事業KPIとフレームワーク

自身の知見の棚卸しとして、事業KPIやフレームワークをまとめていく。

WEB制作から始まり、ECやモール等のネット小売など自社事業でのサービス運用の中でアナリティクスや数字を見ていた経験から、事業を運営・成長させていくなかでどういった数字を見ていくべきか、を私見でまとめていく。

個々のフレームはネットや本を探していけば見つかるが、それらをどういった構造をもとに適用していくか、といった全体像を掴むのに役立つ。
また今後仕事の中で、自身の考えを伝えていくリファレンスの役割も念頭においている。


基本構造

ここでは見るべき数字の骨子となるものをまとめる。
サービスに配属されると様々な数字に溢れかえり、なにが大切なのか、どうなれば事業が伸びているいえるのか見失いがちだが、ここに挙げているものサービスが成長しているかを確認する基本となる。

サービスの最小単位

サービス(製品)が利益を生むまでの流れは以下になる

市場にいるユーザーは、サービスを新たに購入し、一定数が継続購入していく、これら獲得や継続にかかったコストを差し引いたものが利益となる。

例えばこちらの図。 新しく始めたアクセサリーショップが初月に10人の新規購入者を得て、その後5ヶ月後までリピート購入した場合の数字の例。
これが毎月繰り返されていくことで、売上の全体像ができていく。

売上だけをとってグラフ化してみる。
2023/01に獲得したユーザーによる売上は、毎月徐々に離脱しながら以下のようなグラフを描いたとする。

これが2023/02,2023/03と毎月積み重なり、売上全体を構成する。

まとめると以下の数字となる。

  • 売上

    • ユーザー数

      • 新規購入者数

      • 各月の継続率

    • ユーザー単価

  • 利益

    • 原価

    • 販管費(獲得コスト・維持コスト)

※利益に関しては原価とユーザーの獲得・維持にかかる広告販売促進費用を対象にしている。その他の費用はサービスの成長というより経営に近い内容になってくると考えている。

大切なのはこれらを特定の時間軸で観測し推移を追っていくということだ。
獲得月(年)単位でコホート分析をしていく。

全体の売上や販管費などはどこも見ていると思うが、獲得月(年)単位で推移を観測することで、事業のフェーズに合わせて伸ばすポイントを選定してくことができると考えている。

特にサービスのスケールを求められる場合、サービスを利用購入するユニークユーザー数の総数をどれだけ拡大できるかが大きなポイントとなる。
この場合は新規購入者数やその継続率をみていくことになる。

ユニークユーザー数の上昇が見込めない場合、利用するユーザー総数は減少していくため購入回数や商品単価などにフォーカスすることになり、既存サービス単体では維持・縮小を前提としたKPI目標をたてることになる。

※ユーザー数はBtoBサービスであれば企業数などに置き換えできる。対価として金額をもらう対象者を設定する
※サービスは商品単位に置き換えもできる。

1万人の街に事業を展開する

基本構造をもとに見ていく数字を設定したところで、1万人の街にサービスを展開したと仮定して、どのように数字がうごいてくか、フェーズに合わせてどのようなフレームが適用できるか、シミューレーションしていく。

あくまで仮定で数字はすべて想定だが、どういった考え方が適用されるかのイメージはつくと思う。

ここでは仮の商品として、新たに開発した「フレーバーはちみつ」を販売すするサービスを始めたとしてみる。蜂に選択的に採蜜をさせる独自の技術によって、任意のオーガニックフレーバーが香るはちみつを作り上げることに成功。従来のはちみつの概念を覆す自信の製品だ。
単価は150g 3000円。原価率は30%。用途に合わせて各種フレーバーを取り揃えている。

1 事業の初めから終わりまで

市場からの獲得を単純化して、数字の動き、特徴をみていく。
サービスの売上がどういった動きを辿っていくのかを捉えていく。

1-1 毎月200人づつ新規購入者を獲得をしてく

1万人の街から毎月200人を新規購入者として獲得していく。
継続率やユーザー単価は以下の表のようになったとして、最終的に月間1%程度のユーザーが生き残り、継続購入を続けてくれていると仮定する。

1万人すべてが購入してくれるまで、50ヶ月経過し、そこからは新規購入者はなくなる。売上を経過月ごとにならべると以下の様な形で、50ヶ月後まで獲得月が続く。

横軸を実際に売り上げた月にすると、表は1列ずつずれていく。

横軸が売上月なので、合計してグラフにすると5年間の売上は以下のように推移する

さらにこれを獲得月で分類すると以下のグラフになる。
1ヶ月に獲得したユーザーが積み重なって売上を構成しているのがわかる。

グラフや表から特徴を読み取る

グラフの特徴から4つのステージ(急成長期、成長期、縮小期、停滞期)に分類した。これらステージについてみていく。

急成長期

毎月の新規獲得と、継続購入が積み重なり、急成長をとげる期間。

この期間の長さは、継続率が落ち着き一定なるまでの期間と同じである。
今回は8ヶ月後に1%になるので、8ヶ月間は急成長している。
また、この成長量は継続率が落ち着くまでの8ヶ月間の合計と同じとなる。

