の両親ともほとんど連絡もない状態だったんじゃないのかな。その両親も数年前に亡くなって今この家に残っているのは僕だけなんだ。
幸い両親が資産家だったからね僕は半分遊んで生活しているようなものなんだけどね、もし姪と名乗る偽物がここにやって来て果たしてメリットがあるのだろうかって考えたんだよ。
そりゃね多少の財産はあるけれどなりすましてまで手に入れたいとは思えなくてね」

ここまで一気にしゃべると叔父さまは私に微笑みかけた。
「・・・で、僕が何をしたかわかるかい?」
「え?何をしたって??」
明るく陽気なフランス人だと単純に思っていた私は大きな間違いを犯していたのではなかろうか。
この叔父さま、案外面倒くさいほど頭の切れる人物なのかもしれない。

私は首をかしげて不思議そうな表情で答える。
「探偵を雇って調べる・・・とか?」

叔父さまは満面に笑みをたたえて大きな声で笑い出す。
「やっぱり君は面白い子だねえ。
探偵を雇うなんて普通の子にはきっと思いつかないと思うよ。
その答えは半分正解・・・かな。
僕が探偵になったんだよ」

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