【前編】沖縄で暮らす。地元んちゅと巡る&探る、沖縄都市モノレール各駅周辺と那覇の暮らし
沖縄で暮らしていると、時折、季節感を見失う。夏は長くて、春と秋は短く、毎年、GWを過ぎると梅雨入りして、カビと格闘する時期が到来する。だから、もう間もなく沖縄は梅雨入りするのだよ。
Withコロナと梅雨。相性いいのか悪いのか見当もつかないが、クーラーでキンキンに冷えた室内でのんびり過ごせば、コロナ太りが深刻になることだけは想像がつく。やばい。それなりに…やばい。
重い腰を上げて、新しい活動でも始めようか。
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沖縄出身のウチナンチューたちと沖縄移住したナイチャーたちが、2019年に「沖縄で暮らすこと」を題材に記事を執筆しました。
ビフォーコロナの沖縄で暮らす記憶。改めて「暮らしのあり方」を考え直すヒントになったら幸いです。楽しく読める暮らしのエッセイに新たな編集を加えて、noteでお届けします。
Produced by OKINAWA GRIT
[1点だけ補足]この記事は、2019年7月に公開。沖縄都市モノレールの終着駅「てだこ浦西駅」開通前に取材・執筆した記録となります。
2019年10月1日、新しく4駅が開通。2020年3月には、交通系ICカード(suicaやpasmoなど)のサービスを開始しています。
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「ねえ、夫婦で沖縄に移住しようかと思うんだけどさ」
都会に住む友人からのメッセージだった。「え、でも君、免許持ってないよね。車がないと沖縄はきついと思うよ。電車ないし」と私は反射的に返信していた。
すると、「あなたも車に乗らないじゃない」と一言。そうだった。私も車を運転したこと、なかったんだ…!!!!
それもそのはず、私が住んでいるエリア、那覇市首里石嶺(いしみね)は、モノレール「首里駅」まで徒歩10分、バスの営業所も徒歩至近という交通の便が非常にいい立地なのだ。
小・中学校、スーパーや病院など、生活に必要な施設は全て徒歩圏内にあった。高校卒業後は沖縄を離れ、Uターン後は在宅で仕事を行っている。通勤の必要はなく、たまに県外で打ち合わせする際にも、那覇空港までモノレール一本でスイスイ移動できる。
「モノレール沿線なら、車のない君たちでも快適に暮らせるかもしれない」。そんなメッセージをやり取りしたのが、今から2週間前のこと。それからあれよあれよという間に準備を進めたらしく、彼らは本当に沖縄へやって来たのだ。
「平日休みって言ってたよね?」確かに私はそう言った。まさか私の休みに、彼らがスケジュールを合わせて来るとは。しかも夫婦そろって。どうやら彼らの移住計画は本気のようだ。
「平日のほうが、通勤や町の様子がよく分かるかと思って。これから住む場所のことは、雰囲気を含めてちゃんと知っておきたいじゃない?」至極まっとうな意見と、期待に満ちた表情に気圧され、沖縄の一大都市「那覇」のモノレール沿線行脚が始まったのだ。
これは、彼らとモノレール駅18駅を踏破した私の記録である。
<WRITER / なかそねことみ>
いざ、沖縄都市モノレール「ゆいレール」の旅路へ
沖縄都市モノレール「ゆいレール」は、那覇空港から那覇市首里までを結ぶ全長12.9kmのモノレールの路線だ。(2019年10月に4駅開通、浦添市てだこ浦西駅まで全長17kmに)電車のない沖縄の交通事情を、バスと並んで支えている。マイカーを持たない我々の強い味方だ。
2両編成で定員165人の車両は、1日に250以上の本数が運行しており、利用者数は、2018年度に1日あたり5万人を突破した。年間、じつに1905万7176人を運び、その数は右肩上がりに増加を続けている。景気がいい話だ。