数字だけでみれば、列を1つずつ移動させているだけなのでこのようになるのは当たり前にみえるが、条件を単純化してみるとこのような特徴がみえる。

つまり継続率は高く、長い期間維持できた方が良い。

成長期

急成長期で伸びた最大値に、毎月の継続ユーザーの積み上げが加算されていき一定の売上成長がある期間。

200名の1%である2名×3500円=7000円が積み重なって売上を底上げしてく。

つまり最終的な継続率が高いほど、成長角度があがる。

縮小期

1万人に到達したので、新規獲得はなくなる。
急成長期と同じスピートで売上は減少していき、最終的に継続している1万人の1%まで落ちていく。

停滞期

1万人の1%が継続購入している状態。
継続率は1%と仮定しているので、今後はこれが続いてく。

まとめ

今回は単純化するために、新規や継続率が一定という条件でみてきた。
実際はもっと変数が多く一定ではない。
市場は縮小・拡大するし、新規はアクセスできる手段や費用が限られてくる。継続率はずっと同じ商品を買い続けてくれるとは限らないし、競合もでてくる。社会(ユーザー)のニーズは常に変化している。

しかし同一の条件でみていくと、このような推移を辿っていくこと、継続率の如何が成長角度に関わることがわかる。
市場(ユーザー)という総量が決まっていて、提供する価値が同じである限り、必ず新規の減少は訪れる(実際には飽和よりアクセスの限界が主になるだろう)。最終的には継続しているユーザーのライフサイクルの規模に収まる、ということになる。

運営していく場合は、目先の増減に一喜一憂するのではなく、こういった現象が数字的におこる、ということ念頭に現在のフェーズと次の打ち手を考えていく必要がある。


1-2 イノベーター理論

新規獲得を毎月200名と仮定していたが、実際は異なる。
新規の獲得に対して、参考となるものにイノベーター理論がある。

試しにこれを合計10000人、50ヶ月間の正規分布にして新規獲得数にあてはめて動きをみてみる。
あくまで普及に対してのユーザータイプの分布なので新規の獲得数がこの分布どおりになる、というわけではないことは注意したい。

10000人で正規分布

これを以前の継続率と同じ条件で当てはめてみる。
新規の獲得が一定でないため、成長期はほぼなく、新規獲得と同じ曲線を描きながら最終的な継続率(1万人の1%)に落ち着く。

ここで見えてくることは、新規の獲得数によって売上は変化するが、新規が止まった場合、最終的な継続率に着地する、ということだ。


1-3 継続率(リテンションカーブ)

継続率によって成長角度や最終的に残る売上規模が変わることがわかってきた。ここでは継続率の増減でどのように売上が変わっていくかみていく。

以前と同条件(毎月新規を200名づつで50ヶ月後にストップ)で
5ヶ月後の最終的な継続率が0%,10%,50%,100%になった場合、どう変化があるかみていく

5ヶ月後に0%

継続するユーザーがいなくなるため、積み上げはなく、上昇は5ヶ月で頭打ちになる。その後、新規獲得をしているうちは一定の売上があり、新規がストップしてから5ヶ月後に売上は無くなる。

新規の獲得量が売上に直結しているため、常に新規獲得を目指す必要があり、新規の増減が事業に与える影響が大きい。新規が減少した場合の事業の持続性が低く、継続期間5ヶ月がこの事業のタイムリミットとなる。

例えば3年間で生徒が卒業する学習塾。継続を念頭におかない車・家など
限られた継続期間でも高単価で事業が成立する金額規模のサービスが該当するか。

5ヶ月後に10%

ある程度の積み上げがあり、新規が停止した場合、縮小はしつつも継続できる。

5ヶ月後に50%

半数が継続利用してくれている状態。
積み上げ量が多く、急成長期と変わらない成長角度を保つ。
新規が停止しても減少量が気にならないほどの金額規模になっている。

5ヶ月後に100%

新規獲得数がそのまま毎月積み上がるため、急成長期、減少期がなく
常に成長し続け、新規の停止とともに一定になる。

実際には継続率100%はないと思うが、高継続になるパターンを考えてみる。
人間のライフサイクルに沿った必須の、水・電気・家賃
一旦導入すると移動障壁の高い、ネット回線・電話
また、税金やお墓の維持費用なども考えられるか。

