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D2Cというビジネスモデルとは何なのか?

こんにちは。STANDの宮原です。

今回は、前回取り上げたベースフードも例の一つであるビジネスモデル、D2Cについて見ていき ます。改めてD2Cというビジネスモデルとは何なのか、そのメリットについて述べていきます。

また、今回はベースフードと同様に健康の見直しに力を入れた食品ブランド、GREEN SPOON の田邊さんのお話を通して、D2Cブランドの成功ポイントを押さえます。そして最後に、D2Cと協業する、最近話題の店舗型ビジネスについても詳しく見ていきましょう。

《D2Cとは》
まずは改めて、D2Cについて振り返っておきます。Direct to Consumerの略で、自ら企画・生産し た商品を、広告代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法を指します。 SNSやECサイト、直営店舗で消費者とコミュニケーションをとり、生産した商品を販売します。ア パレルや化粧品、健康食品といった多くのブランドが採用しているモデルで、ここ数年でよく取り 上げられるようになりました。

◆D2Cのメリットとは
販売手数料の削減 メーカーは商品の開発・製造から販売までを自社で行うため、収益性が高いことが挙げられま す。Amazonでも楽天市場でも、企業が出店する場合には手数料がかかりますが、自社でECサ イトを用意して販売すれば、当然手数料はかかりません。小売店や代理店を介する必要がない ため、手数料や流通コストなどを大幅に削減することが可能です。結果として、メーカーの利益率 が向上し、効率良く収益を上げることができます。

◆縛りのないマーケティング
自社ECサイトでの販売であれば、独自のマーケティングやキャンペーンを展開し、消費者との関 係性を構築できるメリットがあります。いっぽう、通販プラットフォームでの規定に縛られることな く、ブランディングを保ったまま、マーケティングやキャンペーンに取り組むことができます。売り方 を自由に決められることも、D2Cの大きなメリットといえるでしょう。

◆データの収集と蓄積
販売業者を介する場合に比べ、多くの顧客データを収集・蓄積しやすいこともD2Cのメリットで す。D2Cのビジネスモデルは、自社のECサイトにアクセスした人の滞在時間や離脱ページなど を収集・蓄積できるので、購買に至るまでの効果的な施策が実施できます。これにより効率的な PDCAサイクルを回すことで、結果として売上向上につなげられるでしょう。

《D2C成功の3つの秘訣》
田邊さんが語る3つのポイントは、ずばり「ブランド意義を伝える」「世界観を体現したデザインと品 質」「SNSのフル活用」です。この3点を押さえることで、そのブランドでなければならない理由をつ くり、オンリーワンになっていくことだといいます。


1.ブランドの意義を伝える
近年、機能的価値を追求する時代は終わりを迎え、情緒的な価値体験を設計できなければ売れ ない時代へと入りました。利用シーンや特定のモーメントを規定することで、よりエモーショナルな 部分に働きかけることがマストになってきています。 また、ブランドのビジョンやミッションが常に一貫していることが重要です。

GREEN SPOONは以下のビジョンを掲げています。

・TABLE
健康的な食事におけるウェルネスの提供

・LIFE 自己肯定感ある人生を通じたウェルネスの提供
・WORLD 環境・社会・地球スケールでのウェルネスの実現
手軽に続けやすい健康的な食事を届けることはもちろんですが、食事を通してどんな人生をつ くっていくのか、環境や社会にはその後どんなポジティブな影響を与えていきたいのか、そこまで のメッセージ性をもって商品づくりやメディアづくりに取り組んでいるのが印象的です。

また自社ECの中にあるマガジンに、はじめはグリーンスプーンを活用したレシピを掲載していた そうです。しかし、あるとき「自分らしく楽しむ生き方」という趣旨のコラムを載せたところ、評判だっ たことから、「自分らしいライフスタイルを楽しむあの人のGREEN SPOONのある生活」という、一 人ひとりの生き方の物語を掲載しています。

こういった一貫したメッセージを、商品はもちろん、ECサイト、LP、SNSすべてを通して伝えていく ことが重要になります。

2.世界観を体現したデザインと品質
D2Cの肝ともいえる世界観創りをした後には、その世界観をしっかり体現した商品創りが求めら れます。当社のブランドストーリーは「たのしい食のセルフケア文化を創る」です。このストーリー に乗っ取り、継続が必要な健康的な生活をより楽しく行えるよう、パッケージにイラストを使って ポップにすることや、中の食材は栄養素を損なわないように加熱減菌し瞬間冷凍ということにこだ わっています。
また田邊さんは「作業工程まで思わずスマホのカメラを向けたくなる体験まで設計している」と SNSでどのようにシェアされるかまでを想定して世界観を体現しているということです。