5万人超とは、さいたまスーパーアリーナに近接する「さいたま新都心駅」の1日の乗車人数と同じくらい…というと、規模感を想像していただけるのではないだろうか。
1. 空の玄関口「那覇空港駅」から那覇の中心地へ
二人を出迎えたのは、空の玄関口「那覇空港駅」。
ゆいレールの乗車券は、紙の切符とICカード。沖縄県の路線バス、モノレールのみ使用できるICカードの名称は「OKICA(おきか)」である。使い方はSuicaなどの交通系ICカードと同様、ゆいレール各駅の切符売り場で購入・チャージができる。
2019年7月現在では、OKICAと県外の交通系ICカードとの互換性はなく、県外からの旅行者を戸惑わせているが、2020年の春を目処にSuicaの導入予定が発表された。(2020年3月からスタートした)
今回は各駅停車の旅。OKICAは使用せず、1日乗車券を購入した。24時間以内に3、4回乗り降りすれば元が取れるおトクなきっぷだ。
[備考]各駅の1日乗車人数は、沖縄県の公式サイト(2019年6月現在)から引用している。
2. 閑静な住宅街の入り口「赤嶺駅(あかみねえき)」
那覇空港駅の雰囲気から一変して、赤嶺駅の周辺には住宅街が広がる。
住宅地なら、住民以外はあまり用事がないだろう…と思うのは少々待っていただきたい。赤嶺駅は、沖縄本島南部に位置する、豊見城市や糸満市への出発地点にもなっているのだ。
駅から2kmほど南下すると、アウトレットモール「あしびなー」、絶景や温泉、ショッピングやマリンアクティビティが楽しめる瀬長島の「ウミカジテラス」にたどり着く。
赤嶺駅から「ウミカジテラス」には、車がない私たちのために無料のシャトルバスが運行し、休日にはぜひ活用したいところ。バスで移動すれば、お店でお酒だって飲める。まるで楽園なのだ。
「あしびなー」向けにも路線バスが運行し、那覇空港国内線ターミナルのバス乗り場から向かうのが一番簡単だ。モール内にはレディス、メンズ、キッズ、洋服はもちろん、アクセサリーや靴などのショップが揃う。気合いを入れて思いっきり爆買いしたい気持ちに寄り添ってくれる場所だ。
3. 生活の拠点となる住宅街、小さな公園が多い「小禄駅(おろくえき)」
赤嶺駅を出発し、ほどなく到着するのが小禄駅。
引き続き住宅街のエリアだが、赤嶺駅と大きく違う点は、駅直結のショッピングセンター「イオン那覇店」の存在だろう。「那覇」を冠しているだけあり、那覇市内のイオン系列店の中では随一の売り場面積を誇る。
車を持たない民にとって、心強いお買い物スポットといえる。
那覇市の公式サイト(2019年4月現在)によると、赤嶺・小禄エリアは、約6万人が暮らす住宅地なだけあり、市立金城小学校、市立小禄小学校、市立小禄南小学校、市立さつき小学校など学校が立ち並び、保育園や公園も多い。
大きな滑り台やアスレチックが整備された「田原公園」。思い切り走り回れる広さの「小禄金城公園」のほか、徒歩15分おきに一つと言っていいペースで公園や広場が存在し、自宅から気軽に遊びに行ける。
歩道がきちんと整備されている道路が多いのも安心だ。
4. 球場に武道館、アクティブに過ごす「奥武山公園駅(おうのやまこうえんえき)」
小禄駅から続くなだらかな坂を下りきったところに「奥武山公園」がある。
冬場にはプロ野球のキャンプが行われ、野球やサッカー、NAHAマラソンも通年開催されている。土俵や武道場まで、スポーツならなんでもござれだ。
奥武山公園から徒歩圏内に住居を構えれば、読売ジャイアンツの冬季キャンプに日参したり、朝から公園内をウォーキングすることも可能な暮らしを実現できる。
無料の駐車場を利用でき、マイカー派、モノレール派が集まっての気軽な運動やサークル活動にも便利。平日はランニング、休日は草野球。健康的な生活が送れるだろう。
