私が適応障害になるまで(その2)異変編

■その1のあらすじ

芸大を卒業した後、入社した携帯販売会社を1年半で退職し、職業訓練に通う。その後の就職活動中に、その職業訓練を運営している会社からお声がけいただき、面接を受けることになったのだった。

■面接

面接相手は2人。一応、学生時代に作成したポートフォリオを持参したので見てもらった。

「デザインセンスはまだまだ甘いね」と言われた。そりゃそうだ。ほとんど学生時代に課題で作ったものだ、大したレベルのものではない。
でもちょっぴりイラっとした

大体1時間ぐらいだろうか、面接は終わった。そして後に内定を頂き、初出勤日も決まった。

ここから少しグレーな話。後から知ったことなのだが、職業訓練校は実施した訓練の就職率によって、国から奨励金をもらうことができる。細かい条件は省くが、この奨励金を貰うためには「雇用保険が適用される就職」が必要で、訓練校は1人でも多く就職をさせる必要がある。つまり、私が雇われたのはその就職率を少しでも上げるためのものだった、のかもしれない。

ちなみに、2019年に、就職率を偽って申告し不正な奨励金を受給していた訓練校がいくつかあったというニュースが。

閑話休題。

とにかく就職することができた。従業員数は10人にも満たない職場だったが、個人的には人の名前を覚えるのが苦手なので助かった。
しかし、徐々に職場の悲惨な状況が見えてくるのだった。

■1年目

まず、私が入ってすぐ1人退職した。初めは、この人員補充のために雇われたのだと思っていた。なので、その人が退職する前になるべく仕事を覚えるように頑張った。その中でこう思った。

「おかしい。全員が業務の内容を把握していない。」

複数の業務内容はあるが、小さい会社だ。
ある程度、誰がどういう業務を行っていて、どういう仕事の内容なのかを把握しているべきだ。この業務はあの人、この業務はあの人、といった具合に担当がいるのが普通だ。

だが、一部の業務に担当がいない

業務の中で分からない部分があっても、社内の誰に聞いても分からない
この会社には、誰かに業務を教えてもらうというものが一切ない。

これはまずいと思った。
与えられた自分の仕事をこなしながら、少しずつ全体の業務について、どの程度の作業時間なのか、どういう作業が必要なのか、どういう手順で行えばいいのかを把握していった。

この状況を変えていかないといけないと思った、いや、思ってしまった

■2年目

少しずつではあるが、体制が整いつつあると感じていた。
会社全体の業務も大体把握し、自分の担当する専門業務も増えてきた頃だ。

この年に同じ業務を担当する相方ができた。
私よりも1回り年上で、ものすごく仕事ができる人だった。
この年だけは、仕事をしていて楽しかったように思う。

そして、1年間勤めて分かったことがある。
会社としては、残業が多いわけでもないし、土日はちゃんと休みがあるのだが、それ以上に問題があった。

代表の仕事のやり方だ。

まず、適当に業務をいくつか渡される。
その業務をするべき理由も、するべき順序も、やり方も何も教えずに、だ。

そして理由なき作業は、代表の叱責を生む。
思っている通りに作業が進んでいないと、何かしらの理由で怒る。
あとなんか機嫌が悪いと怒る

私は前職で理不尽なクレームには慣れているので、割と平気だった。というより、叱責されないよう立ち回っていた。それでも言われるときはあったが、自分が言われる分には問題なかった。しかし、他の人が叱責をされているのを見たり聞いたりするのがものすごく苦痛だった。

「理不尽すぎる」

そう思っていた。なので、新しく入った社員には、こっそりと業務の説明をしたり、やり方を教えたりフォローをしていた。こっそりしないと、私の手を借りたというだけで怒られるからだ。

このあたりから中々夜寝付けないようになる。

仕事のことを考えると寝られない。
そして、飲酒の量が増えた

元々、お酒は好きだった。
しかし、今までは休みの前日や飲みに誘われた時に飲むぐらいで、毎日飲むようなことはなかった。だが、もうほぼ毎日のように飲んでいる。
毎日大体ビール500mlを2本以上
そうしないと寝られないのだ。

初めて「飲んでなきゃやってられん!」という意味が分かった気がする。

■3年目

入社前に比べて体重が10kgも増えた
毎日のようにお酒を飲んでいればそうもなる。
とはいえやめられない。
だって寝られないんだもの。

この頃から、社内用のチャットツールが導入された。
業務によってグループ分けし、効率的にかつエビデンスを残すためだ。
代表は外出する機会が多く、これまでは社内に居ないときは緊急の依頼以外はメールで伝達を行っていた。

効率は上がったように思えた。
だが、結局ツールが変わっただけで、代表の良くわからない指示がグループ内に並んでいた。

「ミヤビスさん、これってどういう意味?」

そう聞かれることが常だった。
メールの頃からそうなのだが、誰への指示なのかだけでなく、どういう意味なのかが皆わからないのだ。

何故私に聞くのか。
それは、私がその指示の意図を汲み取れてしまうからだった。
無駄に前職の営業スキルが活きてしまったのだ。

代表からの指示

指示された人が私に指示の内容を聞く

私が内容の意図を汲み取る

正しい指示を伝える

という図式が出来上がっていった。

そして、2年目に入社した業務の相方は
「代表は悪い人じゃないんだけどね」
といって去っていった。

この年から、タバコを吸うようになってしまう。

事務所内で行われる不毛なやりとりや飛び交う怒声に耐えられず、少しでも外にいたいという思いから、喫煙を始める。
初めは、お茶などの飲料を多くとり、なるべくトイレの回数を増やして落ち着くという行動をしていたが、とうとうタバコに手をだしてしまった。

元々タバコは嫌いだった、というより相当嫌いだった。
にもかかわらず、最初は1日1~2本、ひどい時は1日1箱は吸っていたかもしれない。
もし今記事をご覧いただいている中に、「タバコ吸ってみようかなぁ」なんて考えている人はやめた方がいい。
なんの得にもならない

そしてこの頃から、体調が悪くなる日が増え始める
しかし、私以外に業務を把握している人間がいないので、出勤せざるを得ない。

とはいえ、出勤する人が多い日で、本当に体調がひどい時は有給を使って休んだ。年2~3回ぐらいだろうか。

有給の休み明けに出社すると、人が辞めていた。

そして私は、辞めていく人の数を数えるのをやめた。

(続きます)

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