それぞれの継続率で出した売上合計を線グラフで比較してみた。
高継続であるほど成長角度が高いことがわかる。

基本的に継続率はユーザー数をもとに出しているが、ここに単価をかけ合わせることで売上となる。
継続率は横ばいになっていても単価が上がっていくようなサービスを目指すことで売上の積み上げ量を上げていくことができる。
例えばSaaSなど、導入する企業の成長によって単価上昇が期待できるものが考えられる。

まとめ

各継続率で比較していくと継続率の高さが事業の成長角度、継続期間の長さが事業の持続性に関わっていることがわかった。

ユーザーの定着率が低いサービスは構造的に弱く、獲得コストの高い新規を常に必要とするものになりがちだ。
継続率が高く、期間が長いサービスほど、高い成長率と持続性をもつことになる。

継続率(リテンションカーブ)については下記リンクがより詳しく話されているので参考にしてもらうとよいと思う。


昨対比の罠(コラム)

これまでは新規獲得数や継続率による売上の動きをみてきた。
各数字の特徴によってサービスの成長フェーズがあることわかる。

事業計画や目標、今後を見通しを立てる際に、昨対比が指標になっている場合もあると思うが、昨対比は結果であり、これを目標の根拠にしてはいけないと考えている。

一定の売上成長を続けていても昨対比は下がっていく。

売上が直線的に成長していても昨対比は下がり続ける

今年昨対比110%だったから今後も!といった形で計画を立てれば立ち行かなくなる場合もある。

もし昨対比が一定と設定すれば、複利によって売上は2次曲線を描かなければならない

これまでみてきたように、新規獲得・継続率が一定であったとしても直線的な成長となり、サービスのフェーズによって角度は変わる。

特にサービス初期にプロダクトマーケットフィットが達成され、新規獲得に広告費が適用されるような急成長フェーズでは、イケイケムードでこのまま成長が続くような気になるが、どこかで上限にいきつく。

その兆候は新規獲得数の減少や獲得単価の上昇、継続率の低下によって現れる。

サービス全体をみていく職位の場合、こういった構造を理解した上で計画や次の手を考えていく必要がある。


以下記入中

  • サービスのフェーズ(検討)

  • 市場のライフサイクル

    • 飽和後の推移

  • ○○というサービスなら?

  • 成功しやすい条件

    • a


2,実践をしていくにあたって

実際には①のように単純にはいかない。要所々々で具体的にどのような手法があるのか、フレームをアウトプットしていく

  • リーンスタートアップ・ピポット

    • 投資の前に継続率をあげる、市場フィット

    • プロダクトアウト、マーケットイン

    • SEOのテクニックを使ったニーズの理解

    • スプリント

    • クラウドファンディング

  • 新規を増やす

    • 市場、アクセス、伝達(CVR)、サービス(価値)のどれか

      • アクセス

        • チャネルマップ

          • プッシュ型プル型

          • コントロール可能なチャネル

        • SEO

        • 広告

          • 損益分岐点を設定する

        • キャンペーン

          • 効果を図る基準を設定する

    • もの市場・こと市場

      • ヨーグルトの例

    • STP

  • 継続率をあげる

    • CRM

      • CPMのススメ

      • 顧客フェーズ×行動フローのアンケートで改善を浮き彫りに

      • 顧客フェーズの最適化

      • 行動フローの最適化

        • カスタマージャーニーマップ

      • ストック型フロー型

  • コラム

    • KPIにCVRを設定する罠

3,競合

今まで競合はいない前提で話をしてきた。しかし実際にはそうはいかず、競り合いとなる。

  • ランチェスター戦略

  • マスで市場をとる

ピポット・製品ライフサイクル、成長のS字カーブ

市場の飽和、時世の移り変わり、アクセスの限界など、単一のサービス(プロダクト)は衰退を迎える。 成長を続ける限り、新たな取組が必要になってくる。

  • プロダクトの終焉

  • 成長のS字カーブ

  • ピポット

    • 資産はなにか? フレーム

    • コダックと富士フィルム

その他

組織・チーム・マネジメント

  • 組織

    • OKR

  • チーム

    • アドラー

  • マネジメント

    • ドラッカー

    • 問題ではなく機会

      • 要因追求の罠

  • 生産性より生産規模か

    • ひとりあたりの生産量を伸ばす、より生産量がある程度でも何人従事できるか?がいいのかも。その考え方のほうが総量があがる。

コラム

  • 成長と幸せ

    • 組織を夢想

読んだ本など


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