プシュン!
昼下がりのスポーツジム
スクワットをしている老体は
バスケのシュートフェイントより
膝を曲げない
本来なら身体をほぐす為にある
赤と青のマットスペースは
ストレッチしてるフリしながらの
しゃべり場になっている
確かに"健康増進"と言う意味では
他人と喋るのが1番健康に良いのかも知れない
長年の知恵、勉強になる
私は大好きなチェストプレスをする為
4台ある中の気に入りってるマシンに座り
負荷を調節する
すると
ここでも老体の会話が聴こえてきた
2台隣のチェストプレス
老体A
『隣のマシン空いてるな、トレーニング
終わっちゃったけど隣に座っちゃおっかなぁ』
老体B
『あ、あぁ、どうぞ』
老体A
『へへっ、隣にねぇ、座っちゃおっかな・・
ねぇ?』
老体B
『ねぇ、今日は天気も良くてね』
老体A
『ここ空いてるなら座っちゃおっかな、ねぇ、へへ』
老体Aのボケがずっと無視されてる
おそらく、意図としては
トレーニングもせずに器具に座って
堂々とおしゃべりするのはマナー違反だけど
あなたと喋りたいから"ここ"座っちゃおうかな
っていうジョークだと思うんだけど
まったく伝わってない
いや、もはや聴こえていないのか
ボケてる方も伝わってないことに
薄々気付いてはいるが
"心が折れる"神経も鈍くなってるのか
何回も同じことを繰り返している
そして、その度に照れる
『これはなかなかの地獄絵図だ』
私は昼間の接客業をやっていて
わりと老体と接する機会が多いが
彼らは人の話を聞かない
耳が遠くて物理的に聴こえづらいのも
要因のひとつであると思うが
個人的にはメンタル的な部分が
原因では無いかと思っている
自分の決めた物語の上でしか生きていなくて
そこから外れる"予想外"の言葉が
聴けないのだ
とにかく自分のことで手一杯
やっぱボケとツッコミって
コミニケーションの上級編なんだよなぉ
改めて思う
私はチェストプレスを始めようと思った
その時
『そう言えばサウナ故障してるらしいよ』
そう聴こえた
私が『え!?サウナ故障してんの?』
と思うコンマ速く
老体Bは
『え!?故障してんの!?』
と反応した
速すぎるやん
ちょっと被せ気味だったし
なんか聴いてて凄く気持ちが良い間だったな
ダーツのブルに刺さったみたいな
『プシュン!』
って感じ
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