3.SNSのフル活用
基本的には実店舗を構えないD2Cブランドにおいては、SNSをブランディングだけでなくコミュニ ケーションツールとしてフル活用していきます。
インフルエンサー施策での認知拡大というと、最近では定番の方法になってきました。中でも当ブ ランドは、特にインフルエンサーを通したブランディングとコミュニケーションに成功しているなとい う印象です。
「#グリーンスプーン」で検索してみると、非常におしゃれでクリーンな写真が数多くヒットします。 「グリーンスプーンを通して楽しく栄養を摂取できている毎日」や「グリーンスプーンがライフスタイ ルに取り入れられていることで自分を大切にできている実感」というユーザーの実体験が、具体 的にイメージできる投稿になっています。これにより憧れを誘い、「自分も投稿したい」と思うのも 間違いありません。
つまり、はじめはインフルエンサーを活用した広告だったものが、より自然な形で一般の人もシェ アに参加していくという動線が上手につくられています。これはまさに、SNSを通じて思いを伝え、 それがさらに多くの人に拡散されていったコミュニケーションの成功例ではないでしょうか。

《百貨店×D2Cブランド》 最近では百貨店がD2Cブランドとコラボした体験型施設を続々とオープンしていることで話題に なっています。新型コロナウイルスの拡大をきっかけに実店舗型のビジネスは大打撃を受けまし た。大手百貨店も臨時休業や時短営業によって業績の悪化につながっています。そんな百貨店 業界が新たに目を付けたのがD2Cブランドとの協業で行う「売らない店」です。

丸井グループはOMO戦略に特に力を入れており、衰退する百貨店業界のなかでも早くから売ら ない店舗の導入へと舵を切りました。例えば、新宿マルイ本館や有楽町マルイなどの5店舗に D2Cのオーダーメイドスーツブランド、FABRIC TOKYOが出店しています。いずれの店舗もオー ダースーツをつくるのに必要な、体の採寸と生地サンプルの展示だけに特化したショールーム型 です。また当店舗のスタッフは売り上げ目標も設定されず、お客様とのコミュニケーションに全力 を捧げます。こうすることでお客様には商品やブランドに対する理解をより深め、店舗での体験後 オンライン上で購入してもらうことでLTVの向上につなげていきます。

体験だけを提供する店舗のため、一見マルイ側のメリットがないように思われます。しかし、マル イ側にはお客様がオンラインで購入する際に、自社クレジットであるエポスカードの利用促進や、 店舗での顧客データを収集することに狙いがあります。
丸井グループのほかにも、西武百貨店は渋谷に「CHOOSEBASE SHIBUYA」を、大丸松坂屋東 京大丸の4Fに「明日見世」といった多種のD2Cブランドを誘致した体験型店舗を出店していま す。

「CHOOSEBASE SHIBUYA」は「意味に出会い、意志を買う。」というコンセプトを掲げ、シーズン ごとに様々なテーマを設定することで、ユニークなブランド体験の価値を伝えます。地球環境に考 慮した商品や、地方の魅力に焦点を当てた商品、新しいテクノロジーを搭載した商品など、思わ ず手に取ってみたくなる商品ばかりです。

また、「CHOOSEBASE SHIBUYA」はSNSの活用にも非常に力を入れており、すでに1.2万人の フォロワーを抱えています。投稿においてはゴシック体での分かりやすい文字入れが印象的で す。具体的な活用シーンや季節に合わせた、複数の商品選定でユーザー側のワクワクする気持 ちを引き出します。さらに、Instagram内でのショップも開設していることで購入までの動線がス ムーズに管理されています。

以上、今回はD2Cとは何なのかというところから、D2Cで成功するためのポイント、そしてD2Cの 未来を創るような店舗ビジネスまでをみていきました。オンラインでいつでも簡単に買い物できる 時代だからこそ、商品を通したコミュニケーションやワクワクするような体験の価値が上がってき たといえます。モノを持つこと以上に大事なものの存在に、よりフォーカスされている時代に入り ました。今後世の中に新しいサービスを送り出していくうえで、しっかり頭に入れておきたい内容 です。

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