毎年10月下旬には、県産品の新商品が発表される「沖縄の産業まつり」の会場となったり、同じく10月に、全長200m(ギネス記録)の大綱を引く「那覇大綱引き」が開催されるのに合わせ、花火や屋台、ステージプログラムが開催されるお祭り会場にもなる。国際通りから奥武山公園まで一帯の盛り上がりは、広大な公園から人が溢れ出るほどだ。
また、奥武山公園内には、「護国神社」「沖宮」「世持神社」などの神社が建立されており、年始には初詣の参拝客が多い。駐車場は軒並み満車になり、公園付近には渋滞が発生するため、モノレールでの参拝が快適だろうし、お神酒も飲める。
5. 公園そばでのどかに暮らす「壺川駅(つぼがわえき)」
モノレールの線路は、奥武山公園を囲むようにぐるりと北上し、国際通りがある那覇の中心部へ。
仕事のためというより、奥武山公園へ部活に向かうジャージ姿の学生が多く利用している印象だ。
駅付近には集合住宅が立ち並び、ランドマークの「那覇中央郵便局」が目立つ。東または南東に進むと、学校や公園のある楚辺、与儀といったエリアに到着する。
壺川駅から奥武山公園に続く北明治橋を渡ると、駅から5分足らずで奥武山公園に到着する。陸上競技場、プールや護国神社、琉球八宮の沖宮などへのアクセスは、奥武山公園駅よりこちらの壺川駅からの方が便利だ。
6. 沖縄本島の交通ネットワークの起点「旭橋駅(あさひばしえき)」
さらに那覇市の中心へ。
2018年末に、新生の那覇バスターミナル、県立図書館や那覇OPAといった複合商業施設「カフーナ旭橋A街区」がオープンして、これからますますの発展が予想されるエリアだ。
カフーナ旭橋は、AからEまで5つの街区からなり、そのうちA街区には、県内各地へのバスの起点となる「那覇バスターミナル」がある。公共交通機関のお世話になっている身には、「交通の要所」ともなる重要な施設だ。
沖縄本島中部〜北部へのバス移動は、慣れないうちは大きな困難を伴うが、そんな時は迷わず、那覇バスターミナル内「バスたび案内所」で確認しよう。バスでの移動がぐっと楽になる。
旭橋駅のほど近くから、沖縄本島北部までを縦断できる「国道58号線」がスタートする。県民の車移動を支える基幹道路だが、その分、非常に混雑するため、朝晩のラッシュ時には、車での通行は避けるのが無難だろう。
余談だが、この国道58号線、鹿児島県は天文館にほど近い「朝日通り」から、海路を経て旭橋駅近くの「明治橋」まで達している。海上を含めた長さは、884.4kmにもなる壮大な道路だ。
7. ビジネスの拠点となる「県庁前駅」
駅名のとおり、沖縄県庁をはじめとするオフィスビルが建ち並ぶエリア。
それに加えて、国際通りの西側入り口でもある。デパート、ギャラリーや劇場などが軒を連ねる商業施設「パレットくもじ」に直結しており、通勤や観光、ショッピングなど、さまざまな目的をもつ乗客が乗降する駅だ。
県内唯一のデパート「リウボウ」の地下には、食品、お酒、銘菓店などが並び、沖縄でデパ地下といえばここだけ。お上品な手土産を用意する際には、ぜひ立ち寄りたい。
朝晩の通勤ラッシュ時はそれなりに混雑するが、駅員に押し込まれて乗車する場面には出くわしたことがない。東京の通勤ラッシュを考えると乗車環境は、いいのではないかと思う。
スクランブル交差点を囲むようにビルが建つ景観は、さながら大都会だが、県庁の裏手には小学校、さらに南下して壺川駅までの間には住宅地が広がっている。明治44年開校の伝統をもつ「県立那覇高校」も近い。
観光地であり、オフィス街でもあり、さらに学校も立ち並び、県庁前駅付近の土地は常にフル活用されている。
するとどうなるか。そう、駐車場の料金が高くなる。観光客が利用するコインパーキングはもちろん、月極の契約駐車場も、他の県内エリアに比べて倍の料金がかかることは珍しくない。便利な車生活の中で、数少ない悩みのタネだ。
