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1-5.最初の「大学生版書く力をつけるプログラム」4

さて、3日目。
いよいよ、自己紹介文を書く。時間は30分。
最初に、再度自己紹介文を書く時のポイントとして、「自分の主旋律はどこにあるのかと、他者との関りについてをじっくりみていくこと」「自己紹介は一つとは限らない。伝えたい誰かが居ればその人に対しての自己紹介文を。そうでなければ、自分らしさを確認する文を。」と伝える。

用意してきた子も用意してこなかった子も、それぞれまた自分のシートをみながら、考え書き始める。

学生たちが書いている間に、私は次の準備に入る。
次のタームは「推敲と発表」だ。

自分のことを掘り下げた後は、他者から学ぶことや他者の意見を聞くことによる学び合いの機会を入れる。

2日の間で全員のシートの内容を把握していたので、
その内容が違うパターンの子たち4,5人でグループを組んだ。

休憩とグルーピングのための机並べの間に、全員分の作文をコピーする。(コピーは先生にお願いした)

「さて、グルーピングの後は、グループで他のメンバーの文章を回し読みします。そして代表を一つ選んでもらいます。
選び方は、これから挙げる指標をもとにそれぞれ採点をして選びます。」

書き終わってまたグルーピングして和やかになっていた教室の空気が、また少しピリッとしはじめた。学生たちの顔に戸惑いの表情がみえる。

評価が関わると、学生たちは落ち着かない感じになる。自分が評価されることも評価することも得意ではないのはよくわかる。
ただ、その評価はdisるためのものではなく、客観的に読むという訓練であり、それをよりよくするという目的意識の共有によるブラッシュアップの在り方を経験してもらおうという意図があるのだ。

このやり方は、今思うと、結構無理やりだったとは思う。
自分がこのプログラムで掘り起こした自分の思いを、他者に見られることを好ましく思わない子もいるかもしれない。
もう少し、ゲーム感覚や心をほぐすようなワークを入れて行けばよかったかなとは思う。
が、そこは「外部講師」の無理やりさで押し通した。
そういう「波」も彼らの刺激になる(こともある)。

さて、肝心の評価の指標は以下の通り。
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□評価の指標
1.内容について、書き手の思いが伝わってくるか。(何を言おうとしているのかがわかるかどうか。)
2.内容について題材は的確か。
3.文章の構成(起承転結・序文本文結文等)がはっきりしているかどうか。
4.わかりやすく書かれているかどうか?(誤字脱字はないか。5W1Hがきちんと書かれているかどうか。等)
5段階評価にして、採点。(自分の分も第三者の目で採点)
全員集計をして、評価。
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20分ほどで評価が出た。

それで、私はまた指示を入れた。
「その中で一番点数の低かったものを選び、そのグループのワークの題材としてください。」
どよめく学生たち。
何となく一番いいものが選ばれると思っていたのだろう。
「選ばれた人はがっかりしないでね。」とすぐに付け加えた。
低評価になれば、当然該当する子はショックを受ける。
が、その分みんなにベターベストな意見をもらえ、自分の目では見れなかった自分の良さや思いに気づくことができるかもしれないのだ。
「実は一番お得」な役回りなのだ。

このワークの趣旨は、書いた本人も、それ以外の人も、「第三者の目でチェックし、推敲する」こと。

選ばれた作品は、その時点でその人の手を離れ、グループの所有物となる。
「文体など一切変えてもいいが、書いた人の思いは尊重すること。
誰に対しての文章かはそのまま生かす。
事実関係の確認を行うこと。
書いた人もグループの一員として、第3者の目でチェック推敲すること。」
をチェックの際の条件とし、
選んだ作品を、グループの作品として、ベストなその人の思いが伝わる自己紹介文を作ることを課題とした。

そのまま、4日目・最終日の説明を続ける。
「選ばれた人以外で、司会、書記、発表者をセレクトしてください。
次週は発表してもらうので、それを意識して文章のリライトをしましょう。」
発表時の条件を、以下板書した。
・ どう表現するのが効果的かを考える。
・ OHP(?)使用可。わかりやすい図などを作ってもいい。
・ この文章を作るにいたった、項目立て(流れ)を記載すること。
・ 必ず読むこと。
・ 誰に対しての自己PRで、どのような点に留意をして書きまとめたかを発表。。
・ 1グループ10分まで。

そして4日目はグループ発表。
そんなに奇をてらった発表はなかったが、頭を寄せ合って考えた分、その個人の思いがエピソードで語られ、その子らしさが見える文章がグループ分できていた。
この日の状況を、T先生のブログから引用させていただく。
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昨日で書く力をつけるプログラムは終了した。最後の講義には○○市役所のK課長がなぜか参加されていた。実は、日曜日に飲みながら、プログラムに来ることをK課長は約束されたのだ(させられた?)。そして、ホントに来てくれた。

最終回となる昨日の講義は、私にとって最高の、理想の講義だった。外部講師が講義をする、まったく関係ない人がなぜか座っている、その人が突然の指名にもかかわらず、大切なことを発言してくれる。筋書きのないドラマが教室で進行する!私はゾクゾクしながら講義を見守っていた。

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これは、とても面白かった。
外部講師の私でも、4日間の彼らの様子をみていると、状況を勝手に慮り指摘しないこともあるのだが、K課長はがっつりその部分を突いてこられる。
学生にとっては「何この人?なんでこんなことを言われるの?」と豆鉄砲を食ったようにもなったりする場面もあるが、そこはグループ連帯の発表なので、受けて立つのは誰でもよい。勇気を奮った学生が頑張って対応する。
いい風景だった。こういうドラマのようなことは、そこにいる当事者たちをはっとさせる。そんな気づきの場を創りたいなとも思った。

当時、○○市役所のK課長は、現在某市の市長をされており、教育にもかなり熱心に力を注がれている。あの場に居た学生たちは、今のK市長があの時のK課長だったということを覚えているだろうか。


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