私たちはデザイナーを正しく評価できているか〜『ミクシィ』篇
こんにちは、株式会社ミクシィ デザイン本部本部長の横山です。
先日vivivitさんのイベント『あつまるデザナレ 2021』で、表題について成果発表する機会をいただきましたので、noteでも公開したいと思います。
こんにちは、ミクシィです。今日は、私たちはデザイナーを正しく評価できているか?『ミクシィ』篇と題して、私たちの取り組みをシェアします。
マネジメントの正しさの自己弁護ではなく、より正しさに近づくための試行錯誤ととらえていただけると幸いです。
アジェンダはご覧の通りです。ミクシィはコミュニケーションを軸とした、たくさんの事業を運営する事業会社です。どんな会社なのか1分動画でご覧ください。
これからお話するのは、これらの事業を行う、事業会社のインハウスデザイナーの評価について。
スピーカーは横山です、よろしくお願いします。
1.事業会社がデザイナーに期待すること
評価の正しさの話をするには、組織が何を期待するのか?を理解することが重要で、期待を理解せず評価を上げるのはもちろんむずかしいし、それは、デザインする対象を見ずに課題を理解せずにデザインするようなものではないかと思います。
まず、デザイナーに期待することを考える前に、事業会社の全従業員に期待すること、を考えてみると、このようになると思います。
この前提にたって、次にデザイナーに期待することを考えます。事業会社で評価されるデザイナーとは、
事業会社のデザイナーは、こんなことを期待されています。
では逆に、評価がむずかしいデザイナーとはどんな人でしょうか?
これらひとつひとつが、日々のアウトプットに直接的にどれだけ影響を与えるのか?は、デザイナーの力量によるところが大きいと思いますが、
ここで伝えたいのは、このようなマインドセットで日々のデザインに取り組んでいると、デザインの端々ににじみ出てしまったり、コミュニケーションが疎かになってしまったり、周りによくない風を吹かせてしまう、ってことかなあと思います。
評価の正しさの話をする前に、組織と個人の期待値がそもそもすりあってないと、お互い何のものさしで正しさを測ってますか?って話になりますね。
これらをふまえ、次にミクシィのデザイン本部の試行錯誤をシェアします。
2.グレードに期待する視座とスキル
どこの会社にも、従業員の等級制度があると思いますが、ミクシィにも全社共通のものがあります。それをデザイン本部ではデザイン職向けに翻訳する形で『視座とスキル』で指針を示し、デザイナーに期待することの輪郭を、よりスッキリさせる運用をしています。
『視座もスキル』も、グレードが上がる程、デザインのスコープが広がり、インパクトが大きくなり、事業や組織への貢献度合い、ひとりひとりの付加価値が共に高まるイメージです。
次に、グレードをどう登っていくのか?をシェアします。
3.グレードの登り方
JuniorからYoungへは、
YoungからMiddleへは、
ミクシィではMiddleを現場の主力と考えているため、ここで一気にデザイナーに期待するものが増えます。Young Designerは、Middleへのステップを何年でクリアするのか?が、キャリアのスタートダッシュがうまく出来ているかのひとつの目安になると思います。
MiddleからSeniorへは
MiddleからSeniorは、キャリア曲線がこれまでのデザインの延長線上だけではなくなるので、事業会社のデザイナーとして、より意識した成果を積み重ねていく必要があります。
SeniorからMasterへは
Master以降は、ひとりひとりがどう貢献し、周りにどんな良い影響が作れるのか?をそれぞれのデザイナーが定義し行動し成果を出す責任があります。
マネジメントは日々、これらの指針のワードを使いデザイン職とコミュニケーションをし、目標設定や振り返りのフィードバックループを回しています。2年間回した結果、どうなったのかを次にシェアします。
4.結果と改善
2年前僕がデザイン本部をマネジメントしていくことになって、まずどこから改善をすると最も早く大きなインパクトが出るのかを考えた時に、YoungとMiddle比率を逆転させることだなと考えました。
現場の主力であるMiddle Designerを作っていくことは、ダイレクトにデザイン本部の馬力に影響し、直接的間接的な品質×量の生産性向上に寄与すると考えました。
2年でデザイン本部内の比率がここまで改善できた背景は、当然2年の月日が個々人のレベルを上げたとも言えると思いますが、
僕は多くのデザイナーが、グレードに期待する働きや組織のベクトルにチューニングしてくれた結果だととらえています。
また、デザイナーの結果や成果を、デザイン本部のマネージャーが評価で応えてきたことのループで、デザイナーひとりひとりが、「私のマネージャーは、私をしっかり評価してくれる」「評価と共にまた新たな成長機会を提供してくれる」信頼のループが回せているからだと考えています。
一方で、良いことばかりではなく、グラフをもっと詳細に、年代や職能やグループやチームで見ていくと、課題も見えてきました。
結論、組織やマネジメントのメッセージを、受け取ることで成果を出す人が増えるのであれば、よりメッセージを届ける方法がないか?と考え、
2つの施策を実行し改善を試みています。
ひとつは、デザイナー相談箱。
これは主に、僕の声をより遠くまで届ける施策で、普段の1on1などで、これまでに受けた個別相談を、ある程度抽象化/汎用化し、他のデザイナーにも日々の何かしらのヒントを伝えられないか?というもので、slackでオープンに考え方や向き合い方やとらえ方をシェアしています。(あれ?これ誰かにも似た相談受けたなあ…と経験年数や世代共通の悩みがあるように感じられた)。
僕が何か答えを知っているというものではなく、僕だったらこう考えるとか、こんな側面もあるかも知れないねって感じ。
もうひとつは、上記「ロールモデルが…見当たりません。」をヒントに、ミクシィに在籍する20名のデザインマネージャーとの対談コンテンツを社内wikiで公開しています。
これは、色々なデザインマネージャーの声、先輩デザイナーの声だからこそ、届く場所があるのかな?という試みです。
これらの施策が改善につながるまでは、ちょっと時間がかかるのかもしれませんが、コツコツ積み上げていきたいと考えています。
まとめです。
今日は、評価されるデザイナーとは?評価がむずかしいデザイナーとは?
全社グレードをデザイン職向けに翻訳した指針、
デザイン職向けグレードのラダー、
評価をまわしてみてどうだったか、どう改善するか、デザイナー相談箱、デザインマネージャー対談、をシェアしました。
デザインに期待される働きが拡張し続ける時代の、デザイナー評価もまた、日々アップデートし続ける必要があるのだろうと思います。
冒頭に「正しさに近づくための試行錯誤」と言いましたが、厳密には正しくあろうというよりも、デザインに誠実かどうかを僕自身は意識しています。
そして、ミクシィに貢献するデザイン組織を作るためにデザイナーに誠実に向き合っているのであり、デザイナーのための組織を作っているわけではありません。
ミクシィのマネジメントはこれからも、デザイナーの評価にコミットし、評価を通してデザイナーの成長を支援しながら、組織全体のクリエイティビティを極大化していくことを目指したいと思います。
ミクシィでしたー、ありがとうございました。
株式会社ミクシィ デザイン本部本部長
横山 義之