8. ちょっとディープな那覇の町「美栄橋駅(みえばしえき)」
県庁前駅や牧志駅と並んで、国際通りや周辺のホテルにアクセス便利な美栄橋駅。2つの駅の中間に位置することから、国際通りの中心部を訪れる近道かと思いきや、そんなことはない。
県庁前駅、美栄橋駅、牧志駅から国際通りの中心部までの距離は、どの駅からも大体同じくらいだ。
美栄橋駅から国際通りに向かう「沖映通り(おきえいどおり)」から一本横道に入ると、味わい深い店構えのカフェやセレクトショップが並ぶ「ニューパラダイス通り」、猫が歩く路地裏や、遊具や歩道が整備された「緑ヶ丘公園」などにたどり着く。
ちょっとディープな国際通りを楽しみたい時は、美栄橋駅で降りるといい。沖映通りには沖縄県最大の書店「ジュンク堂書店」もある。
県庁前駅から美栄橋駅に向かうゆいレールの線路は、那覇市内を横断する「久茂地川(くもじがわ)」の上を走る。
久茂地川沿いには地元の人がよく訪れる飲食店が並び、少し足を伸ばして10分ほど歩くと、国道58号線を渡り、那覇随一の歓楽街「松山」にたどり着く賑やかなエリアだ。
美栄橋駅周辺に住めば、お酒を飲んだ後でも自宅まで歩いて帰れるから便利な
商業施設ばかりでもなく、駅から徒歩ですぐ、那覇市立那覇小学校や那覇幼稚園がある。さすがに国道58号線沿いには一軒家はないものの、一歩裏通りに入るとマンションやアパートなどがひしめく。
9. 国際通りの終着点「牧志駅(まきしえき)」
県庁前駅から始まった国際通りは、牧志駅でひとまず東側の終端となる。
「国際通り」といえば、ザ・観光エリアのイメージだが、美栄橋駅と同様、牧志駅付近にも住宅地が広がり、観光と暮らしが調和する町だ。
駅のすぐ隣は市立牧志小学校、市立真和志中学校も徒歩圏内だ。沖縄県民の台所といえる地元のスーパー「サンエー」「りうぼう」が近く、マックスバリューなら駐車場も完備している。
那覇市の中心部ではあるものの、築年数によってはリーズナブルな賃貸住宅も見つけることができる。
国際通りや県庁付近にお勤めで通勤時間を短くしたい、または通勤ラッシュを避けたい方、私のようにペーパードライバーで車の運転が不安な方には、ぴったりのエリアだ。
牧志駅直結の商業施設「さいおんスクエア」は、いっけん観光客向けの施設のようだが、那覇市牧志駅前ほしぞら公民館・図書館が併設されており、地元の親子にも愛されている。
そして、駅から10分ほど歩くと、観光スポットとしても有名な「壺屋(つぼや)」のエリアへ。おしゃれなカフェやショップが並ぶ小路は、「やちむん通り」として親しまれ、やちむん=焼き物を扱うお店には、観光客だけでなく、食器を求めに地元の人も訪れる。
少し幅の狭い、昔ながらの面影を残した通り。やちむんの窯やツタの這った石垣を見ることができる。
「古き良き」の言葉が似合う静かな住宅街は、のどかで暮らしやすそうな雰囲気だが、たいてい道幅が狭く車では通りづらく、駐車場が少なかったりする。だから不便なように見えて、「車を持たない暮らし」にはちょうどいい環境なのかもしれない。
移住計画検討のためのモノレール駅巡りはまだまだ続く。というか、ようやく全駅の半数を回ったところだ。
後編の記事では、これから開通予定の石嶺駅、経塚駅、浦添前田駅、てだこ浦西駅(2019年10月に開通した)を含む残りの駅についてご紹介するとともに、モノレール沿線の二人暮らし生活について考察を深めていく。
(後編に続く)
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2019年7月執筆
文・撮影:なかそね ことみ 編集:みやねえ
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